マトリックス リザレクションズ

マトリックス レザレクションズ(2021年:アメリカ)
配給:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
監督:ラナ・ウォシャウスキー
出演:キアヌ・リーヴス
  :キャリー・アン・モス
  :ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世
  :ジョナサン・グロフ
  :ジェシカ・ヘンウィック

マトリックスシリーズ新章。前作でマシンシティの中に消えた救世主のその後を描く。
救世主が仮想世界を救ったことにより機械と人間の間に一定の共存が生まれた。機械が現実世界の人間と手を組んで世界を再構築している。
前作より増して思われることは、大胆に先進的な設定を取り入れていること。劇場公開までプログラムが粒子の形をとって現実世界に存在しているとは思わなかった。機械たちも流れるような動きでCGとは思えない、実存するような質感・流れる動きがVFX技術の向上を見せつけられた。
マトリックスシリーズに共通する「選択」というテーマも、さらに重くのしかかる。今の生活に違和感を抱えながら、鬱屈・苦悩を貯め込んでいくキアヌ・リーヴスの表情は深い。年齢を重ねて表現できる心理描写だろう。
何度も繰り返される飛ぶ鳥の群れ、前作にも登場した黒猫のデジャヴ、大都市が機械的に動いていく風景、「マトリックスとは…」という持論を延々と述べるクリエイターたち。表現描写が効果的に使われて、観ている側に不安感をあおる。前作より心に訴えかけられている。
キャスティングの妙も大きい。今作から登場している俳優も魅力的。ジョナサン・グロフが演じた敵は体格も隆々で堂々としており、力強さがあふれ出ていた。壁をパンチ一発で砕く姿は説得力がある。敵だが白でも黒でもないトリックスターとしてストーリーを盛り上げてくれた。
今回のキーパーソンはジェシカ・ヘンウィック。跳ねっ返りの無鉄砲な艦長で、気の強さが前面に出た表情は非常に魅力的。ストーリー上でも大活躍だが、南方アジア系女性のしなやかさを活かしたアクションは素晴らしかった。
ストーリーが進むにつれ、機械側の非情さが注目される。botの存在は主人公たちを仮想世界の檻に閉じ込めておくのに、最大の効果を発揮している。botが一瞬にして人間性を失い、襲ってくるのには恐怖を感じた。彼らが大挙して襲撃してくるシーンでの非人間的な攻撃には閉口してしまった。
4作目は世界的に賛否両論があるという。自分もどちらかというと「否」の方。3部作でひとまず完結しているので、新たに話を続けるのはもったいない気がする。ストーリー上ではプログラムの更新で前の世界とは変わってしまったというが、それなら主人公たちを蘇生させる必要はないのではと感じる。それについてもある程度の説明はあったが、いつもの難解な用語・言い回しがあり、きっちりと理解ができなかった。
前作でもあったのだろうが、あまり好きになれないセリフが耳ざわりだった。子供にFuckと言わせたり、MILFというあまり上品とは言えない単語が出てきたりと、いちいち目くじらを立てるなと自分でも言い聞かせながらも、気になってしまった。自分はもう頭の固い大人になってしまったのだろうか。
前作の映像が頻繁に使われるのも気になってしまった。主人公が覚醒するためには必要な演出ではあるが、それが観たくて映画観てるんじゃないんだけどなぁ…、と感じてしまった。いないのかもしれないが、前3作を観ていない観客は置いてけぼりになってしまうだろう。
残念なのはやはり旧キャストの加齢。キアヌ・リーヴスは年齢を重ねて表情の演技が素晴らしいが、ヒゲはいるのか?と思ってしまう。今作は控えめなので何とも言えないが、アクションは昔より抑え気味。諸手突きで吹っ飛ばすアクション一辺倒では飽きてしまう。
きれいな女性だがキャリー・アン・モスの年齢もウーンと考え込んでしまう。ルッキズムはダメなのは重々理解しているんだが、前作のみずみずしい色気を覚えている一ファンとしては物足りない。白人の加齢は重要課題だ。
そしてローレンス・フィッシュバーンがいないこと。いるのはいたが回想と石像。年齢もありアクションができなくなっているのは仕方がない。後を受けたヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世の扱いには驚いた。表情と動きがいい俳優だったので今後注目しよう。
おそらくだが、次作もあると思われる。ラストシーンは機械に対して宣戦布告のようにも取れる。救世主が二人になったとも取れる。そして途中から姿を消したトリックスターも不気味な存在感を残している。期待しているのか、やめてほしいのか、まだ自分には判断がつかない。

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