Memo なでしこ銘柄選定による株価への短期的効果
これはEBPM エビデンスに基づく政策形成の理論と実践の10章の抜粋である。可能であれば元論文のありかや分析手法等を含めてブリッジにできるようにしたい。
なでしこ銘柄は経済産業省が選定している女性活躍推進のリーディングカンパニーだが、同様の表彰として「ダイバーシティ経営企業100選」というものもある。これらは相互に関係しているものと考えるべきだ。
表彰された企業といずれの表彰もなれていない同規模の企業について比較することで、効果測定を行う。各日の株価終値について、公表日の株価終値を基準として株価変化率をプロットする。具体的には、Synthetic Control Method(SCM)という手法を活用して比較対象の競合他社(コントロール)を合成して反実仮想を作成する。
結果としては、その日は高く反応したが翌日は前日の高値の反動を受けて株価は下落した。その次の日以降はなでしこ銘柄の選定の影響は見られなくなっていた。千葉銀行やケイアイスターなどの他事例を調査しても株価に変動は見られなかったことから、投資家への明確な露出がカギとなるといえるだろう。
ここから、人的資本情報の開示が世間から人的資本経営優良企業だと評価され、株価という形で具現化するには人的資本情報の開示が広く目に留まるところで行われなくてはならないことが示唆される。
本文はこちら(13ページなのですぐ読める)
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/pdp/21p007.pdf
結果の頑健性確認には以下のステップが使用されている。
次に、「なでしこ銘柄」選定の効果の不確実性を評価するために、プラセボテストによって推論を行う。 具体的には、以下のステップとなる。
i. 対照群25 社の中の1 社に偽「処置企業」のラベルを付ける。
ii. 残りの24 社を偽「処置企業」の対照群とする。
iii. 偽「処置企業」の偽「なでしこ銘柄」選定の効果をSCMにより推定する。
iv. 図 3 にグラフを上書きして図4を作成する。
v. 上記のステップを対照群25社に対して繰り返す。
図 4 から発表日と翌日において、偽「なでしこ銘柄」選定の効果が全て、オムロンの「なでしこ銘柄」選定の効果よりも絶対値で小さいため、後者の効果が有意であると判断する。
結果の持続性確認については以下のステップが使用されている。
加えて、図 4 で示された「なでしこ銘柄」選定の効果が有意に持続する期間を調べる。図 5 では、図 4 の Y 軸の値の累積和を発表日から計算している。揺り戻しが起きた発表翌日には、オムロンの累積和は偽 「処置企業」の累積和と同水準になっているため、「なでしこ銘柄」選定の効果が減衰、消滅していると 考えられる。
最後に、処置企業に関するプラセボテストに加えて、発表日に関するプラセボテストも行う。
i. 株取引日-6 を偽「なでしこ銘柄」発表日とする。(-13 から-7 が発表前の株取引日となる。)
ii. 偽「なでしこ銘柄」発表日のもと、「なでしこ銘柄」選定の効果を SCM により推定する。
iii. 図 3 にグラフを上書きして図 6 を作成する。
図 6 から、偽「なでしこ銘柄」発表日のもとでも株価は真の発表日に上昇しており、結果は頑健であるこ とが分かる。
さらなる参考文献
SCM(Synthetic Control Method)の詳細について
[4] Alberto Abadie. 2020. “Using Synthetic Controls: Feasibility, Data Requirements, and Methodological Aspects.” Forthcoming in Journal of Economic Literature.
SCMの株価への応用について
[5] Daron Acemoglu, Simon Johnson, Amir Kermani, James Kwak, and Todd Mitton. 2016. “The value of connections in turbulent times: Evidence from the United States.” Journal of Financial Economics, 121(2): 368–391.
SCMは合成コントロール法とも呼ばれている。
下記サイトではRでパッケージ活用例まで記載してくれている。
下記は上記の原著論文
もうちょっと勉強
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2019/11/seiken_191122_2.pdf
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