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ゲーマー歴34年のダンジョン紀行 #03『名ダンジョンから学ぶ』


▼B9F前:ローディング。前回のセーブ箇所より

 アナログゲームマガジンも本格始動して三か月目。三ヶ月分の記事が公開され、当マガジンの特色も色濃くなって参りました。よろしければ、5月期・6月期の有料記事の感想まとめを個人的にさせてもらいましたので、検討材料として頂けたら幸いです。

 本マガジンは月500円の有料マガジンですが、noteの仕組みで初月は無料で読めるそうです。アナログゲームに熱い14人のnoteを一気に読めます。是非お試しください。

 さて、私の記事はゲームのジャンルを超えて『ダンジョン』について書かせてもらっています。マガジンの中でも異色のコラムとして、楽しんでもらいたいと思います。

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▼B9F:『ダンジョン』の良し悪しとは何だ?

 #01ではダンジョンの系譜(縦軸)を歴史から、#02ではダンジョンの概念(横軸)を作品を見比べて語らせてもらいました。今回はこの二つの軸を用いて『名ダンジョン』(迷ダンジョン?)と呼ばれるダンジョンを見ていきたいと思います。

 #01、#02で得た知見を通して『何がダンジョンの良さとして語られたのか』、また『我々がダンジョンを見た時、よりダンジョンらしさを感じるものとは何か』が見えてきたならば最良だと思います。
 前半ではゲームブック『火吹山の魔法使い』を取り上げ、後半では『ゼルダの伝説 時のオカリナ』から『水の神殿』を取り上げます。

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▼B10F:ゲームブック『火吹山の魔法使い』(1982年)のダンジョンとは?

 先に取り上げる『火吹山の魔法使い』は、『ゲームブック』と呼ばれる手法を取られたゲーム作品となります。D&D以降の時代、RPGをデジタル化するアプローチが生まれた一方、もう一方のアプローチとして、RPGを書籍化するアプローチとして生まれた作品と言えます。
 『ゲームブック』は書籍ですが、順番に文章を読むのではありません。文章が短く区切られており、数字が振られています。短く切られた文章には、都度選択肢を選ぶよう提示され、その後に数字が書かれています。その選択肢によって『右へ行くなら13番へ、左に行くなら141番へ行け』などと数字が末に付記され、次読むべき文章を指示されるのが特徴の書籍です。
 頭から最後まで順番に本を読むのとは違い、指示された番号を追って、行ったり来たりしながら文面を紡ぐ。そうすることで、読者自身の選択によって物語が紡がれます

 ゲームブックに不慣れな段階では苦い思い出もあります。特に、初めは次の数字を探す間、物語が途切れることで物語が頭の中に入ってこず、世界を想像するのに難しさを感じる物です。『これなら普通に物語を読んだ方が良い』と思ったこともありました。
 しかしながらゲームブックは、その”ページや同じ番号を何度も行ったり来たりする時間”自体に意味がある、私はそう思いました。繰り返し移動することで、通った道、通らなかった道が経験として頭に残っていくのです。

 特に『火吹山の魔法使い』は、ゲームブックとして数字を追うだけに収まりません。RPGの再現として、プレイヤー自身に能力値を別紙に用意し、冒険の途中ではサイコロを振る場面が出てきます。
 そして、後半のマッピングが重要になってきます。例えば、『前方の通路を進むなら100番、右手の通路を進むなら200番、左手の通路を進むなら300番、後方の通路を進むなら400番へ行け』など複雑な迷宮を進む場面が表れます。簡単な二択を進めていた最初のページが嘘のように複雑になり、手元の紙を裏返し、思わず番号をメモに取り始めたくなります。そうすることで、繰り返し出てくる数字の繋がりが見えてきて、だんだんと火吹山の全貌が見えてきます。気付けば、手元には地図が書きあがっていることでしょう。――実際にプレイされた方なら共感頂けるはずです。

 『道中に現れる扉や部屋などに対応する番号を振りながら、紙の上に冒険している洞窟の中が実際に描かれる』
 この感覚は、デジタルのゲームでは、ウィザードリィや世界樹シリーズの『マッピング』に脈々と継承されている楽しさと見受けます。自分の手で描いた地図が、自分の足で実際に赴き、歩いたかのように眼前に広がる感覚。ダンジョン探索においてプレイヤーが感じる臨場感を演出するのに一役を買っています。

 もう一点、デジタルと比べ楽しさに差異を感じたのは『行ったり来たりするのが自在である』ことでした。
 デジタルのゲームでは、通路の端から端に行き、罠に掛かればその都度リソースを消費し、ゲームオーバーになればセーブした地点まで戻る。つまり、やり直さなければなりません。しかしながら、ゲームブックは一度通ってしまえば、自身の頭の中で過去も未来も飛ばして、『やったことにして行き来するのが自由』です。改めて、経験として頭に残っていく感覚こそ、ゲームブックならではだと私は感じました。
(※現在のデジタルゲームも豊富なスキップ機能が付けられていることが多い印象です。しかしながら、ゲームブックに勝るスキップはないことでしょう)

 さて総括として、火吹山の魔法使いを、改めて前回までに挙げた『ダンジョン』の視座から見てみます。

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