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ピーラーと、育児ノイローゼ

ある水曜日の昼下がり、私は突然、ピーラーの使い方がわからなくなった。

10ヶ月の息子に、地元産のおいしいにんじんを買ったのに。珍しく、昼寝してくれてるのに。
左手に握られた、あまりに鮮やかなオレンジ色。
使い古した調理器具たちが、全部、知らない顔をしている。

怖い。

流しににんじんとピーラーを投げ捨てた音で、息子が目を覚ます。

0歳の一人息子をワンオペで育てながらも、夫は比較的協力的だし、実家も近い。仕事もしていない。

もっと大変で、もっとちゃんとしてる人はたくさんいる。
でも、私は今、心と体が限界だ。

自分の子どもは本当にかわいい。
この子のためならなんでもできる。
いくらでも、やってあげたい。それが喜び。
毎日一緒にいられてこの上なく幸せ。
なのに。
なのに、どうしようもなく体が怠くて動けない。
強烈な孤独感。消えてしまいたい。
こんなこと思ったら、母親失格だ。

泣きながら起きてきた息子と一緒に、私も泣いた。
こんな私は、毒親ってやつなんだろうか。

いやちょっと待って。
私、今多分普通じゃない。異常事態だ。

本当は、もっとずっと前からいろんな症状がでていた。

まず、寝不足。
多くのままたちが抱えている悩みだと思うけれど、寝不足は本当に人間の心と体を蝕むと思う。

調べて調べて、あらゆる手を試し、病院まで行ったけれど、結果、息子は「寝る時間が少ないタイプ」だそう。

昼寝は基本なし。夜は9時に寝て、7時に起きるけど、4〜5回起き、酷い時は深夜1時から6時まで起きている、なんてことも。

つたえ歩きをし始めて、だんだん寝るようになってはきたけれど、とにかく慢性的に寝不足。

そして、頭痛や吐き気、目眩、倦怠感など、不調がでていることが、通常になっていた。
頭痛は元々群発頭痛を持っていて、薬があればいい。他は、産後しばらくはホルモンバランスとかで仕方ないだろうと放置。

一度貧血の検査はしたけれど、血液検査の数値は問題なく、「過労」との診断。
これも「仕方ない」と放置してしまった。

すると、どんどんどんどん悪化。
ピーラーを始め、日常生活がうまくできなくなっなり、言葉がどもるようになってしまった。

なぜこんなことに?

何か、私のやり方が足りないからなのか。
夫は朝早くて夜遅く、平日は朝から夜まで1人だから、孤独だし、なにもかもやりきれない。
だけど、コロナで気軽に人にも会えない。
実家は祖母の介護で、声をかけにくい。
いや、それでもできる人はできるのだと思うけれど…。


でも、原因はそれだけじゃなくて。
なんと言っても「要領が悪いくせに、変に完璧主義」な自分の性格だ。

誰にも、何も言われてないのに、
下手だけど、家事も育児も、あれもこれもやってあげたい。

やりたくないことなんて、ない。
気持ちは、いくらでも、もっともっとあるのに。
床の埃や、テレビをつけた時間や、品数の少ない夕飯に苛立つ。自分を責める。

とにかく。

私は今助けが必要だ。

市の保健師さんや、支援センター、友だちや親に、第三者の意見を聞いた。
医療機関でカウンセリングも受けることにした。

その中で、小児科医の友だちから、「自分がご機嫌になるリストを作りなさい」と言われたので、考えてみた。

YUKIちゃんの歌
映画鑑賞
喫茶店のコーヒーとケーキ
好きなように物語を書くこと
ブルボンのお菓子
親友とくだらない話をすること
実家の犬の散歩
熱いお風呂
明るい色の服

それから、
家族3人で笑ってること

そうだ。

部屋が綺麗でも、手遊び歌が上手でも、一汁三菜でても、ままが、妻が、イライラしてるより、
ぐちゃぐちゃな部屋で、一緒にEテレ見て、ケンタッキー買ってきてもらって、みんな笑ってた方がいい。

誰かが我慢して、一生懸命頑張って、成り立つ努力じゃなくて、みんなで笑っていられるように、一緒にたくさん話をして、上手に手を抜く努力をしなくちゃ。

というわけで、これから、努力の方向を変えていこうと思うのでした。

少しずつ、自分たちらしく、頑張っていこう。

そして今は、はっきり「助けて」と言おう。

そんな決意をした。

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