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似合わないバッグを売った話

一年ぶりのnote更新だ。
好きな人から「またくまばらちゃんのnote読みたいな〜」と言われて意気揚々とメモアプリを開き、最近ぼんやり考えたことをまとめちゃおうと思った。

リサイクルショップにオレンジ色のショルダーバッグを持っていったら、300円になって返ってきた。
嫌いな人が誕生日にくれたバッグ。当時は仲も良かったし、嬉しかった気持ちはある。
でも、わたしにとってのそのバッグの価値はもう300円にも満たなかった。

仲が良かった頃もわずかに感じていた文化の違いを大人になっても受け入れられず、話をするたびにそいつのことを嫌いになった。人のことをちゃんと見ないから、わたしには似合わないオレンジ色なんか選ぶんだ。あとからそう思ってバカみたいな気持ちで押し入れの奥にしまい込んでいたバッグ。

ほとんど使っていなかったし、天気もいいしちょうどいいかと考えながら衝動的に自転車を走らせた。

嫌いな人のこと、実は嫌いなんじゃない。好きなんだ。そしてわたしの中の「その人像」をつくりあげて勝手に期待してしまうから、普通にしているだけのその人に裏切られたような気持ちになって、嫌いになるんだ。
仕方ないと割り切ることは簡単じゃない。心の中でこっそり誰かを嫌うことが悪いことのように思えて「ほんとに売っちゃっていいのかな」なんて思ったりして。だってバッグに罪はないから。

気持ちが揺らぎながらもリサイクルショップで査定をしてもらい、番号を呼ばれる。
「これとこれはそれぞれ1円で、こちらのバッグは300円ですねー。よろしいでしょうかー。」
リサイクルショップのやる気のない店員に事務的に問いかけられ、大丈夫ですと答える。
他のものと合わせて302円を受け取り、手ぶらで自転車に乗って家に帰った。

わたしの中でその人と過ごした楽しかった記憶はたしかにある。けれどももう同じ時間を共有しても楽しいとも思えなくて、人生の中で歩む道がズレて、もう戻れないぐらい分かれてしまったんだなと寂しくなっていた。

人は自分に必要なものを選んで生きていく。
残念だけど、わたしにとってもうその人と過ごす時間は必要じゃないんだなと思った。わたしにとってのその時間の価値を、リサイクルショップの店員という他人がやる気なく査定してくれたことで気持ちが楽になった。

なんだかすっきりしたような気がして、その日はすこしだけ遠回りをして帰った。

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