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手紙と思い出

一年に一度やってくる、手紙を書く日。もちろんそれは、時期ならではのクリスマスカード。相手は、フランスのファミリー宛。今年の夏にフランスでお世話になった人たちに。
彼らとの付き合いは長い。始まりは、私の母が大学時代にフランスのソミュールというところでホームステイをしていたこと。そこから母は未だに35年以上、途中縁遠くなるなこともあったらしいが、未だに関係性を続けていて、フランス語のレッスンに週一度通い、それが彼らと話をしたり手紙を書いたりする原動力になっているというんだから、本当に凄いと思う。
私がそのファミリーに会ったのは、一度目は中学3年生の時、2回目は私が大学生のころ、だったかな。
母の姿を見て、遠くにいる人と繋がることや、海を越えて言葉が違っても、心の温かさを体験することを教えてもらっている気がする。
結婚をして、モバイルボヘミアンの夫と結婚してから、2年連続でフランスの彼らのところに訪れた。ホストファミリーの一人である、母と同じ年齢のロホンスとピエールの二人のおもてなしが心こもっていて、本当に素晴らしいのだ。

結婚した翌年の2017年9月、ロワール地方にある川沿いにある人口たった300人の小さな街Le Thoureilの彼らの家に滞在した。1日目は、船の中で生活しているというベンとマリアという夫婦のところに遊びに行った。河辺で待っていると、小さな手作りの小舟で(イメージでいうと笹の葉みたいな)犬と一緒に手漕ぎのボートで迎えに来てくれて、彼らが住んでいる場所、これまた手作りで木造の船に到着。彼らの部屋の中に入ると、小さな丸テーブルとその奥にはキッチン、そして保存食のビンが壁にぎっしりと並んでいた。私の中では、保存食や発酵食が好きな人は、季節を楽しんでいる人。自然の中に行くのが好きだし、自分のことを大切にしていて、自己肯定感が高く、総じてハッピーがベースにある人、という勝手な方程式があって(笑)。まさにそんな人たちでした。カジュアルに決して気張ることのないおもてなし。きっと近くのブッチャーで買ってきたであろうハムやチーズやオリーブという最高にワインと合うラインナップが並んでいて、楽しくロゼ、白、赤を開けて。
人生を愉しむ、これがアールドビーブルなんだ!って思ったことを今でも鮮明に思い出すのです。
ボートに浮かび、手作りのぬくもりの家の中にいるなんともいえない特別感と高揚感とあたたかさ。少し薄暗い部屋の中をおもうとあ、今でもきゅんとする。
帰り道、川辺から地上に出るまでに、なんだか胸がいっぱいになって、泣きそうになったこと、その見上げた夜空は大袈裟でなく決して忘れることはない人生のハイライトだ。
そんなふうにうるうるしていると、ピエールは決まって、ウィンクをしてくれたりして、(笑)なんだかそれにも胸がこみ上げたりしたのでした。

今年の夏も彼らのところに遊びに行った。ピエールの息子さんにBabyができたり、船に住む彼らにも子供ができて、新しく家族が増えることを一緒に喜べることに、嬉しく思ったり。こうやって、母からもらった縁というものを引き継いで繋いでいくことも、結婚、という形の一部であるのかもしれないと思った。ロワール地方はもともと、フランスの台所といわれる位農業が盛んだが、この300人しか住んでいないという小さな村は、中でも有機農業が盛ん。さらに、村にある3、4?種類のワインはすべて有機農法というから驚いた。自分たちが自然農法で自給自足生活をしていることと同じで、趣味嗜好が同じことを答え合わせしているかのようだった。ワイン畑を案内してもらったり、庭の木の下で、机を囲って家族皆で紅茶を飲み、クッキーを食べたり、地元のアーティストの画廊に見学に行ったり。盛り沢山だった。

母に体験を報告すると、「私もフランスに行って、彼らのおもてなしを受けて、その温かさに人生を教わったの。同じ体験をしてもらえて嬉しい」と言っていた。そんな母は、毎週通っているフランス語のレッスンのLINEグループで、毎日フランス語で会話をすることが楽しみらしい。

手紙を書きながら、母の想いが聞けたこと、自分にとって特別な思い出をくれた彼らを思い出し、また胸がいっぱいになった1日だった。