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壱宍 (若槻きいろ)
2019年11月30日 13:25
等価な関係を求めた僕らは、深夜の海底へ落ちてゆくのを約束した。似通った指先も、爪の形さえ、ただの容れ物で、この世を認識する殻でしか無かった。冷たい水が身体に染み込む。手のひらのなけなしの熱も、境が溶けて一つになる。『いきたいだけなのにね』淡く彼女は笑って散った。泡が花びらみたいにほどけて上に向かう。結局残されたのは僕だけだった。透過した月光の道筋が、彼女をそらへ導けばいい