僕と知的財産

僕は、知的財産と15年くらい前に出会いました。紆余曲折あり、現在は弁理士として知的財産業界に身を置いています。業界にいるとよく聞くのが、「知的財産は難解」という話です。知的財産はいくつもの法律によって複雑に規定されていて、しかも法律の条文を開いてみると、長々と書かれていて、知的財産の初心者からすると、一度読んだだけでは、いったい何を定めているのかさっぱり分からないようになっています。

僕自身、初めて知的財産に触れたのは大学での授業でですが、多分に漏れず、さっぱり分からなかったのを今でも覚えています。その後なんとかそれなりに勉強をして、知的財産の専門家である弁理士になることができましたが、その過程でも、「入門」と書かれた文献にすら非常に高いハードルを感じたことも多々ありました。

僕が知的財産について勉強をし始めたころと比較すると、とても多くの書籍が出版されていますし、インターネット上では多くの記事がアップされています。そして、多くの書籍や記事の執筆者も、知的財産が難解であると思われていることは重々承知のようで、できるだけ具体的にイメージしてもらえるように、具体例を挙げて説明を試みていることも少なくありません。しかし、こうした取り組みをもってしても、依然として一般的に「ハテ、知的財産とは?」という意識は根強く、また企業等で知的財産担当になる方のご苦労は計り知れないなという印象はぬぐえません。

なかなか理解が進まず、普及が進まないというその理由としては、知的財産に関するコンテンツの多くが知的財産「制度」の説明から入っていて、しかもそれが「法律ごと」に分けているというのが、今ひとつピンと来にくい構成になっているのが、知的財産の普及のネックになっているのではないかな、と感じるところです。こうした状況を見るにつけ、もう少し分かりやすいコンテンツは作れないのかと感じています。

難解と言われる「知的財産」が、現実問題として多くの人にとって無関係なものであれば、専門家同士で勝手に難しい話をしていればよい、ということになるのでしょうが、「一億総クリエイター時代」と言われるこの令和の時代において、「知的財産」と無関係でいられる人は、残念ながら極めて少ないと言わざるを得ません。「私はクリエイターではないぞ?」という方も、事業を営む方であれば当然に知的財産に対する感度は高くあるべきですし、「副業」をされる方も、知的財産のことを無視していては、危険が潜んでいるということになります。

したがって、より多くの人が、「知的財産ってこういうものなんだ」という最低限の知識を得て、なにかにつけ「知的財産に関する問題がないか?」とアンテナを張れるようになることが、今の時代に必要なことだと感じています。金融教育が大切だと言われて久しいですが、これからは、知的財産教育は、全ての人にとって必須のものとなるでしょう。

このnoteは、こうした問題意識から、知的財産に関する様々なお話を、できるだけ噛み砕いて説明をしてみようという試みの場となります。制度の説明も大切ですが、noteという媒体の性質からすると、もっと大切なのは、読者にとって分かりやすいコンテンツであることだと考えます。法律を横断的に捉えて、かつ目の前の「あるあるネタ」を題材に知的財産という切り口で見るとどういうことになるか、というのをお伝えしたいと思っています。

なお、諸般の事情により、このnoteは、当面匿名で公開をすることにしています。このnoteに記載された全てのコンテンツは、僕個人の見解に基づくものであって、所属・関係する組織や団体・企業の見解を示すものでないこと、またこれらの組織等とは一切関係がないことを予めお断りしておきたいと思います。

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