読書記録「経営のための意思決定論入門」(佐々木,2023)
選んだ理由
PA課唯一の文系として経済学的アプローチを極めていくことを考えた際、意思決定理論には興味があり学んでみたいと思った。また、財務省の報告書で雇用のジェンダーギャップをゲーム理論で説明する流れがあり、ケアしておきたいと感じた。そこで選んだこの本は学部生向けの教科書レベルの本だと思われる。
新たな学び
オッカムの剃刀:分析から得られる結論が同じであれば、分析モデルは簡単である方がよい
選択肢の(弱)支配:どのような状況においても、2つの選択肢のうち1つ以上が優れているときを指す。(弱)支配されている選択肢を選ぶ道理はない。
期待値:ある事象がある確率で実現するとき、その事象らが起こり得る確率で重みづけ(加重平均)した平均値のこと
ハーヴィッツ基準:意思決定理論において、ある選択肢を選ぶ際の判断基準の1つ。まず、利益が大きくなるか小さくなるかの楽観度(0-1の間)を設定する。そして下記の方法で基準値を算出し、基準値が最大となる選択肢を選ぶ。バランスがとれる
基準値=(各選択肢の最大利益)*(楽観度)+(各選択肢の最小利益)*(1-楽観度)
ミニマックス・リグレット基準:どのような状況になっても、選択した意思決定の後悔度(ああすればこうなったのに)が最も少ない選択肢を選ぶ方法。各選択肢ごとに状態(例:あるプロジェクトへの投資を考える際、社の財務状況が好転するか悪化するか)ごとに利益を算出する。そして、各状態ごとに最も高い利益とある選択肢の利益の差を算出し後悔度とする。選択肢ごとに最も高い後悔度をその選択肢の後悔度とし、現在で最も後悔度の小さい選択肢を選ぶ。
後ろ向き帰納法:決定木分析における意思決定方法の1つ。決定木の意思決定ノードを参照し、その選択肢で獲得される期待利得が最も高くなる選択肢を選ぶ手法。後ろ向き帰納法で選ばれる選択肢の組み合わせは必ずナッシュ均衡になる。
ナッシュ均衡:ゲームにおいて、相手の選択を踏まえた上で現在の選択肢が利益最大(最適反応)であり、最大の状態参加者全員が選択肢を変える動機がない状態。
例:合コンで1人自分のパートナーを選ぶとする。その時、周囲の状況を踏まえ自分の相手を選んだ。この時全員が浮気をしない状況がナッシュ均衡(≒安定マッチング)。ちなみにナッシュ均衡は複数存在することもある。
パレート最適:現在の選択肢と比較して、全員が同等以上の利益を得ることができる選択肢が存在しない(現在の選択肢が他のどの選択肢にも弱支配されない)状況のこと。ある種最適な意思決定基準の1つ?ちなみにパレート最適≠ナッシュ均衡
多目的意思決定(AHP)分析:複数の目的がある状況下で選択肢の中から最適なものを選ぶ際に使われる意思決定手法。結構難しい。
目的の重みづけ:全ての目的の組み合わせにおいて「ある目的Aは目的Bと比較して何倍重要か」を決める。結果をまとめた一対比較表を作成する。
目的の重み算出:一対比較表にある重みを目的ごとに幾何平均し各目的の重みを決定する。
目的別の選択肢の重みづけ:各目的ごとに、全ての選択肢の組み合わせで「ある選択肢1は選択肢2と比較して何倍重要か」を決める。結果をまとめた一対比較表を作成する。
目的別の選択肢の重み算出:一対比較表を元に各目的ごとに選択肢の重みがどのくらいか、幾何平均で重みの実数値を算出する
総合評価値の算出:下記の計算式で総合評価値を算出し最も値の大きい選択肢を採用する。
ある選択肢の総合評価値=(目的の重み)*(その目的におけるある選択肢の重み)の合計値
整合性の確認:目的及び選択肢の重みづけの仕方に無理がないかを確認するステップ。整合比という値が0.1を切れば計算結果を採用してもよい、というもの。ただ計算が大変+ランダム指標がよくわからないので、手計算するよりも有効なパッケージを探してしまった方がいい気がする・・・
戦略的操作に強い集団意思決定方法
是認投票:各選択肢に対し、「Yes」or「No」のみを決める。
マジョリティ・ジャッジメント:各選択肢を点数方式で評価してもらうが、評価者全体の中央値を各選択肢の評価として扱う。
感度分析:モデルのある要素を変化させたとき、分析結果にどのような影響を与えたかを調べること。数理最適化問題であればExcelのソルバーで実装可能。
サンクトペテルブルクのパラドックス:期待値的には無限のお金を得ることができる賭けにでも、人間は大した金額を支払うことができない。
コインを表が出るまで投げることができる。n回目で表が出たとき、2^n円の賞金を得ることができる。参加費はいくらまで出せるか。
学びの再確認
不確実性:観測できないものが意思決定プロセスに影響を与える可能性がある状態のこと。意思決定者が保有する情報によって不確実性が左右される。
アローの不可逆性定理:ある3つ以上の選択肢から意思決定を行う際、非独裁制・全会一致制・無関係な選択肢からの独立の3つ全てを満たす意思決定方法は存在しない
無関係な選択肢からの独立:誰も意思決定の相対的好ましさを変えないとき集団としての意思決定の好ましさを変えず、他の情報の影響を受けないこと
戦略的操作:とある目的のために、本来自分が好まない虚偽の申告をすること
例:公立高校受験(公立高校は1つしか受けられないとする)で、第一希望の高校に受かる見込みが低いために第二希望の高校を受験し、第一希望の高校には受験しない、という選択
ギバード・サタースウェイトの定理:ある選択肢が3つ以上存在するとき、対戦略性と非独裁制を同時に満たす意思決定方法は存在しない。
今後
面白く勉強になったが、すぐにビジネスで活かせるイメージがつかない。
意思決定論の応用としてPythonでの実装霊までついたマーケットデザインに関する書籍を購入してあるので、それを読む。特に絶望の定理については需要が高いので詳しく勉強する。(早水桃子先生の離散数学入門の授業動画が非常に参考になった。)
Rによるテキスト分析入門
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?