【3分判例】3位:津地鎮祭訴訟判決(最大判昭和52年7月13民集31巻4号533頁)

政教分離規定の趣旨

日本国憲法が政教分離規定を設けたのは,戦前の信教の自由の保障が不完全なものであったことや,各種の宗教が多元的,重層的に発達,併存してきているという我が国の事情を考慮して,信教の自由の確実な保障のためには国家と宗教との結び付きを排除する必要があると考えられたためである。
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政教分離原則に基づく憲法の諸規定は,我が国における宗教事情の下で信教の自由を確実に実現するためには,単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず,国家といかなる宗教との結び付きをも排除する必要性が大きかったことから設けられたものであり,国家と宗教との完全な分離を理想とし,国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものである。
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憲法の政教分離規定は,国家と宗教との完全な分離を実現することが実際上不可能であることを前提として,国家が宗教的に中立であることを求めるのではなく,国家と宗教とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らして,相当な限度を超えると判断される場合にこれを許さないとする趣旨である。
⇒ × この判決は「国家と宗教との完全な分離を実現することは、実際上不可能に近い」としつつも、「国家が宗教的に中立であることを要求するものではある」と判断している。

憲法20条3項により禁止される「宗教的活動」

国及びその機関の行為が憲法第20条第3項にいう「宗教的活動」に当たるか否かを検討するに当たっては,当該行為の外形的側面を考慮するのではなく,行為者の意図,目的,一般人に与える効果影響等諸般の事情を考慮し社会通念に従って判断しなければならない。
⇒ × この判決は「当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従つて、客観的に判断しなければならない」として、行為の外形的側面を考慮することを前提としている。

国家と宗教とのかかわり合いが憲法上許容される限度は,国家の行為の目的と効果を考慮して定められる。例えば,ある市が建築工事の無事安全等を神式で祈願する地鎮祭のための費用を公金から支出する場合,行為の目的は,その儀式に対する一般人の評価を考慮せず,市の関係者がどういう意図で支出を行ったかで判断すべきである。
⇒ × 「当該行為に対する一般人の宗教的評価」や「当該行為の一般人に与える効果、影響」も考慮要素である。

宗教上の祝典,儀式,行事については,その目的が宗教的意義を持ち,その効果が宗教に対する援助,助長,促進又は圧迫,干渉等になるような行為であれば,憲法第20条第3項により禁止される「宗教的活動」に含まれるが,その判断に当たっては,社会通念に従って客観的になされなければならないから,行為者がどのような宗教的意識を有していたかについてまで考慮に入れるべきではない。
⇒ × 「当該行為者が当該行為を行うについての意図」も考慮要素である。

政教分離原則における目的効果論は、条文の文言の辞書的意味や条文の文法的構造等に基づいて条文を解釈する方法(文理解釈)によって導くことができる。
⇒ × 条文からは明らかではない。

憲法20条3項の「宗教的活動」は2項の「宗教上の行為等」とは異なる

憲法第20条第2項の狭義の信教の自由とは異なり,同条第3項による保障には限界があるが,同項にいう「宗教的活動」に含まれない宗教上の行為であっても,国及びその機関がそれへの参加を強制すれば,第20条第2項に違反することになると解される。
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憲法第20条第3項の禁止する宗教的活動に含まれないとされる宗教上の祝典,儀式,行事等であっても,国又はその機関が,宗教的信条に反するとしてその参加を拒否する者に対してそれらへの参加を強制することは,その者の信教の自由を直接侵害するものとして同条第2項に違反する。
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