「病的な恋のロンド」あとがき

「病的な恋のロンド」完結しました!
5か月ほど、文庫1冊程度の連載でした。もともとキャラ設定的に読んで楽しめるようなものでもなさそうだし、ひとりで書いて蔵にしまっておこうかなって思っていたんですけど、なんだかんだあり、こうして公開できました。爽と日魚子、ふたりの面倒くさい恋につきあってくださったみなさま、ありがとうございました!

ロンドは去年、ちょうど白兎の改稿作業のあいまの息抜きに書いてました。はじめに決めたコンセプトは、商業では書くことを避けそうな性質や背景を持った男女の物語、でした。より具体的にいえば、「病的に惚れやすい女の子がヒーローではない男と恋愛をする」「ヒロインではない子と関係を持つヒーロー」などです。こういう厄介な状況での男女の感情のもつれあいをやりたかったのと、あと読み手と共感でつながらないタイプの登場人物を書きたかった。
爽と日魚子をはじめ、出てくるひとみんな厄介さがあるひとたちで、でもとくべつ肯定も否定もなく書きました。ふだんの物語だと、なにかと因果応報をつけて据わりよくしてしまうことが多いので、ちょっと新鮮でした。とても自由で、そのぶん難しさもあり、そこを含めて楽しかったです。

キャラについてもすこし。
爽。女の敵な軽薄男……と見せて、ひとりへの愛がめちゃくちゃ重い男。あまりに書きやすかったです。なまえは、ぜんぜん爽やかじゃないから逆に爽。マンチカンはわたしが飼いたいにゃんこです。たぶん、本質的には尽くし型というか、ひととかものに手間を惜しまない性格。でも外では反対のことをしている。それでバランスを取っているんですが、自己矛盾も起こしていました。ちなみにほとんど作ってない登場人物設定の爽のとこ、「革靴をきちんと磨く男」と書いていてわらった。爽はきれいな革靴を履きたいというより、だいじな革靴は手入れしたいし、その時間がとてもすきなんだろうなって思いながら書きました。
日魚子。男運がわるいというより、自分がほんとうに欲しいものがわからないから迷走し続けていたんだろうなって思います。本質的には、重たくて苛烈。最終話で「裏切ったら殺すから」ってさらっと言ってて、ひぇって思ったんですけど(裏切ったらほんとうに首絞めて殺すと思います)とても日魚子らしいセリフだとあとで思った。ひなが歴代彼氏に尽くしまくってたのは、そうするのがすきなのではなくて、愛してほしいの裏返しのようにわたしには見えました。
話がすこしズレますが、作中で象徴的に使っていたナナカマドが「燃えづらい木」だとあとで知って、おもしろかったです。
大地。本作の良心。大地の人間性次第で、泥沼にもなった話だと思います。正直、話を転がすならそっちのほうがおもしろい気もしたんですが、そうすると大地がクズだから日魚子が爽を選んだみたいなはなしの流れになっちゃって、趣旨からズレるなとも思い、いまのかんじに。このひとだけがメトロノームのように、誰にも流されずに自分を貫いていました。でもわたしは、大地は爽が思っているよりもずっと生きていくのが不器用そうに見えます。
美波。マウント女子。わたしは結構すきです。きれいにまとまりすぎるので、美波にいい男はあてがわなかったんですが、そのうち傍観して楽しむ人生をほっぽって、誰かと本気で恋したらそれもそれで楽しいんじゃないかと思います。でも美波はそういうの、きれいごとだと言って、おきれいな理屈に取り込まれないように反発しそうです。
菫。菫と清文(爽の父親)については作中で深く触れなかったです。このふたりや葉子(爽の母親)はときどき想像をふくらませていて、互いに対してや爽やひなに対して何を想っていたのか、今どう思っているのか、書けてもしまうんですが、必要以上に共感的になりそうなのでやめました。
わたし個人は、だれにも見せられない部分で偶然共鳴して、ふたりがつながったように見えました。でも、そのつながりは強度としては弱かったんじゃないかなと。菫と清文(あるいは爽)は作中で3回ゼリーを食べてるんですけど、菫の気持ちはそのへんにちょっとのせてます。

キャラ語りをすごくしてしまった…笑
読みづらいはなしだったのでは、とおもいますが、個人的にはのびのびと書けました。おつきあいいただき、ありがとうございました!
今後の予定。また時間があいたら、次は蔵にしまってある別の現代恋愛ものを連載できたらいいなって思っています。いつになるかはわかりませんがそのうち…。でもいまはもうすこしべつのこと、がんばります。

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