【3分判例】1位:旭川市国民健康保険条例違憲訴訟判決(最大判平成18年3月1日民集60巻2号587頁)

3分判例シリーズとは?

司法試験や予備試験の短答式の肢を読むことで、3分で判例をマスターするシリーズです。

関連条文

第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

「租税」とは?

この判決は,国又は地方公共団体が課税権に基づき,その経費に充てるための資金を調達する目的をもって,特別の給付に対する反対給付としてでなく,一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は,その形式のいかんにかかわらず,憲法第84条に規定する租税に当たるというべきであるとした。
⇒ ○

「租税」以外でも強制の度合い等によっては憲法84条の趣旨が及ぶ

最高裁判所の判例によれば,個人への特別の給付に対する反対給付として当該個人に対して課する国民健康保険料のような金銭給付は憲法第84条の「租税」には当たらないと狭く解したとしても,「租税」以外の公課の賦課要件について定めた条例が憲法第84条の趣旨に反することはあり得る。
⇒ ○

この判決は,国民健康保険の保険料は租税ではないから憲法第84条が直接適用されることはないが,国又は地方公共団体が賦課徴収する租税以外の公課であっても,賦課徴収の強制の度合いなどの点において租税に類似する性質を有するものについては,憲法第84条の趣旨が及ぶと解すべきであるとした。
⇒ ○

租税法律主義は,社会全体に対する財やサービスを提供するための資金を租税として強制的に徴収する場合について規定したものであるから,個人への給付に対する反対給付としての性質を有する保険料等については適用がなく,また,その趣旨も及ばない。
⇒ × 同上

法律だけでなく条例による規律も許される

憲法第84条は,直接的には,租税について法律による規律の在り方を定めるものであるが,国,地方公共団体等が賦課徴収する租税以外の公課であっても,その性質に応じて,法律又は法律の範囲内で制定された条例によって適正な規律がなされるべきである。
⇒ ○

憲法第84条は、「あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と定めているところ,同条にいう「法律」には条例も含まれるとする見解は,旭川市国民健康保険条例違憲訴訟判決(最高裁判所平成18年3月1日大法廷判決,民集60巻2号587頁)と矛盾抵触する。
× 同上

租税は,国民に対して直接負担を求めるものであるから,課税をするに当たっては,必ず国民の同意を得なければならない。したがって,租税を創設し,改廃する場合だけでなく,課税要件と賦課及び徴収の手続についても,全て法律に基づいて定められる必要がある。
⇒ × 同上

国民健康保険料には憲法84条の趣旨が及ぶ

市町村が行う国民健康保険は,保険料を徴収する方式のものであっても,強制加入とされ,保険料が強制徴収され,賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから,これについても憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきである。
⇒ ○

憲法第84条の定める「租税」とは,国又は地方公共団体が,その課税権に基づいて,その使用する経費に充当するために,強制的に徴収する金銭給付のことをいい,市町村が行う国民健康保険の保険料の徴収には憲法第84条の趣旨は及ばない。
⇒ × 同上

この判決によれば、租税以外の公課であっても,租税に類似する性質を有するものについては,憲法第84条の趣旨が及ぶところ,その賦課徴収の強制の度合いは,当該公課と租税との類似性を検討するときの要素となる。
⇒ ○

賦課要件をどの程度明確に定めておく必要があるか

この判決は,憲法第84条の趣旨に照らせば,市町村が行う国民健康保険の保険料についても,条例において賦課要件をどの程度明確に定めておく必要があるかは,専ら国民健康保険が強制加入とされ,保険料が強制徴収される点を考慮して決定されるべきであるとした。
⇒ × この判決は「賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは,賦課徴収の強制の度合いのほか,社会保険としての国民健康保険の目的,特質等をも総合考慮して判断する必要がある」としており、強制の度合い以外も考慮要素としている。

市町村が行う国民健康保険の保険料方式での強制徴収は租税に類似する性質を有するので,条例で定める賦課要件の明確性の程度は,憲法第84条において要求される明確性の程度と同等のものが求められる。
⇒ × 同上

具体的な保険料率が賦課期日後の告示であっても恣意的な判断が加わる余地がなければ憲法84条に違反しない

この判決は,法律の委任に基づき保険料の賦課要件を定めるべき条例が保険料率の決定等を市長に委任していることにつき,委任された事項の内容や保険料率に係る算定基準の定め方等を検討して,憲法第84条の趣旨に反しないものと判断した。
⇒ ○

この判決は,保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準及び賦課総額に基づく保険料率の算定方法が賦課期日までに明らかにされているとしても,具体的な各年度の保険料率をそれぞれ各年度の賦課期日後に告示するとすれば,憲法第84条に反し,許されないこととなるとした。
⇒ × この判決は「この算定基準にのっとって収支均衡を図る観点から決定される賦課総額に基づいて算定される保険料率についてはし意的な判断が加わる余地はなく,これが賦課期日後に決定されたとしても法的安定が害されるものではない」から「各年度の保険料率をそれぞれ各年度の賦課期日後に告示したことは,憲法84条の趣旨に反するものとはいえない」と判断している。

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