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家電業界に身を置き10年間、独身ひとり暮らしを続けている男による家電の選び方ガイド ~オーブンレンジ編~

はじめに

春だ。
新たな出会いの季節。それは家電にとっても同じことだ。就職や進学によって、家電を新たに購入するという人は多いだろう。家電というものは、一度買えば何年も使うのが一般的だ。身の回りに溢れてはいるが、購入頻度は高くない。実家を出たり、結婚して家族が出来たり、子供が生まれたり、家を建てたり、そんな人生における大切な場面場面で、家電は買われていく。言ってしまえば、君の人生の1ページを飾るもの、それが家電だ。
しかしながら、君は家電についてあまりに何も知らない。大事な時を、長い付き合いをする相手を、何も知らないのに生涯を供にしようとしている。親が決めた縁談で、結婚式で初めて会った男と、今まさに誓いのキスをしようとしている花嫁とは君のことだ。

家電とは何か?

この問いに答えられるならば、こんなnoteを読むより、ヨドバシ.comを眺めたほうが有益だ。君が望むものはそこにある。答えられない君の為に、僅かばかりの方向性を示すのがこのnoteの役割だ。

免責

このnoteを信じて、その通りに家電を買ったからといって、その結果起こるあらゆる出来事は、全て君の責任だ。幸福も不幸も全て君のものだ。

このnoteは、広告など第三者への利益を目的とするものではなく、君からいいねを貰うためだけに書く。その点にのみ、俺は責任を持つ。

大半の家電は持たなくても生きていける

まず、前提として、オーブンレンジに限らず、大半の家電は持たなくても生きていける。なぜなら、世界はすでに家電に溢れているからだ。

グラフは各家電の世界販売台数の推移(2018年:富士経済調べ)だ。これを見ると、電子レンジとオーブンレンジは世界で毎年1億台ぐらい販売されている。(以下、ややこしいので電子レンジとオーブンレンジに類する家電は全てオーブンレンジと呼ぶ)

全世界における日本の経済規模の比率は8%程度で、実際、オーブンレンジの販売台数も、日本国内では700~800万台ぐらいだそうだ。耐用年数は10年程度なので、日本国内には少なく見積もっても7000万台の正常に動作するオーブンレンジが存在している。成人(15~64歳)の人口が7000万人なので、ちょうど成人なら1人1個持っているような計算だ。

もし君が今、オーブンレンジを持っていなくても、君の分のオーブンレンジは既に世の中に存在している。実家や友達の家、コンビニやスーパー、職場、ホテル、ネットカフェ、公共施設の休憩スペース、至る所にオーブンレンジは存在していて、それらの大半は無料で利用可能だ。君の調理スキルがレンジで温める以外のことが出来ない程に乏しくても、毎日おいしいごはんにありつくのはそう難しいことではない。

つまり何が言いたいかというと、「生きる」や「食べる」といった最低限シンプルな目的を達成するだけならば、「最も機能の少ない機種」を選ぶのではなく、「持たない」という選択肢もあるのだ。

君がオーブンレンジを持つ理由

家電を持たなくても生きていけるのならば、家電を持つには生きる以上の目的が必要だ。つまり、家電選びとは、人生の選択に他ならない。言い換えれば、人生とは家電選びの連続なのだ。

とはいえ、家電選びのルールは、人生そのものよりほんの少しだけ単純だ。一番イケてる家電を選べばいい。男女の恋愛と違って、相手は君をいつだって受け入れてくれる。簡単にやり直しもきく。たまに炎上することもあるが、水をかけるだけで収まる。単純だ。君がやることは2つだけだ。

 生きる以上の目的について考える
 目的に沿った、一番イケてる家電を選ぶ

具体例で説明しよう。

日本一カッコいいオーブンレンジ

写真はバルミューダの日本一カッコいいオーブンレンジ「ザ・レンジ」だ。
さて、この最高にカッコいいのオーブンレンジは、君にとって一番イケてるオーブンレンジだろうか?バルミューダのHPを見てみよう。

バルミューダはオーブンレンジを「キッチンを楽しくする」ための家電という位置づけで売り出している。特長は「デザイン」「ちょうど良い大きさ」「使う楽しさ」の3点だ。オーブンレンジの本来の機能である「調理」なんてものには一言も言及していない。

「キッチンを楽しくする」

冒頭から述べている、生きる以上の目的とはこれだ。キッチンがどれほど退屈でも俺達は生きていける。かなり普通に生きていける。でも、キッチン楽しい方が人生は楽しい。ザ・レンジはそんな主張をしている家電だ。

キッチンを楽しくするのは、人生を楽しむ上で悪くない考えだと俺も思う。裸にエプロンを着るだけでキッチンが楽しくなる期間はそう長くはない。好きな家電に囲まれながら、ゆっくり手間をかけた料理をして日々を過ごすのは、確かに幸せだろう。

ちなみに、バルミューダの「使う楽しさ」は、音の部分が大きい。
プロミュージシャンによるギターやドラムの演奏を、操作音や調理の完了を知らせる音として採用している。個人的には、こんなニッチな機能にリソースを注ぎ込むなんて、開発&マーケチームはどうかしてると思うが、確かに、楽しいといえば楽しい。差別化もできている。

問題点は、別にキッチンが楽しくなくてもいい思う人も当然いるということだ。あるいは、多くの調理機能をオーブンレンジに求めている人もいるだろう。そういう人からすると、ザ・レンジは一番イケてるとは言い難い。

 生きる以上の目的について考える
 目的に沿った、一番イケてる家電を選ぶ

もっと機能的なパターンを見てみよう。

多機能スチームオーブンレンジ

写真は日立のヘルシーシェフ。見るからに多機能だ。素晴らしい。多機能であればあるほど、多くの人々のニーズに答えている。日系メーカーの家電は「使わない機能ばかり搭載されてる」と揶揄されることがあるが、それは誤った指摘だ。誰かが使わない機能は、誰かが必要としている機能だ。本心からそんなことを言えるのは、世界の中心が自分だと確信しているからで、そんな人には近づかないことをお勧めする。一方、「機能が多すぎて、一つ一つの機能の完成度が低い」という指摘は、往々にしてド正解であり、俺達、家電開発者は、トルストイを引用し、事情論を全力で説明する他ない。

もし完璧を求めたとしたら、君は決して満足することは無いだろう
“If you look for perfection, you'll never be content.”
― Leo Tolstoy, Anna Karenina

それでは、日立のHPを見てみよう。

バルミューダとは打って変わって、「調理」を全面にアピールしている。
しかし、単純に調理だけのアピールではない。

「頑張らなくても美味しい料理を作れる」

これが、ヘルシーシェフの訴求点だ。素晴らしい。怠惰こそ家電の源流であり本流だ。昭和30年代に家電ブームが起きた際、洗濯機に対して「主婦が怠けてしまう」というような、今からすると考えられない議論があった。しかし、主婦を手荒れから救い、多くの時間的余裕を生み出した結果、家電はその議論に完全勝利した。以来、家電は女達に楽をしてもらい、女達をチヤホヤするために進化を続けた。上記の「がんばらなくてもおいしくできる」というキャッチコピーには、そうしたチヤホヤする意図が含まれているのだ。

ヘルシーシェフの特長は、重量センサーだ。従来からあった表面温度センサーと合わせて、2つのセンサーで火加減調整ができるから、従来より簡単に調理できる(=がんばらなくていいよ)というものだ。非常に分かりやすいストーリーで、マーケティング的にも優れている。家電開発者としては、本当に失敗なく出来るのか?どの程度、例外を許容してるのか?等が気になるところだが、こんなに肉推ししてるオーブンレンジ見たことないので、多分、ローストビーフは美味しく作れそうだ。

お店での選び方

さて、オーブンレンジの選び方の例として「ザ・レンジ」と「ヘルシーシェフ」のHPを見比べてみたが、HPだけでは分からない部分についてもお店で説明しよう。

近所の京都ヨドバシにやってきた。

「ザ・レンジ」

「ヘルシーシェフ」もある。

さて、店頭での選び方のコツは、HPを見てもわからない構造や操作性のチェックを中心にすることだ。寸法などは、家でHPを見ながら、設置予定の場所にちゃんと入りそうか確認しながら調べると良い。

オーブンレンジの場合は、庫内はカタログに詳細が載ってない場合が多いので、定番のチェックポイントだ。

こちらが、「ザ・レンジ」の庫内。グリル用のヒーターが1本入っている。家庭用100V電源の場合、ヒーター1本で温められる空間には限度があるので「ヒーター1本=容量は小さめ」と見ればいいだろう。また、表面に焼き目をつけるような調理の場合は、ヒーターが2本あったほうが焼きムラは基本的に少なくなる。ヒーターの破損防止用にガードが付いてるのは安全設計で良いとは思うが、掃除をする際は少々邪魔だ。

参考までに、ヒータが2本あるオーブンレンジとして、パナソニックの「エレック」も紹介しておく。

こちらはヒーターが2本あって、庫内空間が広い。また、角皿をひっかける場所が上段と下段あり、焼き方の調整が可能になっている。破損防止用のガードはない。

最後に「ヘルシーシェフ」の庫内がこれだ。

ヒーターが露出していない。掃除はめちゃくちゃ楽そうだ。オーブンレンジで焼き物をすると、天井面に色々とこびりつくので、調理機能重視の人にはとても良いデザインだ。ほんとこいつ、チヤホヤ上手な家電の中の家電みたいなやつだな。

おわりに ~独身男が選ぶオーブンレンジ~

この長いnoteをここまで読んでくれてありがとう。繰り返しになるが、この家電の選び方ガイドは下記の2点だけが要点だ。

① 生きる以上の目的について考える
② 目的に沿った、一番イケてる家電を選ぶ

生きる以上の目的なんてものは各自で考えてくれ。その結果、買わないという選択肢もある。それは人それぞれだ。

結論としては、俺たち家電の開発者は、いつも君の幸せについて考えて、家電を作っている。君が少しでも幸せに近づけるよう、ベストな選択をしてくれることを願うばかりだ。

最後に、実際、我が家で使っているオーブンレンジを紹介しようと思うが、悪いがここからは先は有料だ。上記までの俺の偏った知識なんて無償でいいが、ここから先は俺の個人情報となる。人生をタダで切り売りする気はない。

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