【3分判例】5位:東大ポポロ事件(最大判昭和38年5月22日刑集17巻4号370頁)

①学問的研究の自由+②研究結果の発表の自由は一般国民にも保障される

学問の自由を保障した憲法第23条の規定は,支配的見解によれば,大学における教授その他の研究者の学問研究の自由,学問研究成果の発表の自由及び教授の自由の保障に限定されており,国民一般の学問的活動の自由を保障するものとは解されていない。
⇒ × この判決は「学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであつて、同条が学問の自由はこれを保障すると規定したのは、一面において、広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、他面において、大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨としたものである」として、国民一般の学問の自由を保障している。

最高裁判所の判例によれば,憲法第23条は大学における学術研究活動の自由を保障し,国民一般の学問の自由は憲法第19条及び第21条によって保障される。なぜなら,大学が学術の中心であり,深く真理を探究することが大学の本質であるからである。
⇒ × 同上

学問の自由は,学問的研究の自由とその研究成果の発表の自由を指しており,憲法第23条は大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることに鑑みて規定されたものであるから,同条の保障は大学の教授や研究者を対象とするものであり,国民一般はその保障の対象ではない。
⇒ × 同上

③教授その他の研究者の研究結果の教授の自由が保障される

この判決は、「教育ないし教授の自由は、学問の自由と密接な関係を有するけれども、必ずしもこれに含まれるものではない」として、一般国民の教育ないし教授の自由の保障については明言を避けた。

しかし、その後、旭川学テ事件大法廷判決(最大判昭和51年5月21日刑集30巻5号615頁)がその内容を明らかにしている。

憲法23条により大学の自治も保障される

最高裁判所の判例によれば,憲法第23条は,狭義の学問の自由ばかりでなく,大学の自治を制度的に保障する。なぜなら,大学における学問の自由を保障するために,大学の自治が伝統的に認められているからである。
⇒ ○

大学における研究と教育は,大学が国家権力等による干渉を排し,組織体としての自律性を保障されることなしには全うすることが不可能であるから,学問の自由と不可分のものとして大学の自治も保障される。
⇒ ○

大学の自治は,大学における研究教育の自由を制度的に保障するために憲法第23条によって保障されていると解されるから,教授の任免や施設の管理等,研究教育の内容に直接関係しない事項については,大学の自治権は及ばない。
⇒ × この判決は、「この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。また、大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められ、これらについてある程度で大学に自主的な秩序維持の権能が認められている。」としている。

大学の自治の保障は,大学の施設や学生の管理に関する自主的な秩序維持の権能には及ぶが,大学の教授その他の研究者の人事に関する自主的な決定権には及ばない。
⇒ × 同上

大学の自治は直接には教授その他の研究者の自由のためのものであり、学生はこれらの自由と自治の「効果」を受けるだけである

大学における学生の集会が、大学の公認した団体が大学の許可を得て開催したものであれば、真に学問的な研究又はその成果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当たる場合であっても、同集会への警察官の立入りは、大学の有する学問の自由と自治を侵害することとなる。
⇒ × この判決は、大学の学問の自由と自治は「直接には教授その他の研究者」のものであり、学生は大学の自治の主体ではないとしうたうえで、「大学における学生の集会も、右の範囲において自由と自治を認められるものであつて、大学の公認した学内団体であるとか、大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによつて、特別な自由と自治を享有するものではない」と判断している。

「実社会の政治的社会的活動」には大学の自治は保障されない

大学における学問の自由を保障するために伝統的に大学の自治が認められているところ,学内集会について大学の自治の保障が及ぶか否かの判断に当たって,その集会の目的や性格を考慮することは,学内で行われる活動をその思想内容に着目して規制することになり,大学の自治を認めた趣旨に抵触するから,許されない。
⇒ × この判決は「学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない」と判断したうえで、本件発表会につき「演劇の内容もいわゆる松川事件に取材し、開演に先き立つて右事件の資金カンパが行なわれ、さらにいわゆる渋谷事件の報告もなされた」ことや「一般の公衆が自由に入場券を買って入場することが許されたもの」であることを理由に、「実社会の政治的社会的活動」と認定している。

大学構内の施設を利用した集会であっても,実社会の政治的社会的な活動が行われている限り,その集会が一般に公開されているか否かを問わず,警察官は,警備情報の収集のため自由に集会の場に立ち入ることができる。⇒ ⇒ × この判決が警察官の立ち入りを適法としたのは、「本件警察官も入場券を買つて自由に入場した」ことも理由となっている。「実社会の政治的社会的活動」であり、かつ「公開の集会またはこれに準じるもの」であるという2つの理由が重要であるため、大学の自治を享有しないからといって、直ちに警察官の立ち入りが許されるわけではない。

関連問題:大学構内への警察官の立ち入り

大学構内への警察官の立入りは,大学側の許諾又は了解の下に行うことを原則とすべきであるが,裁判官の発する令状に基づいて犯罪捜査のために立ち入る場合には,大学側の許諾又は了解を得る必要がない。
⇒ ○

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?