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待ち人(虫)来たる

虫はどんな存在?

突然ですが、みなさんは日々の生活において ″虫″ に意識を向けることはどれくらいありますか? 一般的に生活における虫と言えば家の中に現れるゴキブリやハエ、冬の洗濯物の大敵であるカメムシなどマイナスなイメージが多いかもしれません。
かく言う私も虫の存在を明確に意識したのは、五木村を出て、全くと言っていいほど虫のいない熊本市内でしばらく暮らし、また村に戻ってきたときに改めて部屋や玄関先に職場事務所の中に毎日のように現れる蛾やムカデなどの虫の多さに驚きました。そんな厄介者のイメージでしかなかった虫に対してある時ちょっとした心境の変化を覚えることがありました。

ある日の夕方

お盆はとうに過ぎ、9月に入り、職場前真正面にある田んぼの稲穂が薄っすらと黄金色になり始めたある日の夕暮れ、ふと外を眺めると辺りがとてもキラキラと輝いているのに気がつきました。私はそれがすぐにトンボの大群の羽ばたきが夕陽に照らされてキラキラ光っているのだと気が付きましたが、その景色があまりにも綺麗でしばらく見とれ、来年もまた同じ景色を眺められるのが楽しみだと思う程の感銘を受けました。そのことを父母に話すと父はとても嬉しそうに「今年もしょうろうとんぼの季節が来たか」と言いました。

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しょうろうとんぼとは

私の父は林業兼農業の会社を立ち上げ、ほぼ毎日現場作業に努めています。そうした中で、特に夏の間頭を悩ませるのが蚊やブト(ブヨと言う人もいればブユと言う人もいます)といった吸血虫です。特にブトは私も一度足首を刺されたことがあるのですが翌日から膝下が2倍程に腫れあがり3週間はまともに歩けませんでした(!)。

そのような虫が作業中の汗の匂いにつられてやってきて唯一素肌を晒している顔に何度もたかってくるというので、特に集中力を欠けない伐木作業中などはたまったものではありません。そんな時の心強い味方がこのしょうろうとんぼだと父は言います。しょうろうとんぼは丁度精霊流しの時期、所謂お盆の時期以降に多く現れるので、しょうろうとんぼと呼ばれ(正式名称はウスバキトンボというそうです)他の多くの飛行する虫を食べるトンボです。それによって、しょうろうとんぼが現れ始めた時期から蚊やブトに刺されることが極端に減るそうです。

ありがたい精霊様

それを聞いた私は、なぜこのトンボが ”しょうろう(ご先祖様の魂)” とんぼと言われるほど親しみが込められた名前で呼ばれるのかということと、この五木村という山地においては、普段は気にも留めないような虫という小さな存在をありがたいと思える程私たちの暮らしは密接に自然と関係してきたのだと思い知りました。

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