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俺はたまにひとりになりたい

3/6(金)
 くたくたになって退勤。死ぬ。死んだ、と思ったらぎりぎりのところで平日が終わって、なんとか生きていた。けど、そのうち死ぬ、と思う。僕のスペック以上のことを常に求められている気がする。そのプレッシャーがじりじり僕の精神を磨耗させていくのだ。しんど。無意識化でなんとか手だけ動かしてる感じ。これで本当に仕事になっているのか、毎度不思議になる。
 家に帰ってご飯を食べるつもりが、お腹が空いて仕方なかったので、東京駅の方へ。ラーメンストリートとかいうところまで来ておいて、並ぶのが嫌で毎度微妙な店に入ってしまうのをなんとかしたい。普通に探せば他にいい店いっぱいありそうなのに。そういう残念感が常に付き纏ってくるから、僕はあんまりラーメンストリートみたいなところは好きじゃない。ラーメン食べてると、海猫沢めろん先生がアイドルタイムいとぶろの記事にいいねしてくれたと通知きてちょっと元気出る。
 それから、這う様に阿佐ヶ谷まで戻る。TSUTAYAでDVDを返すと、なぜか延滞料金を取られる。よくよく思い返すと、先週の木曜日にDVDを借りたような覚えがあるけど、時間感覚がよくわからなくなっているのでぼったくられた可能性もある。怖い。
 それから、今週末に観る映画をピックする。先週は青山真治『EUREKA』を含めて5本選んでしまい、全部観るのが大変だったので、今回は本数は絞る方向にする。映画を観るのは楽しいけど、映画を観ているだけの休日に満足できるほど映画に対して愛はない。
 青山真治の『Helpless』『サッドヴァケイション』『こおろぎ』、北野武『3-4x10月』を借りる。自分の限りあるリソースに対して、何をピックすれば正解なのか?をパッケージだけで判断する緊張感に少しだけ若返る。高校時代を思い出すよ。当時高校生の僕の頭を悩ませる種はお金だった。今は時間だ。
 缶ハイボールを買って帰って、まず『Helpless』を観る。拳銃が出てくる映画は苦手で、特に倫理観がどこかおかしい人が拳銃を持つと、それがいつ撃たれるのかまったく読めなくてもうダメだ。怖い。拳銃はあまりにも強すぎて、撃たれたら間違いなく死んでしまう。撃たれたら間違いなく死んでしまう、という存在感と、いつこれが発動するのか、という緊迫感があわさってどきどきする。映画の内容自体は、『EUREKA』を観たあとだからか、まあまあといった感じだった。
 『EUREKA』と『Helpless』を観ると、秋彦というキャラクターの存在感が際立つ。秋彦は『EUREKA』でも『Helpless』でも、仲間に入れてほしそうに主人公たちに絡んでいって、でも結局輪の中には入れてもらえない。よそ者だから。物語の役割的にも、キャラクターの出身地という設定的にも、秋彦くんは外部の人間で、その秋彦くんがシリーズ通して出ていることには何か意味があるはず……と思った。もしかするとただ便利なキャラだから使ってるだけかもしれない。『サッドヴァケイション』を観ればもう少しわかるんだろうか。
 
3/7(土)
 缶ハイボールを一杯飲んだだけなのに、頭が痛い。二日酔いの症状なのか、風邪の症状なのかわからないのがつらい。なんか喉痛い気がする……。九時ごろに一回目覚めて、洗濯機だけ回すけど、洗濯終わるの待ってる間にまた寝てしまう。結局目覚めたのは十三時過ぎ。頭が痛いのは全然治らない。いよいよやばいかもしれない。間違いなく疲れによって免疫力は弱っているから、どんな病気をひいてしまっても不思議はない。
 とりあえず、ご飯を炊いていたので、生卵と明太子と納豆を混ぜて食べる。う、うま……!うまくて馬になった。ひひーん。最近完全に競馬熱が冷めてしまった。かわりに別のものにお熱ですけどねwつって!wいや、それほんまもんの風邪やから!w
 ……まずい。僕は完全に頭がおかしくなってしまった。
 頭がおかしくなってしまったので、軍パンが欲しくなって下北沢に行く。メルカリ見てたらイギリス海軍のパンツがいい感じだったのでちょっと気になってはいた。でも別にイギリス海軍のじゃなくてもいい。なんでもいい。たぶん下北沢なら3000円くらいあればなんか買えるだろ、と軽い気持ちで適当に古着屋見てみるが、なんか普通に1万円くらいするのしかなくてびびる。高くね?僕はヴィンテージものの価値とかはよくわからないので、何が適正価格なのかよく知らない。こんなもんなのかな?探せば他に安い店いっぱいあるのかもしれないけど、なんかめんどくなってやめる。渋谷に移動。なんか、軍パンよりもテック系のカーゴパンツの方が欲しい気がしてきたので、それらしい店を回る。わりとそれっぽいのが普通にゴロゴロ落ちててびびる。今日はびびってばっかだ。頭痛い。ガンガンする。死ぬ。と思う。結局何も買わず、人の多い渋谷駅に戻るのが嫌でキャットストリートを歩く。道中、ファッション系ユーチューバーのげんじくんが居たからサイン貰おうかと思ったらげんじくんによく似た人だった、ということがあった。明治神宮前駅から新宿、そこから丸ノ内線で南阿佐ヶ谷まで戻る。商店街にあるラーメン屋でつけ麺食べたら少しだけ体調回復した……気がしたけど、気のせいだった。いつのまにか出来てたセカンドストリートに寄ってみたらアディダスとゴーシャのナイロンジャケットあったので、悩んだけど買っておいた。
 家であったかい緑茶を飲みながら映画を観る。『こおろぎ』これは……へ、変態だ!話の筋は、わかるようでよくわからなくて、いい意味で嫌な感じ。ここでもやはり、猟銃を持った男と変な女と変な洞窟に行くシーンの緊迫感にどきどきする。森や山の中に何かがあるというのは、大好きな舞城作品的な想像力を思い起こすので、好き。海の底から何か変なのも引き上げるシーンは『熱海の捜査官』みたいで、脳内で勝手に椎名林檎が歌い始めるのでびびった。女の人がトラックに轢かれて、そのまま存在ごといないものとなる展開は好み。あと、観ていてこれでエンドロールかな?と思ったら平然と次の画面に切り替わって、というのが二十回くらいあった気がするのはわざとやってるのかな?
 『サッドヴァケイション』。これは傑作。最近なんでか集中的に映画を観ている僕だけど、これが一番面白いと思った。中上健次はちゃんとは読んでいないけど、『灰色のダイエットコカコーラ』は三十回くらい読んでしまったがために貴重な青春時代を文字通り灰色に塗りつぶしてしまった僕に、この映画はまじでブッ刺さった。少し前に、家族ではない、全く別の共同体への期待みたいなのが小説とか漫画とか映画とかに蔓延していた時期があると思っていて、エヴァQとかもわりとその文脈を含んでいると思っていて、しかし、当時時代遅れなセカイ系だった僕は、いやいやそれはさ、それはキミの甘えじゃないか?ということや。となっていた。『サッドヴァケイション』も、そういう、弱くて、家族すら頼れなくて、もうどうしようもなくなった人たちが集まって、間宮運送で働いている。そこには、自分を狙ってやってきたヤクザに臆することなくメンチ切ってくれる仲間や、膝枕して優しく頭を撫でてくれる宮崎あおいがいる。それが間宮運送なのだ。だけど、勢いで殺しちゃった弟だったり、10年以上も守り続けてきた女が実は腹違いの妹だったり、もう何でも受け入れてしまってやっぱこいつ強いわ。もうダメだ。強い、となる母親がいるのも、また間宮運送なのだ。絶望と希望は常に隣り合わせで、絶望と希望だけじゃなくて、もっと色々な事柄も、やっぱりそんな簡単に切り離すことができるようなシンプルなものではないのだという当たり前のことに頭をくらくらさせられる。心配になって熱を測ったら36.1℃で安心する。でも頭はガンガン痛んで、ちっとも楽にならない。やがてすべてを包み込むシャボン玉の雨が降り注ぐであろう、と誰かが云っていた。こういう強さもあるんだな、と工藤が云っていた。こういう描き方があるんだな、と僕は思った。では、たった一人の外部である、秋彦はどうか?ここでは秋彦はどうなっているのか?『サッドヴァケイション』において、秋彦はただ、頑張ってください、と、ある意味ではあまりにも無責任な言葉を投げかけることしかできない存在だった。僕は涙が止まらなかった。

3/8(日)
 九時ごろに起床。昨日の頭の痛みが嘘のように引いていた。ただ、相変わらず身体はだるい。気を張らないと、すぐに倒れ込んでしまいそうなほど。とりあえず、あとひとつ残った卵で目玉焼きを作って、インスタントのわかめスープと、明太子を乗せたご飯と冷凍のほうれん草と共に食す。
 残りの『3-4x10月』を観る。これが思わぬ傑作でびびる。トイレで始まって、トイレで終わるというのがまずすごくしびれる。ループしている?夢オチ?わからない。野球に例えるとわかるかもしれない。野球は俯瞰してみれば同じところをぐるぐる回っているように見える。ホームベースを発って、一塁、二塁、三塁とまわって、結局またホームベースに戻ってきてしまう。しかし、実際のところは1回、2回、3回とゲームは進んでいるし、塁に出るバッターだって違う。つまり、そういうことなのだ。そういうことなのか?意味わからん。意味わからんたとえ話するやつは全員死ね、と思っている。死んだ。また死んだよ、こいつ。きしょ。僕は野球は大嫌いだし野球をやっている人間は本当の意味で心底軽蔑しているけど、この映画だけは好きになってしまった。野球回のあるアニメは名作というジンクスは本当だったのか……。バットは振らなきゃ始まらないよ、というセリフはフリクリに繋がっているのかそれともどちらも出典元が同じなだけなのかどうかだけ誰か教えてほしかった。あと映画の感想の書き方とかみんなどうしているのかも誰か教えてほしかった。
 それから、『イド:インヴェイデッド』の9話と『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』10話と『へやキャン△』10話を観た。『イド:インヴェイデッド』は多分今期のアニメのなかで一番面白い。僕たちが愛したころの舞城王太郎のエッセンスをうまくアニメに落とし込めているのですごいと思う。舞城王太郎って誰?という人が観てもこのアニメ面白いかも……と思えるだけの出来になっていることがすごいのだ。『JOJO』の舞城ノベルスを読めばその凄さがわかると思う。『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』はまじで今期のアニメのなかで一番面白い。個人的にキャラクターがまどマギよりも魅力的に思えてしまうのは、マギレコはもともとソーシャルゲームでソーシャルゲームとはキャラクターがお金になるビジネスで僕は典型的なきしょいオタクだからなのだろうか?みかづき荘にいる人達を観ているとすごくどきどきする。ストーリーも、街に出没する噂の解明と、その裏にいる黒の組織との対決という、作ろうと思えば無限に話を作れるフォーマットを持っていて、だけど油断することなくどのエピソードもどきどきするくらい面白いので天才だ……と思うしかない。名探偵コナンが好きな人は全員観たほうがいい。『へやキャン△』は間違いなく今期のアニメのなかで一番面白い。3分くらいしか尺がないのに、なぜか観終わるたびに、僕が生まれ育った土地の閑散としてシャッターの降りた商店街の風景や、自分の部屋で畳の屑にまみれながら本を読んでいた体験や、家族でイオンに行った帰りの車内の気だるいあの感じを呼び起こすのだ。本当に意味がわからない。なぜこんなことが起こるのか。奇跡としかいいようがない。すごすぎる。
 それから、『プリチャン』の最新話と『プリキュア』の最新話も観た。『プリキュア』は正直飽きてきたけど、青い娘がかわいいので青い娘が死ぬまでは観続ける気がする。『プリチャン』は物語のクライマックスであるジュエルコレクションが、一年を通して各キャラクターがやってきたことの確認作業でしかないため退屈。プリティーシリーズは葛藤→ライブ→解決という一連のプロセスこそが一番の魅力でありドラマの核だと思っているので、すでにその葛藤を乗り越えた段階のキャラクターたちがライブをやっても正直あんまりおもしろくない。それでも今週はアンジュさんが不死鳥になったり虹ノ咲さんと桃山みらいさんがイチャイチャしてたりしてギリギリ楽しめた。来週は黒だいあちゃんが怒る話らしいのでどきどきする。もっとみんな八つ当たりであることを自覚したうえできちんと怒るべきだと思う。
 他に競馬をしたり文章を書いたりドーナツを食べたりしていたらあっという間に夜になってしまったので、忘れないうちにDVDを返しにTSUTAYAへ。その後ブックオフに行くが、大したものはなかった。書店でいとうせいこう『ノーライフキング』、古本屋で青山真治『われ映画を発見せり』を買う。居酒屋で餃子を食べていたら昨日買ったゴーシャのナイロンジャケットに思いっきり汁をこぼしてしまって泣いた。家に返って洗濯したり、洗剤を染み込ませたタオルででポンポン叩いても全然落ちないのでクリーニングに出してみるしかないかもしれない。わーん(泣)

いとうくんのお洋服代になります。