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田舎の小さな鉄工所がプロレスのリングを作る事になったきっかけ

今回は弊社がプロレスのリング製作に関わりだした過程、苦労話や製作に関するポリシーなどを書こうかと思います。

まだnoteやりだして間もないのでとりあえず色々やってみたくて偉そうに↓のような目次を作ってみました。あとは写真なども入れてよりわかりやすくいければなと思います。


最初は頑なに拒否!その理由は、、

弊社、最近はプロレスを前面に押し出したSNS活動をしておりましてリングを作るところまできてしまっているのですが最初からそうだったわけではありません。

ワタクシは30年来のプロレスファンではありましたが公私をしっかり分けていたので仕事上でプロレスのプの字も出したことはほとんどありませんでした。

しかしそんな中でこの地域のプロレスをほぼ総なめするかのように見尽くしてたワタクシは次第にいろんな関係者の方と顔なじみになり、鉄工所をしているワタクシに対してリングの鉄骨が曲がったから直してほしい、溶接がちぎれたからくっつけて欲しいなどというお願いをよくされるようになりました。でも趣味のプロレスでビジネスをしたくないと考えていたので基本的には補修は全て無料のボランティア対応しておりました。

普通はあいてる隙間も弊社製は基本的埋めます。
溶接はお手の物です本業なので(笑)

そんな中でリング自体を作れませんか?という話も何回か頂いてはいたのですが自分がプロレスファンだからこそ「リングというものは神聖で命に関わるもの」との思いが強く、「責任も持てないから一切作りません!」と断っておりました。趣味を仕事にもしたくなかったし。。
ただ相変わらずリングの補修のお願いはよく受けてたので補修しながら色んなリングを見て、部品の構造や仕組みなどはしっかりと理解できるようになってはいました。

方向転換

そんな中で名古屋を中心にレフェリーやリング屋さんとして活動していて大変お世話になってるはるさんからも「リングを作っていただけませんか?」とお願いをされたんですけど やはり上記の理由から最初はお断りをしました。

しかし福祉施設の運営もしてるはるさんのとこには試合中の怪我で選手生命を断たれてしまってリハビリを頑張る前野選手が住み込みでいて、はるさんのお手伝いもよくされてるんですが、そんな頑張る前野選手がプロレスにもっと希望を持って関わる事が出来るようにリングを持たせたいんです!と、熱く語られてしまったので、もう断る理由はありません。

変なこだわりを持ってやらないより、信頼できる人にこんなに求められてるならやってみてもいいんじゃないか!っと考え方を方向転換した瞬間でした。
でもやるからには徹底的に本気で。それとしっかりビジネスとしてウインウインになれるようにやっていくという事を決心して重い腰を上げてリング制作に取り掛かることになりました!

やはり甘くなかったリング作り

とはいえプロレスのリングというものはある程度の大きさは決まっているもののリングによって細かい部分は違ったりするし、図面というものも存在してないのでとりあえず名古屋のプロレス団体チームでらさんの所有するリングを弊社に持ってきてもらい、実際に組み立てた上で写真を撮りまくって採寸して、自分で図面を書き下ろしてみました。

採寸採寸また採寸
協力してくれたチームでらさんに感謝

鉄柱やら角パイプやらも1mm板厚が違うだけでも重さが全然変わるのでどれを使っていいのかわからなかったのですが過去にいろんな団体さんのリングを補修していて板が薄かったり溶接が甘かったり曲がったり割れたりしていたのを見てたのでそのようなことは起こらないように少し厚めの部材を使い、溶接も本来リングではそこまで必要がないことだというのは分かっているんですが見た目でも安心してもらえるように普段本業でしている精密で綺麗な溶接を心がけてするようにして制作に取り掛かりました。

年始から取り掛かり試行錯誤を繰り返し、採寸通りにやってるのにあわないところも出てきたりで何回も作り直しを余儀なくされました。
リングというのは最後にロープを絞めてがっつり完成となるので寸法に多少の遊びがないといけないのでしっかりするところ、余裕を持たすところをうまくやらないとギチギチでは部品が入らなかったりもするのです。
中心にスプリングを入れた丸パイプを置くんですが固定できないのでそれがまた寸法にファジー感が出てしまったでとにかく調整に苦労しました。
部品の重量もいざ組んでみて初めてわかるのでこれは頑丈だろうけど重たすぎるな、、とかもう毎日のように課題を突き付けられてました。ある意味しっかり図面があってミリ単位の調整が必要な本業の製品よりも逆にシビアだったかもしれません。

塗装されると一気にぽくなる
何回も何回も組んで細かい調整しまくりました

苦労して完成!しかし大事件が、、

そんな苦労の末に鉄骨全部品が完成したのが3月10日。そしてそのリングが初めて使われるのが 3月21日、神戸での興行。

日程的には少し余裕はあったのですが弊社が製作しているのは基本的に鉄骨部分だけ。その他のロープや木材、ウレタン、ターンバックルなどの部品は別途ではるさんが用意してくださっているのでその部品たちと弊社で作った鉄骨部品たちがうまくマッチするかを納品する前に1回全部を合わせてみる必要があったのです。

最初は普通に組んでみて完成!終わり!
となるところなんですがどうせそれでリングを組み立てるのなら実際にレスラーの方々を呼んで試合をしてもらうのが一番いいんじゃないか?!
それを社員に見てもらえれば自分が作ったものがこうして使われるんだぞ!ってのが実感してもらえるかなと思ったので急遽3月14日に耐久性お試しプロレスと名うって弊社の敷地でリングを組んでプロレスをしてもらうことになりました

適当すぎる告知(笑)

そして迎えた当日、設営をし出して事件が起こりました。

なんと、ロープの長さが想定より長くてロープがしっかり張れなくてダルダルの状態に!ターンバックル分ロープは内側に来るのでそれで長さ計算しないといけないところその分が入ってなくてコーナーポスト位置で寸法計算されてることが発覚しました。
その他木材も大きさ合わないし、マットの鳩目の数が合わなかったりまあなんやかんや問題点が色々出てきました。

なぜかマンモス半田もきてました
見てくださいこのダルダルさ(笑)
マットの下に敷く木材も合わなかったのでレーザーで切りました

ということでお試しプロレスはロープがダルダルのまま行うこととなってしまいましたがぶっつけ本番で神戸の会場でこれが発覚していたらと思うと今でも肝が冷える思いですが、逆にこの耐久性お試しプロレスをすることの重要性をしかと感じ、それ以後リングを制作させてもらった際はそのようにさせてもらっています。

それでもやってくれました。練習生時代の清水選手のエキシビション
どんなリングでも魅せてくれるさすがプロです

自分のつくったリングで良く知る選手たちが試合をしている光景

お試しプロレス翌日すぐにワイヤーロープ屋さんに補修を依頼して、すぐに当初の正寸通りのロープが出来上がったんですが本番まで合わせるタイミングがなかったので結局3月21日神戸のリングソウルさんの興行でぶっつけ本番となりました。

当然神戸まで見に行ったのですがもう緊張感が半端なかったです。
そして見事にジャストフィットしましたと報告を受け、会場に入り完成されたリングを見た時は何とも言えない気持ちになりました。
自分たちが作ったリングでよく知るプロレスラーが実際試合をしているというその光景は他の誰にも味わえないものだよなと思いながら高揚しまくりました。

自分が作ったリングを大勢のお客さんが取り囲む、、感動の瞬間でした
ロープの張りもヨシ!
あのヤッシー選手が!クボブラが!金本選手が!自分の作ったリングで試合してる、、

敢えて製作過程を晒していくスタイル!

その後も何件かリングの製作をさせていただいておりますが、その度に木材の幅が合わなかったりスプリングの具合がよくなかったりという事案がお試しプロレスで発覚する事も多く、同じように作っても少しの違いで全然合わなくなるまさにリングは繊細な生き物で簡単なようで難しい製作物だなと作るたびにその思いが強くなりました。

でもその課題などを全て含めた上で自分たちが作りやすく組み立てやすい設計が固まってきたので今では伊藤製罐工業オリジナル型のリングを提案できることろまできております。

大きさなどが違うだけで同じ仕組みで出せるようになりました
何十回もすり合わせて仕上げた大切な手作り図面

ちなみに製作過程もあまり隠さずSNSでアップしてますが本来はこういうのって機密性もあってアップ出来ないとこも多いとは思うんですが、やはりプロレスはエンターテイメント性も大切なのでなかなか見られないこの製作過程もみてもらって楽しんでもらえればなと思ってこのスタイルをしています。
ぶっちゃけ鉄工所なら真似ようと思えば出来るとは思いますが、ここまで念入りにそしてなんといっても「プロレス愛を込めて製作出来るところ」は他には絶対にいないと思うのでむしろやれるもんならやってみな!の精神です(笑)

このスタイルのおかげで元々は面識のない神戸のリングソウルさんや川崎のワールド女子プロレスディアナさん、浜松をプロレスで元気にする会様にも見つけていただき製作をさせていただく事になったのでブランディング的も効果もありといえますかね!?

リングソウル様のリング製作時のお試しプロレスの様子
リングソウル様への納品時の様子
ワールド女子プロレスディアナ様への納品時の様子

まあ単純に楽しければそれでいいと思ってやってるだけなのでそこまで考えてはやってはないですけどね実際は(笑)


最後に、、リング作りへの考え方

昨年大規模異業種交流会のメッセナゴヤというイベントのブースにまでリングを置いたり、今年は自社で水泳華麗プロレスというイベントまで開催するというところまで行き着いてしまうのですがこの話についてはまたそれぞれ別途で書きたいと思います(笑)

さて、、ここまで書いておいてなんですが今でも希望者なら誰にでも製作をするっということはありません。仕事をする上で一番大事なのは信頼関係。それをなくして仕事はできません。これはリング作りじゃなくてもですが。

最初の方にも書きましたがリングは「命にかかわる製品である事」が大前提で気軽には作れないという気持ちは今でも変わってません。

それを御理解していただいた上でそれでもうちにリングを制作して欲しいという方はそんなワタクシを是非口説いてみてください!
よろしくお願いいたします。


さて気づいたら4800文字も書いてます。長々とした駄文によくぞお付き合いいただきましてありがとうございました!


【フルで製作したリングを納品した団体】
ワールド女子プロレスディアナ様
リングソウル様
浜松をプロレスで元気にする会様
前野武士様
【半分以上の部品を製作したリングを納品した団体】
柳ケ瀬プロレス様
【大規模補修をしたリングを納品した団体】
はるさんの所有するリングA
DEP様
【なんらかの補修をしたリングを納品した団体】
スポルティーバエンターテイメント様
東海プロレス様
チームでら様
柳ケ瀬プロレス様
はるさんの所有するリングB
【チャンピオンベルトを制作した団体】
プロレスリングヒートアップ様(大野精工様と共作)
【入場ゲートを制作した団体】
スポルティーバエンターテイメント様
【武器を制作した団体】
プロレスリングフリーダムズ様

【なんらかの協賛をさせていただいた団体】
スポルティーバエンターテイメント様
柳ケ瀬プロレス様
ワールド女子プロレスディアナ様
チームでら様
プロレスリングフリーダムズ様
プロレスリングヒートアップ様
シバヤマンモス興行様
名古屋ドリームガールズ様








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