最初の住居

私の記憶に残っている最初の住まいは公民館の間借りだった。
子供だった私の記憶ではおそらく八畳一間に三畳程の台所が付いた公民館の一角だったと思う。
掘り炬燵が有り裸電球が吊り下がっていた。
何歳か分からないが掘り炬燵に布団を押し込んだ所為で小火騒ぎになった事があった。
夏は部屋一杯に蚊帳を吊り下げ、ハエ取り紙が吊り下がっていたのを覚えている。
父親の道楽か、蓄音器とラジオが置いてあった気がする。
台所も水道はまだ無く汲み上げポンプで水を汲み上げ、流し台の下に大きな氷を入れ冷蔵庫代わりに使っていた。
間借りしていた並びに客間が二部屋あり、隣には七輪が置いてあり、座布団が積み上がっていた。
ブリキのオモチャで遊んだり、飛行機の模型を作っていた記憶がある。
奥の部屋はやや広めであまり記憶がないのでそこは使わないようにしていたのだと思う。
階段を上がると二階は大広間になっており会議や結婚式などを開いていたのだと思う。
友達と駆け回ったり、黒板に絵を描いたり、外を眺めたり、空いている時は遊び場にしていたのを覚えている。
公民館の道路側には晩鐘が付いておりよく登っていたのも覚えている。
便所ももちろん汲み上げ式で一度落ちてしばらく臭いが取れなかったと言う話も聞いた。
いつ頃か、トタン張りの風呂場が出来た記憶がある。
公民館の玄関前は最初の頃空き地で、父親が初めてバイクを買った時座らせてもらった事も覚えている。
冬には玄関前に雪の坂を作ってもらいスキーをやった事もあった。
自然に囲まれ楽しい子供時代を過ごしたのだと思う。
父と母が結婚し、二人で生活して行くための礎を作っていたのだろう。
今では信じられ程貧乏だったのだと思う。
父親の転勤で引っ越すまでの7年半を過ごす事になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?