コンペで「なんか違う」デザインしちゃった話

「なんか思ってたのと違う」

私はデザインを始めて、おそらくはじめて顕著にこの感情を抱いたのが今年1月19日。締切12分前にギリギリ滑り込み参加したデザインコンペの翌日のことである。

デザインコンペに参加するまでの自信過多な私

私がwebデザインを学んでいるデイトラでは、デザインコンテストやデザインコンペがちょくちょく開催される。せっかくなので参加してみるか、と初めて参加した第5回コンテストでは美容室のスマホ版サイトがお題となり、締切5日前に思い立って制作し始めたものを提出すると予想外にいろんな方から反応をいただけた。
さらに驚くべきことに、たくさんの優秀なデイトラ生の作品が並ぶ中、コンテスト優秀賞(3名のみ選出される)として私の作品が選ばれたのだ。

この結果は、すぐ調子に乗るタイプの私には十分すぎるぐらい「調子に乗りやすいし、なんなら乗ってもだれも咎めない」機会だった。
どれぐらい調子に乗ったかというと、固定ツイートをコンテスト作品のツイートにし、そこから半年近く経った現在になってもまだ変えていない。ついでに、ツイッターでデザイナー募集の告知を誰かがしていればすかさずDMで「コンテストで優秀賞をとっていまして、、固定ツイートも見てくださいね」などと送りつけたりもしていた。

とにかく印籠のように「優秀賞」の文字を掲げていたのである。

2022年1月4日 コンペ開催が発表される

年も明けて早々、今年1月4日にデイトラ運営からデザインコンペの開催が発表された。しかもクライアントはCLASという企業で、社長が初代バチェラーの久保さんという方だった。
私はもともと、バチェラーの新シーズンが始まる前は「あと〇日でバチェラーだね」と夫がうんざりするぐらい家でも告知しているレベルのバチェラー狂である。
そんな私に今回のコンペは大変魅力的に映り、「もし採用されたら久保さんに会えたりするのかしら」などとあらぬ妄想までしていた。

すぐに参加を決めた。

そして、私は思ってしまったのである。

「次こそは絶対に優勝したい」

ものすごい熱量で制作をはじめる

前回コンテストに参加した際も、もちろんそれなりに気合いを入れて取り組んだのだが、今回は熱量が違う。なんせ優勝を狙っているのだ。
過去のコンテストやコンペ優勝作品をじっくり調査し、どんなデザインが選ばれたのか、前回の自分とは何が違うのかを考えた。

デイトラ生はものすごく勉強熱心な方が多く、コンテストを重ねるごとに全体のクオリティがどんどん上がっていっている。普通のデザインでは到底太刀打ちできないと思った。とにかく「作りこむ」ということが重要だ。

これまでコンセプト設計やペルソナ設定はしたことがあったが、最近ではカスタマージャーニーやお題にはないデザイン(スマホ版やバナーイメージ等)までセットにして提出している作品も複数あり、このレベルでないと勝てないと判断した。

猛烈な勢いでこのあたりを考え抜いていった。

とにかく「作りこむ」

何度も何度も過去の優秀作品や応募要項、参考サイトを見てデザインを考案した。

何度も言うが、普通のデザインではいけない。背景にも何かテクスチャや要素を重ねて、とにかく作りこんだデザインにしなければならない。
途中で心折れそうになる時も「ここで本気にならなければいつなるんだ」と暑苦しく己を鼓舞した。

ひたすらやり抜いた。仕事がある日も暇を見てはノートにデザイン案を描き、テキストを考え、夢に何度もコンペが出てきた。

そして提出。やり切った・・・はずだった

迎えた締め切り当日。この日も、「やっぱりあそこのデザインはこうしよう」と最後までもがき苦しんだ。
23時48分。あと少しで締め切りというギリギリで提出した。

「やり切った・・・」そう思った。

連日の寝不足がたたってその日は提出の余韻に浸る間もなく就寝。
そして翌朝、ツイッターにあがっていたデイトラ猛者たちの作品を見たのである。

そして、思った。

「なんか違う」

ひときわ浮いていた私のデザイン

デイトラのコンペやコンテストは、ツイッターに完成画像とともにタグ付けをすることで提出となるので、タグをたどれば他の方の作品が見れるようになっている。

締め切り翌日に作品徘徊を始めた私の最初の心持ちは、余裕だった。
『前に参加したコンテストでは優秀賞だったのだ。今回は優勝だ。それぐらいの気持ちで打ち込んだし、優勝しかない。

しかし、しばらく見ていくうちに、なんだか私のデザインは浮いて見えた。
この違和感は何だろう。でも、とにかく「なんか違う」感じがした。
まるで私一人だけ、まったく違うコンペに参加しているようだった。

「これは――――優勝できない」
漠然とそう確信した。

「なんか違う」の正体とは

優勝できないことがわかってくるともうコンペ関連のツイートを見るのもつらく、あんなに頑張ったのに何でこんなことになってしまったのかと絶望的な気持ちが心を支配した。
私が感じた「なんか違う」とは何なのか、なんで私のデザインだけ浮いて見えるのか。

今回のクライアントであるCLASにはもともと素敵な公式サイトがある。今回のコンペはそのLP制作で、クライアント(もとい久保さん)からは「元のサイトのテイストで」と指定があった。同じ会社のLPなので当然である。

他の方はこれに合わせて、元サイトのテイストを保ってLPを制作していた。
一方、私のデザインはどうだろう。
元サイトを見てから自分のデザインを改めて見てみると、まるで別の会社のページだった。CLASのサイトはスタイリッシュな涼やかな印象のものだったのに対し、私のはどちらかというとカリモクとかそういう「木の温かみ」みたいなサイトに近しいものになっていた。

なんでだろう、あんなに頑張ってペルソナ設定やカスタマージャーニーやコンセプトまで考えたのに・・どこでこんなに間違っちゃったんだ・・

再び闇に落ちかけたが、じっくり自分の行動を振り返ってみると明確な誤りが見つかった。

「過去の優勝作品=勝てるデザイン」として意識しすぎた

まず大前提として、私はとにかく勝ちたかった。優勝しか見えていなかった。
ここまでは決して悪いことではないし、コンペのように順位を決めるものはそういう気持ちで参加して全く間違いではない。むしろ優勝を狙うのは当たり前だとも思う。
ところが、私は今回のコンペを優勝するにあたり、まず何に最も時間を割いたかと言うと「過去のコンペやコンテストの優勝作品をとにかく調べる」ということだった。
なんならデザインしている間もずっと優勝作品を隣に並べていたぐらい「これが勝てるデザインなんだ」と強く意識していた。

これがすべての間違いのもとである。

ペルソナ設定やカスタマージャーニー、コンセプト設計も、よくよく思い返してみると全く身が入っていなかった。
ものすごく真剣に考えてはいたが、もっとも重要な「今回のLPの本当の目的を達成するには」についてはまったく考えられていなかった。つまり、見掛け倒しで作っていたのである。
ここまでいろいろ考えた感じにしとけば良いだろう、とつまるところそんな気持ちだった。(と、今冷静に振り返ってみるとわかる)

デザインに関しても同じである。
優勝作品はここで背景透過しているな・・ここに要素を重ねてるな・・画像のサイズはこれぐらいがベストか・・等々、小手先のデザイン要素だけをつまみ食いして採用していた。

「ここまでやってるんだから優勝でしょ」「こんなデザインがお好みでっしゃろ」みたいな傲慢な考えは絶対にバレる

クライアントやペルソナや元サイトとの整合性とかはすべて置いてけぼりで、私は自分の「勝ちたい」「とにかく優勝したい」という気持ちだけで突き進んでいた。もっと言えば、『初案件が久保さんのサイトだったらすごすぎる』『友達にどうやって自慢しようかな』まで考えていた。とんだおめでたピエロである。

そんなことをする前にやるべきことはたくさんあったのだ。

本当は優勝作品ではなく、元サイトのスクリーンショットでも並べておくべきだったし、今回のデザインの目的から真摯に素直に向き合うべきだった。

思い返してみれば、私がこれまでデザインで褒めていただいたときは、とにかく結果とか「自分はデザイナーとしてこうなりたい」みたいな考えはすべて無視して、相手のことを考え抜いたデザインを作れたときだった。

「好きかどうかはわからないけど、あなたのことを考えるとこれしか思いつきませんでした」みたいなとき。そういうときに褒めていただくことが多かったのだ。

前回のコンテストではそれができていて、だからデザインをしているときもどんどん手が動いて楽しかった。
今回はいろんな煩悩がうずまいて苦しく、正直あまり楽しいと思えなかった。
ものすごく頑張ったけど、努力の方向性を完全に間違ってしまっていたのである。

真摯に素直に相手と向き合うしかない

コンペとしてはとても反省点が多く、なんなら「努力したのに絶望する」というかなり最悪に近い現実が待っていたわけだが、本気で努力はしたのでその分得られたものも多かった。以下にその3点を記し、この記事のまとめとしたい。

1ー真摯に素直に相手と向き合うこと

相手と素直に向き合って相手のことを考え抜くこと。自分の勝ちたい、かっこいいと思われたいみたいなそういう色々はひとまず置いておく。これはデザインに限らずすべてにおいて言えることである。
想いの量は絶対に相手に伝わる。そしてたいがい、強い想いで届けたものは相手も好意的に受け取ってくれる。

2ー小手先のテクニックに頼らず、コンセプトにつねに立ち返る

デザインをしているとどうしても自分の好みややりたい形に寄っていってしまうことがある。そういうときは一度冷静にコンセプトに立ち返ってみる。そうすると何をすべきかがわかってくる。そのためにコンセプトづくりは重要であり、コンセプトは上述した「真摯に向き合う」ことから始まる。決して先人の作品を見て小手先のテクニックをまねれば良いものではない。そのデザインにはそのデザインにかけた想いがある。

3ー良かったところは自分をほめて、自分で自分の自己肯定感を上げる

これが一番難しいのだが、どうしても他人の評価軸のなかにいると自己肯定感の上げ下げが他人にゆだねられてしまうので自分でコントロールできない。今回のコンペでは「人と比べて落ち込む」をまさに体験したが、良かったところはしっかりほめたい。
まず、しっかり努力したこと。方向性は違ったものの、最後までこだわって作り上げたこと(これまでデザインにおいて詰めきれていないことが多かったが、今回は最後まで詰めきった)。デザインをするときの心構えに気づけたこと。こうやって振り返ってnoteに文字として起こしたこと。
どれもコンペに参加していなかったらできなかったことで、自分の実になったことである。
だから今後はしっかりこの経験を糧にして、次に進んでいきたい。


憧れのデザイナーや真の意味でかっこいいデザインをつくれるようになりたい。
私はまだまだうまくなりたいし、きっとなれるはずだ。
だから今日も明日もデザインをつくる。うまくなくても一歩ずつ進める。

昨日までがんばっていた私がいつか報われるように、正しく努力していくのだ。

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