マトリックス

マトリックス(1999:アメリカ)
配給:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
監督:ラリー&アンディ・ウォシャウスキー兄弟
出演:キアヌ・リーブス
  :キャリー・アン・モス
  :ローレンス・フィッシュバーン
  :ヒューゴ・ウィーヴィング

VFXでその後のアクション映画を変えた名作。スローモーションで弾丸を避ける、壁を駆け上がる等々「バレットタイム」という、それまでになかった表現をハリウッド映画に吹き込んで、アクション映画こそ特殊効果をフルに使えることを世界に知らしめした代表作。視聴後の爽快感はいまだに色褪せない。
ストーリーは一直線。仮想世界に囚われた人類を救世主が現れて救う。仲間の裏切りがあってピンチになり、救世主が殺されるが復活を遂げ、圧倒的な力に目覚める。王道の漫画的展開。背景には日本の漫画・アニメやハリウッド・香港映画へのオマージュをふんだんにちりばめている。革の黒コート、二丁拳銃、サングラス等々。小道具にもこだわり抜いて、監督・スタッフ・キャストの趣味や嗜好が結集している。日本での認知度は低いがNOKIAの携帯は欲しかった。
ストーリーは分かりやすさを出しているため展開を読めすぎてしまう。仲間と話しているシーン後、次のシーンではその仲間が裏切っているシーンの挿入は早すぎる。キャラクターの容姿がいかにも悪役というのも展開がわかりやすい。主人公が一度殺された後に復活し、いきなりに圧倒的な力に目覚める展開は日本のマンガでは王道的。
最も優れているのはキャスティングだろう。主人公のキアヌ・リーブスが、真実を知りたいが知ることを恐れる、相反する感情をないまぜにした表情や演技が秀逸。アクションも見どころが多く、カンフーや銃撃戦もVFXで演出されているとはいえ、それを上回るキアヌ・リーブスの説得力あるアクションがいい。ヒロインのキャリー・アン・モスの凛とした美しさと程よい色気は当時斬新だった。強さと美しさを備えたヒロイン像は2000年代以降急速に増えている。ローレンス・フィッシュバーンは固い決意と信念を感じさせる強いリーダーを演じきっていた。キャリアが長い俳優だけに重厚な演技が光る。
一番秀逸なのは敵を演じたヒューゴ・ウィーヴィング。執拗までに主人公たちを追い詰め、圧倒的な力を持ちながら、裏切りも誘う狡猾さをよく表していた。主人公たちを抹消することを目的としながらも、自身も自由になりたいと屈折した思いを取引に持ち掛けるときから、彼との激しい戦いを感じさせた。
「SFでは使い古された設定」「VFXでストーリーがぼやける」等の酷評もあるが、エンタメ性とサスペンス性にSF感をミックスしたバランスの加減がちょうどいい。三部作の初作ということで不明な部分が多々見られるが、2作目・3作目とストーリーが解明されてく流れになっていることには監督の大作を作るという意気込みを感じる。

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