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THE DHOLE/HOWL Vol.1

ex.TAMTAMの小林樹音を中心に結成されたバンド、THE DHOLE(ザ・ドール)http://thedhole.com/が、新宿MARZで主催イベント「HOWL」を始動。バンドとしての初ライブを敢行した。対バンはMop of Head、あらかじめ決められた恋人たちへという、樹音くんとも親交の深い2組。ライブパフォーマンスには定評があるMOH、あら恋を相手に、ほぼゼロからのスタートと言って良い樹音くんのバンドがどのように対峙するのか――そのような興味を抱えながらMARZへ。

まずはMop of Head。プロディジー、ペンデュラム、ケミカル・ブラザーズが次々と想起されるような、エレクトロ・ビーツ×ロックの融合を特徴とするキレの良いダンス・サウンド。ベース、ドラムが人力、さらにギターも全編に渡って弾き倒されているので、ロックのダイナミズムをベースにエレクトロを導入した、という表現の方が近いかも。ベースのhitomiさんがハイヒールでエフェクター踏んでいるのが良かったです。途中からJUKE/FOOTWORK界隈で著名なダンサーのTAKUYAさんが登場して驚き。ラストは強引にJUKEの変則ビートを織り込みつつポップでスケールのデカいサビへと持っていくプログレッシブな展開で(TAKUYAさんも客席に降りてフットワーク!)、結果この曲が一番印象に残りました。

あらかじめ決められた恋人たちへは、BAYCAMPには出演できなかったGOTOさんがドラムに復帰。メンバーチェンジから5ヶ月、ようやくこの体制に適した音が発見されたような気がします。ソロ時代のようなヘビィで焦燥感に溢れたDUB、バンド固定化以降のシューゲイズ~オルタナティブなものに加え、鍵盤ハーモニカの叙情性を活かした曲もありで、それが45分の中で見事に凝縮されていました。2曲目のジャングルビート~レゲエロック「A RISE」のアレンジもみっちり密度が詰まった今回のものが好みでした。クリテツさんはテルミン、ダラブッカのほかにロートタムを導入。GOTOさんのドラムセットがシンプルなだけに、ロートタムの音が良いスパイス(←阪神・和田監督風)となっていて、面白い組み合わせだなと。

珍しく池永さんはMCをしていて、THE DHOLEの門出を祝っていました。そしてラストに「これがTHE DHOLEへの回答です」として「Res」を持ってくるという、憎い選曲! 強靭なアンサンブルを見せつけ、本日の主役であるTHE DHOLEにバトンを繋いでいきました。

そしてTHE DHOLEですが、バンドのプロフィールや今回のライブのキャッチを執筆した縁もあり、先に歌詞の入っていないデモ音源を聴いていて。ダブやテクノ~ベースミュージックをフェイバリットとする樹音くんの要素はあくまで匂わせる程度で、ギターとボーカルを全面に押し出したロックを追求していくんだなと感じていたのですが、この日のライブはよりその方向性がはっきりと見えました。しかし、ここまでピュアなギター・サウンドになるとは。それこそ、今はなき下北ハイラインレコードにデモCDやカセットが置かれていてもおかしくはない音なのです。ダンスロック風の曲も悪くなかったですが、アンコールで披露したしっとりとスローテンポな楽曲に色気があって良かったです。

リズム隊はさすがの完成度で、ゲストギターのユースケさん(fromTAMTAM)のプレイも堂に入ったものだったのですが、ギター・ボーカルである洋平さんにはさすがに緊張が見られました。ただ、プレッシャーをかけるようで申し訳ないですが、このバンドは絶対的にギター/ボーカル次第というところであり、THE DHOLEの命運を握っているのは彼と言えるでしょう。彼の活躍如何では、より大きな舞台へとたどり着けると思います。今後はけっこう頻繁にライブを行うようなので、パフォーマンスの変化が楽しみです。

この3バンドを立て続けに見て、やっぱりMOH、あら恋のライブでのクオリティというのは早々追いつけるものではなく、音楽性もかなり異なっていたので、THE DHOLEにとっては主催であるのにアウェーな感じもありました。ですが、樹音くんも当初からそれはわかっていたはず。それでもこのブッキングを組んだのは、客観的に自分のスタート位置を見据えるためだったのかもしれません。TAMTAMというDUB~レゲエを軸に据えたバンドから脱却し、新たな音楽を新たなメンバーと共に構築する――THE DHOLEとしての樹音くんの意識が強く感じられた一日でした。

これからも応援します。


 

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