第7回 苦手克服研究所 行政法 狭義の訴えの利益を5分でチェック!
みなさん、こんにちは。
伊藤塾講師の藤田竜平です。
今回も、前回に引き続き、
受験生の皆さんから
よくいただく質問をもとに
「気になってはいるけれど
いまいち、よく分からない…」
という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に解説をしていきます。
今回取り扱うテーマは、
行政法の「狭義の訴えの利益」
です。
題材としては
「令和2年度 問題17 肢エ」を
用いて解説をしていきます。
まず、問題17の肢エを以下に示します。
「都市計画法に基づく開発許可のうち、市街化調整区域内にある土地を開発区域とするものの取消しが求められた場合において、当該許可に係る開発工事が完了し、検査済証の交付がされた後でも、当該許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。」
さて、この肢は正しいでしょうか。
結論からいうと
この肢は正しいです。
以下、解説いたします。
まず、本問を解くうえでは
「市街化区域」と「市街化調整区域」の違い
をしっかりと押さえることが重要です。
「市街化区域」というのは
読んで字の通り
これからどんどん建物が建って市街化していくことが
予定されている区域のことです。
他方、「市街化調整区域」というのは
市街化を抑制して自然環境等を守っていこうとされた区域のことで
基本的には建物が建てられる予定のない区域のことです。
そして、「開発工事」というのは
建物を建てるために土地をガタガタと
平らに直す工事のことです。
つまり、開発工事が完了し(検査済証が交付され)たということは
さあこれから建物を建てましょう、
という段階だということです。
以上を前提に
市街化区域を扱った判例
(最判平成5年9月10日、最判平成11年10月26日)
と
肢エの事例のモデルでもあり市街化調整区域を扱った判例
(最判平成27年12月14日)
の違いを解説します。
まず、市街化区域において開発工事が完了した場合
開発許可処分を取り消す意味がなくなります。
なぜなら、市街化区域は
元々建物が建っていくことが予定されている区域ですので
仮に開発許可処分を取り消したところで
問題なく建物を建てられるからです。
したがって
もはや狭義の訴えの利益はありません。
しかし、市街化調整区域においては
開発許可処分を取り消す意味が残っています。
なぜなら、市街化調整区域は
元々建物が建てられることが予定されていない区域であって
開発許可の効力を前提としてはじめて建物を建てられる
という関係にあるからです。
つまり、開発許可処分を取り消すと
その後建物が建つことを阻止できるということになるため
狭義の訴えの利益が認められるということです。
そのことを前提に、もう一度肢エを見てみましょう。
「都市計画法に基づく開発許可のうち、市街化調整区域内にある土地を開発区域とするものの取消しが求められた場合において、当該許可に係る開発工事が完了し、検査済証の交付がされた後でも、当該許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。」
問題文から明らかなように
本肢は、市街化調整区域についての問いです。
そして、前述したように
市街化調整区域というのは
基本的には建物が建てられる予定のない区域を指します。
したがって
「当該許可に係る開発工事が完了し検査済証の交付がされた後」
であっても
許可の取消しを求める訴えの利益は失われない
ということになります。
「市街化区域」と「市街化調整区域」は
理解してしまえば難しくない部分なので
今回の解説を機に、復習しておきましょう。
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく
予定ですので、日々の勉強の息抜きにご活用ください。
また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
では。
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