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お母さんってさ、カッコイイよね


時に子どもというのは、あどけない顔で失礼極まりないことを平気で言う。 

その最たる例が、 

小学3年生のときの授業参観で当時44歳だった私の母を見た隣りの席の男子が放った、「おばあちゃん?」という一言。

おそらく悪気はなかったのだと思うし、今であれば、いやいやいやいやおばあちゃんじゃないからお母さんだからお、か、あ、さ、ん!と笑って流すことができるはずだけど、そんなメンタルを持ち合わせていなかった私は、自分の母を「おばあちゃん」と言われたことがただただショックだった。     

あの瞬間に抱いた、恥ずかしいようなムカつくような泣きたくなるような感覚は今でも覚えているし、「おばあちゃん?」と言われた以外にたいして話したこともなかったその男子の名前もしっかり覚えている。

ハセガワ、私はまだ根に持っているぞ。  

それまで一度も気にしたことのなかった母の見た目。年齢。ハセガワの一言がきっかけで、母を他のお母さんと比べるようになった。 

言われてみれば、私のお母さんは他のお母さんよりも老けて見える。スタイルもよくない。
手はゴツゴツでしわしわ。 
〇〇ちゃんのお母さんは髪も染めてて、若くて、スラッとしてて、おしゃれ。   

きっとハセガワも驚くだろう。
まさか自分がぽろっと口にした素朴な疑問によって、私が母の見た目を異常に気にするようになったことや、その授業参観以来、私が母に「仕事忙しいでしょ? 来なくて大丈夫だよ」とテキトーな理由をつけて学校行事に極力来なくてもいいように仕向けたことを知ったら。 


 


ところで最近娘は NETFLIX で『ちびまるこちゃん』を観るのにハマっている。 

先日いつものように一緒に観ていたら、こんな話があった。  

おつかいからの帰り道、まる子は同級生のかよちゃんとかよちゃん母に遭遇した。これから結婚式に行くらしい。 
桃色のワンピースを着て、軽くウェーブのかかった髪。おしとやかな口調。近寄るとふわっと漂う良い香り。かよちゃん母、超美人。
まる子はすっかり心を奪われた。

家に着くと、どうやら掃除中だったお母さんが、ぼさぼさ頭で「お、おかえり! ゼエゼエ」と息を切らせて立っていた。その姿を見て落胆するまる子。

それからというもの、「きれいなお母さんがよかったな」「お父さん、なんできれいな人と結婚しなかったの?」なんて愚痴ったり、学校で「いいなぁタマちゃんのお母さんは……」と羨んだり。


そんなまる子を見ていたら、小学3年生の自分を思い出さずにはいられなかった。
状況は違えど、共感せずにはいられなかった。  

けれども結局まる子の場合、後日あることがきっかけで「きれいなお母さんへの憧れ」は無くなる。  

そしてその憧れが消えた日、せかせかと夕飯の準備を進めるお母さんの背中を見つめながら、何かに気づいたように言ったのだ。


 「お母さんってさ、カッコイイよね」 


突然の誉め言葉にお母さんは「えっ?」と驚きながらも家事を続ける。


—— そこへ流れるキートン山田さんの声。


いつも髪を振り乱し 怒った顔のお母さん 
でも家族のために 一生懸命働くお母さん 
きれいじゃないけど カッコイイ 
それがうちのお母さんなのだと 
思うまる子であった 


まる子も小学3年生。 
私もあのとき気づけたらよかったのに、と思った。  

おばあちゃんに見えるとか、そんなのどうだっていいじゃん。
年齢は他のお母さんより上かもしれないけれど、美人じゃないかもしれないけれど、家族のために働いてるお母さんはカッコイイ。
ゴツゴツの、しわしわの手は、毎日家事や仕事をがんばってくれている証拠。
ハセガワの言ったことなんか屁だ屁!

あの頃の私に、そう言ってやりたくなった。



あれからうん十年、一丁前に母親になった私。普段外を歩いていると、いろんな「お母さん」を目にする。
髪を明るく染めた、見るからに若いお母さん。私と同い年くらいのお母さん。少し年齢が上のお母さん。
体型もさまざま、服装だってさまざま。 

だけどどんなお母さんにだって共通していることがある。 
それは家族のために頑張っているってこと。
それってすごく、カッコイイ。 




いるかなぁ、あの頃の私みたいにお母さんの見た目や年齢を気にしている子。 

もしその子と話す機会があったなら——おそらくその確率はまる子がテストで100点をとるよりも低いと思うけど(まる子ごめん)—— 

もしそんな機会があったなら、私はこう言おうと決めた。




大至急 FOD か U-NEXT か Amazon プライム・ビデオ か NETFLIX に申し込んで!!
そんでもって『まる子、きれいなお母さんに憧れる』ってやつみてください!!!!



   

きっと何かに気づいてくれるだろう。

    


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