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乙女椿と横濱オペラ

 webマガジンCobaltさんで連載していただいた「乙女椿と横濱オペラ」について。こちらノベル大賞受賞後第一作として書いた「乙女椿と横濱オペラ」の続編になります。前回は真夏に日傘をさしながら横浜の街を歩き回った記憶があるので、一年半ほど前でしょうか。今回は雨が降る中、さ、さむい…とかおもいながら坂道をあがったりさがったりとかしました。

 このはなしはもともと、当時書いていた「月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。」というはなしの主人公である時川詩子の家系図をつくる中で生まれました。二年くらい前でしょうか。
 月下鴨川もなんやかやあり、2月に改題して刊行していただくことになったのですが、ざっくりいうと、詩子と七森、主人公ふたりの百五十年にわたる血の因縁の物語です。そこで、準備として、時川一族の家系図と略歴をつくりました。生没年とか、誰と結婚して子どもは何人いたのかとか、職業とか、あとはおおまかな人物像、人生など。その一端にいたのが「草介さん」でした。
 ただ、このひとを主人公にすると、物語自体の雰囲気が重くなりそうだったので、草介の人生に関わる人間たちの中から白羽の矢がたったのが紅、それなら彼女の青春時代の物語にしよう、ということで、物語の方向性が決まった気がします。紅の目から語られる物語になったため、だいぶ雰囲気が乙女でかわいいかんじになりました。
 一作目を書いたとき、月下鴨川がないと、草介が京都の絵師の家の生まれではじめから終わりまで京都弁喋ってる必然性を説明できないので、このはなしだけ独立させて素直に江戸下町生まれとかにしようかと百回くらい考えたんですが、でもやっぱり時のつらなりの中で物語を描けたらいいなあ、と思う気持ちもあり…。結果、ご縁があって、ふたつともこうして公開できたことをしあわせに思います。
 続編「リボンの花幽霊」は、月下鴨川の最終稿を終えた去年の秋、金木犀の季節に書きました。物語を通して、いちばん悩んだのは桂花の造形で、三回くらい人物像の方向性を変えたような。最初はもうちょっとストレートな艶やか美人だったのです。が、草介がまったく惚れそうに見えなかったので……。
 草介まわりのはなしとか、いつか書きたいなあ、みたいなエピソードは一作目のときからずっとあるのですが、うん、いつか書けたらいいなあ。ひとまずはこちらで続編が完結になります。おつきあいくださったみなさま、ほんとうにありがとうございました!

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