口をきかないだけマシ
昨夜からほとんどネットを覗くこともなく、手を使うことばかりしていたのだが、思っていた以上に作業が進む。
効率の良さがすべてではないのはもちろんだけれど、「ネット以前」「ネット以後」の両方にまたがって生きてきた世代だからなのか、前後の変化が如実に感じられる。
つまりはネットがなかった頃の方がずっと多くのことを考えていたのだ。
昔、「テレビばっかり見てないで、少しは勉強しなさい」と叱られる光景があった。でも、結局のところネットで動画を見てるのは、パソコンの画面がテレビに取って代わっただけのこと。
どんぐりの背比べとはこのことだ。
自分の部屋にテレビを持っていた子供は少数で(自分の部屋を持ってた子供すら少数だったかもしれない)、自室に入ってしまえば外界と遮断される。あとはラジオを聴くか、レコードを聴くか。
その不自由さが実は重要だったのかもしれない。
本を読んだり、考え事をしたり。確たる情報もないままの想像は間違っていることもあったけれど、間違いに気づける(時には恥もかく)ことで知識の仕入れ方を見直したり、別な方法を試したりという試行錯誤の元になったのは確か。
昨今、「情報」という言葉が費やされすぎて嫌悪感しかないのだが、情報と知識の区別もつかないまま、ただひたすらネットの荒野をさまよっていたところで、出来上がるのは抜け落ちと偏りのオンパレードのお粗末な「現代用語の基礎知識」みたいなシロモノなんじゃないだろうか。
どこまで本当の話か知らないが、フライトアテンダントがまだスチュワーデスと呼ばれていた頃、「口をきかない分、エコノミークラスの客より荷物の方がマシ」と言ったとか言わないとかという都市伝説があった。いまに重ねてみると、昨今の情報強者も似たり寄ったりかもしれない。
「口をきかない分、自称情報通より本の方がマシ」。
ぜひサポートにご協力ください。 サポートは評価の一つですので多寡に関わらず本当に嬉しいです。サポートは創作のアイデア探しの際の交通費に充てさせていただきます。