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未来はいつも不安で、少しばかり切ない

 私の新刊「テイラー・スウィフトはいなかった」が出版されて、三か月が経ちました。雨だれのように、ぽつんぽつんと感想が私の目と耳に入ってきます。
 そのなかから、順不同で、掲載していきたいと思います。
 今回は、アマゾンのレヴューから。

  みらい様

 わたしは、小説を読む時、感情移入をする人物を見つける。
 この本の場合は、「ジェフ・ミルズがいた」に出てくるソラネだった。
話が合いそうな気がするのだ。
 ある種のセンスを持っている人間には美人だが、そうではない人間には、ただの変な女という人物像に、親近感が持てる。
「満員電車って、おかずがいっぱい詰まったお弁当のようね」
 これがこの小説の書き出しだが、これを言ったのが、ソラネだ。小説の世界にすっと入っていける。
 
 この本には、回想形式の3つの話が収められている。それぞれ面白い。
 「テイラー・スウィフトはいなかった」は、自分のことを高校のクラスで埋もれている「透明人間」だと思っていた主人公が、クラスメイトで、ヘルメットをかぶってマスクをし、ビラを配っていた、派手で目立った男、Yを回想する。
 「ジェフ・ミルズがいた」は、父親が仕事熱心で、放任主義に育った離婚家庭の女子高生が主人公。
 自称テクノ系文学少女。つきあっているDJの卵からプレゼントされたカセットテープ(カセットテープ!)と、似たような内容のカセットテープをクラブで拾い、男の浮気を疑い始める。
 「野中リユ」は、「ジェフ・ミルズがいた」の続編。というか、スピンオフ。
 自分の浮気のせいで、女子高生の野中リユと別れた男が、20年後、野中リユを回想する。
 回想形式の小説だが、作者の視線は未来を向いている、とわたしは思った。
 未来はいつも不安で、少しばかり切ない。


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