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ジャニー喜多川氏性加害問題 「パラフィリア」 英BBCが喜多川氏告発に踏み切った理由 イギリスBBC人気司会者の性加害を黙認

 ジャニーズ事務所創業者で元社長のジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害で、事務所は7日、東京都内で記者会見を開き、社長を務めていた藤島ジュリー景子氏が、喜多川氏による性加害を事実と認め、「心からお詫び申し上げます」と謝罪した。

 藤島氏は5日付で社長を引責辞任。今後は代表取締役にとどまり、被害者への補償に当たる。後任の社長には、東山紀之氏(56)が就く。

 会見へは、藤島ジュリー景子氏と新社長となる東山紀之と顧問弁護士の木目田裕氏と、ジャニーズJr.のプロデュースを手掛ける「株式会社ジャニーズアイランド」社長の井ノ原快彦(47)が同席。

 この問題で、事務所が記者会見を開くのは初めて。

 「ジャニーズ事務所」という社名は現時点では維持し、10月1日に会社組織の新体制を発表する。新しい社長となる東山氏は、

「今後の人生を懸けて取り組む」

(1)

とし、年内で芸能活動を引退するとした。東山氏は、喜多川氏とその姉の藤島メリー泰子氏(2021年死去)について、

「絶対的な存在」

(2)

とし、

「(事務所内の)風通しが悪かった」

(3)

と事務所の体質を語る。

 一方、藤島前社長は後任の社長については、外部からの起用を検討したうえで、

「タレントの気持ちが分かる人の方は溝をつくらないと思った」

(4)

と説明する。

 東山氏は、自身は被害を受けたことがないとしつつも、

「うわさは聞いていたが、直接被害を相談されたことはなかった。自ら行動はできなかった」

(5)

と述べる。

 事務所は13日、被害者の救済について、元裁判官の弁護士3人による委員会を設置し、補償金額の判断について一任するとしてうえで、被害の時期などを理由に補償を拒むことはしないなどとする被害の補償策や、再発防止の取り組みを発表。

 さらに、今後1年間は所属タレントの出演料はすべてタレントに支払い、事務所としての報酬は受け取らないとした。

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広告起用 企業の対応分かれる


 問題を受け、大手企業の間ではジャニーズ事務所の所属タレントの広告への起用を見直す動きも広がる。他方、今回の問題はタレント自身の不祥事とは異なるとして悩む企業も多く、対応は分かれた。

ジャニーズ事務所所属タレントの起用をめぐる主な企業の対応(6)

・起用せず

アサヒグループHD  岡田准一
                             生田斗真

キリンHD     目黒蓮
        重岡大毅

東京海上日動火災保険 相葉雅紀

・検討中・未定

明治   相葉雅紀

コーセー 目黒蓮

・当面継続

花王  Aぇ!group

不二家 Snow Man

住友金属鉱山 生田斗真

このうち、サントリーホールディングス(HD)は11日、事務所に対し、被害者の救済策や再発防止策を説明するよう、書面で申し入れた。サントリーは、

「納得いく説明があるまでは、新たな契約を結ばない」

(7)

とする。

 東京海上日動火災保険は、広告出演などに関する契約を更新しないことを決めた。今年12月の期限を待たずに契約を解除することも検討。同社は、

「いかなる形でのハラスメントも容認できない」

(8)

とする。

 日産自動車も、当面は販促物で新たに起用しない。また、ジャニーズの調査報告書と記者会見の内容が日産の「人権尊重に関する基本方針」に反しており「非常に遺憾だ」とコメントした(9)。

 とはいえ、海外のエンターテインメント業界では、人気タレントとCMタレントとのすみわけがはっきりとし、万が一のリスクを備え、人気タレントはよほどのことがないかぎり大手企業のCMには出演しない。

 また、そもそもジャニー喜多川氏の性加害問題など、”もう半世紀も前”からあったと分かりきっていた話。そのことを知ったうえで事務所のタレントを広告に起用する企業もある意味では”同罪”であり、日本企業の”人権軽視”の姿勢が目に余る。

パラフィリア


 今回の問題をめぐっては、「パラフィリア」という言葉も取り上げられた。性加害問題について行われた「再発防止特別チーム」の会見時に配布された「調査報告書」では、「本事案の原因」として、以下の4点を挙げている。

1 . ジャニー氏の性嗜好異常
2 . メリー氏による放置と隠蔽
3 . ジャニーズ事務所の不作為 
4 . 被害の潜在化を招いた関係性における権力構造 

 一方、上記の1番目には、喜多川氏の「性嗜好異常」を挙げているのだが、「報告書」にはこうある。

〈(喜多川氏が)20歳頃から80歳代半ばまでの間、性加害が間断なく頻繁かつ常習的に繰り返された事実は、ジャニー氏に顕著な性嗜好異常(パラフィリア)が存在していたことを強く裏付けるものである〉

〈もっぱら未熟な思春期少年を性愛対象としたジャニー氏の性的関心と同意なき性行為の強要が長年続いたことは、被害者の年齢層(中心は13~15歳)がいわゆる小児性愛(13歳以下)に比べ定義上は若干高くなるものの、まさに性嗜好異常の一型とみなすことができるものである〉

 この「性嗜好異常(パラフィリア)」とは、アメリカ精神医学会が作成した診断基準の「DSM-3」で採択された用語で、パラ(=偏った)+フィリア(=愛好の病)という意味。

 「異常性欲」や「性倒錯」に代わって使用されることが多い言葉だ。

 その特徴は、性的興奮を招く強烈な空想、強い性的衝動、小児もしくは同意しない人を相手とする性的行動の反復が少なくとも6カ月以上継続することなどであり、露出症やフェティシズム、性的サディズムや性的マゾヒズム、窃視症や小児性愛(ペドフィリア)など多岐にわたる(10)。

 喜多川氏の場合、そのうちの典型的な“小児性愛”ということになる。 そして、「報告書」では、その喜多川氏の行為について、姉のメリー喜多川氏が周囲に「病気だから」と言っていたことも明らかにされている。

英BBCが喜多川氏告発に踏み切った理由 イギリスBBC人気司会者の性加害を黙認


 喜多川氏の一連の性加害問題は、今年の3月イギリスの公共放送BBCが最初に報道、改めて、問題提起された形となった。

 一方、BBCがこの問題を報道した背景には、イギリス国内にてBBCと深いつながりをもつ人物が喜多川氏と同様の事件を犯し、しかしBBCがそれを把握していながら追及できなった深い反省がある。

 その人物の名前は故ジミー・サビル。イギリスでは知らぬ人がいない人物である。その墓石には、「慈善家、司会者、DJ・・・」などという輝かしい肩書が刻まれている。

 サビル氏は、BBCにおいて40年以上放送された長寿音楽番組や少年少女の願いをかなえる高視聴率番組で司会を務めていた。しかし、その裏では、未成年者への性的虐待や強姦を日常的に繰り返しており、その被害者は500人以上にのぼる。

 事件の全容は、ネットフリックスにて、

「ジミー・サビル:人気司会者の別の顔」

とのタイトルで配信されている。

「キリストとサンタクロースを掛け合わせた存在だった」

(11)

 このように語られたサビル氏は、奇抜なファッションと言動が注目を集め、芸能活動以外にも毎週、病院へと赴きボランティア活動に励み、巨額の寄付金集めも行った。

 また英王室や当時のサッチャー首相とも関係を築き、1990年にはナイトの爵位を受ける。

 そのサビル氏は2011年に死去。生前には逮捕・起訴されることはなかったが、BBCは2012年に独立委員会を設置する(12)。

 その報告書では、サビル氏は少年や少女を番組のセットに招待しては、楽屋で性的虐待に及ぶのが常套手段だったという。

 またBBC内の若手職員や中間管理職の中には、サビルの性的虐待行為について承知していた者もいたが、BBCが組織として承知していたという証拠は得られなかったとする(13)。


(1) 西日本新聞「ジャニー氏の性加害 謝罪」2023年9月8日付朝刊、1項

(2)西日本新聞、2023年9月8日

(3)西日本新聞、2023年9月8日

(4)西日本新聞、2023年9月8日

(5)西日本新聞、2023年9月8日

(6)読売新聞オンライン「ジャニーズタレントCM打ち切り、「被害に遭っていたら2度苦しめることになる」」2023年9月11日、https://www.yomiuri.co.jp/culture/tv/20230911-OYT1T50149/

(7)読売新聞オンライン、2023年9月11日

(8)読売新聞オンライン、2023年9月11日

(9)読売新聞オンライン、2023年9月11日

(10)日刊ゲンダイ「ジャニー喜多川氏「性加害」の原因と指摘 性嗜好異常(パラフィリア)とは…専門家が解説」2023年9月2日、https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geinox/328478

(11)佐々木健一「裏で未成年者への性的虐待や強姦を繰り返していた…BBCがジャニーズの性加害報道を報じた背景にある事件とは」文春オンライン、2023年7月23日、https://bunshun.jp/articles/-/64468

(12) BBC NEWS JAPAN「BBC元人気司会者による性的虐待、プロデューサーは「ひとりにするな」と」2016年2月29日、https://www.bbc.com/japanese/35686505

(13)BBC NEWS JAPAN、2016年2月29日

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