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noteと私~noteは「自分」の設計図~

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ノートとわたし


自分で使うノートを初めて選んだのは、たしか小学二年生の頃だったと思う。

当時、近所のスーパーの二階に日用品のコーナーが設けられており、その一角にさまざまなメーカーのノートがずらりと並んでいた。

そのころのわたしは『もののけ姫』に憧れていて、寝ても覚めても「どうやったらもののけ姫になれるのか」と考えていた。
そこで小銭を握りしめ、くだんのスーパーへと向かい(今でも忘れない)、千鳥格子のノートを買ったのだった。

そのノートはだいたい300円くらいで、50ページ綴りだったろうか。
当時のわたしにとっては、途方もないくらい分厚く感じたものだ。
小学校で使用していた学習帳とは違って、なめらかでつるつるしており、胸いっぱいに紙の匂いを吸い込んだ。

わたしはそのノートに、どうやったらもののけ姫になれるのかを書き連ねた。
もののけ姫のコスチュームを描いたり、もののけ姫が連れている犬の犬種を調べたり…。

当時、『もののけ姫はこうして生まれた』というドキュメンタリービデオが販売されていたのだが、両親にねだってそんなものまでTSUTAYAでレンタルしてもらった。
今視聴すればとても面白いのだろうが、当時のわたしには全然わからなかった。

今にして思えば、その『もののけ姫』ノートを作ったことが、わたしと創作との出会いだったのだろう。


そこから、お気に入りのノートを探し出すことがわたしの習慣になった。

自由研究で書き始めたファンタジー小説は、100円ショップのリングノートで書き始めた。
各章ごとに違った色のマーカーペンでラインを引き、章ごとの雰囲気を演出した。

駅前の小さな書店で売っているノートには、人魚姫アリエルやシンデレラなど、ディズニープリンセスが描いてあった。

それも当時は珍しい、色鉛筆タッチのイラストだ。
真ん中に2つ穴が開いていて、リボンなどで複数のノートを束ねることができる。
そのノートにはマンガを描いた。
いずれも自分や友人、妹などが主役の物語で、『ONE PIECE』のルフィと冒険をしたり、清少納言や紫式部が生きている平安時代にタイムスリップする…というような話だったと思う。
これもありがちな話だが、遊びに来ていた従兄弟に読まれてしまった、というハプニングも(それにしても、人のノートを勝手に読むなんてひどいと思う。いまだにちょっと許せない)。


中学に上がると、仲の良い友人との交換日記がブームになった。
繁華街に繰り出し、おしゃれな雑貨屋さんでノートを買った。


高校生からは、観た映画や読んだ本などの感想文を書き溜めるようになった。
このときに愛用していたのは、無印良品のシンプルなノートである。
併せてカラーペンも無印良品で統一していた。今でも、愛用しているカラーペンはだいたい無印良品のものだ。
だからファミリーマートから無印良品が撤退した時には、心の中で涙した。

20代になり日記を書き始めるようになって、3000円くらいする日記帳を買ったこともある。それなりによかったが、やはり自分には200円~300円くらいのノートが一番書きやすいと確信した。


俳優時代には、役作り用のノートを持っていた。
舞台を1本上演するたびに、その時演じる役について考えるためのノートだ。
作品に描かれた時代背景、込められたメッセージの他に、その役の台本には描かれていない設定や感情などをどんどん書き込んでいった。
今でも、実家には山のような上演台本と一緒に、役作りノートが保存されている。

10代の頃から書き連ねていた役作りノートは、キャリアを積むに連れてその内容が変化していくのが読み取れて面白い。
それはそのまま、俳優としての自分の成長を表しているかのようだ。

最初は「このセリフをどんなふうに言おう」というメモ書きばかりが出てくるが、キャリアを積むごとに、セリフの言い回しではなく、生身の人間として役と向き合うようになってくるのがわかる。舞台を降りた今でも、これらのノートはわたしの宝物だ。


現在は小説を書く時にも、アイディアなどはPCに保存するようになったものの、詳しいキャラクター設定やプロット(あらすじ)を、未だにノートに書きつけている。

息子を妊娠中には、エコー写真や今の気持ち、息子の成長記録をノートに綴っていた。
いつか息子が親になる時には、このノートを渡そうとひそかに考えている。

このように、わたしという人間にはノートが必要不可欠だ。
ほとんど自分自身を構成していると言ってもいい。

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