ジョーカー

を見ておもったこと。
特にバットマンは詳しくないので、ジョーカーという男から感じ、考えたことを書く。ネタバレもしています。

まず、とにかくカッコイイ。何か知らないが、ピエロの姿をしているとき、上着を脱いだ後ろ姿、病院の外で会話してるシーン。それがなんだかやけにスタイリッシュ。かっこいい。ずっと見てられる。

そして笑い声がいい。少しこもった、嬉しいのか悲しいのかわからない笑い方がなんともいい。

そういう要素があるから、暗い映画でも見てられる。

ダンサーインザダークも暗かった、胸糞悪かったけど、ビョークはかわいく、歌声はきれいだった。

話の内容はというと、暗いし、とても緊張感がある。突然バーンてなることもあり、主人公がいけない方向に行くのもあり、きっついところがある。

一番悲しくて涙が出たのが、アーサーが電車の中で拳銃をぶっぱなし、プラットフォームの階段までいくところ。とにかく、悲しかった。自分の大切に思っている人が、もう犯罪者になりこれから自分が歩もうとしている道の先にいなくなってしまった、と思ったからだ。

そのときすでに、自分はアーサーを好きになっていて、まっとうに生きてほしい、幸せになってほしいと、思っていた。

ここからアーサーは、徐々に解放され、生きるよすがを失って、燃えたぎる生命のかたまりみたいになっていく。そこにモラルはない。

本当によくわからなくなる。今自分がいる世界は正しいのか？自分が幸せと感じるその気持ちは、ただ単にマジョリティの世界、一般常識に合わせて自分を塗り替えているだけじゃないのか？という気がまずしてくる。自分の価値観がゆらいでくる。

アーサーは、自分のやりたいことをやり、コメディアンになり、うちひしがれ、大切な人に裏切られ、母親を殺し、有名な司会者を撃ち殺す。

見ていると、ヤバイ、自分もダメかもしれない。自分が引いている一線なんて軽く超えてしまう瞬間が、この先訪れるかもしれない。マジョリティの世界にいられなくなるかもしれない。とマジでこわくなった。

ラストシーンは、血塗られた足跡。あの踊り。コメディー調のおいかけっこ。

かなり、自分のなかをかきまわして、ゆさぶってくる、だけど上質でスタイリッシュな映画。記憶にのこる。

寛容な世界が好きだ。割となんでも許してほしい。でもそのためには、自分も人を許さないといけない。自分の子供を許しているか。不安にかられて、常識を押し付けてないか？ほんとうに？だんだん頭がぐるぐるしてくる。

空気が読めない人や、どうしてもうまくできない人を阻害していないか？お金に換算して、価値がないひとを排除していないか。
狩猟時代なら、そういう足手まといはすぐ死んだだろう。農耕が始まって、少しは村の片隅に住めるようになり、今は技術が進んで、食べ物もかなりとれるようになった。豊かな先進国なら、多少の働けないやつ、うまくやれないやつも生きてはいけないだろうか。

生きていきたいよ。だって生まれちまったんだもの。そういうふうにしかできないんだもの。笑ってしまうんだもの。少しの食べ物と、愛がほしいんだ。優しい言葉がね。

本当にその人が頑張っているのか。本当にその人が病気なのか。だれが判断できるんだ。あの人の頑張りとこの人の頑張り、人それぞれ能力も違うのに比べられるのか。

仕事のチームなら仕方ない。ある一定のレベルに達しないなら外れるしかない。だけどそれだけなんだ。そいつは生きてていいし、飯を食えばいい。身分相応の暮らしをして、貧乏なりにも普通に暮らして、すれ違ったら普通に接すればいい。挨拶すればいい。

最後のほうは感情にまかせて、支離滅裂になってきたけど、とにかくそんなことを思った。