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90年代への憧れ

90年代が好きだ。

その時代に、とてつもなく憧れを抱いている。

あの時代が持つ、世界が終わるかもしれないという危機感とその時代の若者の雰囲気に引き付けられる。

1992年、尾崎豊が26歳という若さで夭折したこと。1993年、「ジュラシックパーク」の公開。1994年、九龍城塞が崩壊したこと。
1995年には阪神淡路大震災及び地下鉄サリン事件。雲仙普賢岳も噴火し、もうすぐこの世が終わる、と一部では本気で信じられていた時代である。
そして迎えた、世紀末。1999年。ノストラダムスの大予言を信じていた中高生はきっといるはずだ。
彼らはどのような思いで毎日を生きていたのか?
仄かな緊張感と、時代が持つ楽し気な雰囲気に誘われ、私はどうしても、90年代に目が無い。

携帯を持っている人なんて少なくて、待ち合わせは命がけ。

VHS、ポケベル、たまごっち、そんなような娯楽が本当に懐かしい。MDとかもね。

90年代は若者向けの娯楽が本当に発達したと思う。

おそらく「オタク」と呼ばれる人物像が形成されたのはこの時代。

「新世紀エヴァンゲリオン」「カウボーイビバップ」「耳をすませば」  セル画のアニメが大好きで、何度も何度も見直してしまう。

エヴァンゲリオンの衝撃はオタク関係なしに若者を飲み込み、「Air/まごころを君に」は、たくさんの人が見に行ったという。

ジャンプ黄金期。スラムダンクが全ページカラーだったなんて、今の出版業界から言えば考えられない。

音楽と言えば……
小沢健二「LIFE」
「LIFE」収録の「今夜はブギーバック」「僕らが旅に出る理由」は本当に私が大好きな曲だ。
1995年に発売されたシングル「強い気持ち・強い愛/それはちょっと」も本当に大好きだ。

今でいう「エモさ」を求める若者は渋谷に蔓延った。

気怠さ、古着、お香の匂い……世界はそれで制されたも同然だった。

女子高生、コギャルの間で流行したプリント倶楽部(いわばプリクラ)。


安室奈美恵を模す「アムラー」が街に闊歩するようになった。


渋谷の片隅から始まったインド映画ムーブメント。「ムドゥ 踊るマハラジャ」が大ヒット。

……とそんな風に出来事や音楽を羅列していって。

お気づきかもしれないが、

私はその時代を生きていない。

それでも、ふとしたとき、戻りたいと思ってしまう。1990年代に。

1980年生まれ、1995年に15歳。

そうだったら、どんなに良かったか。

夕暮れの渋谷をMDプレーヤーを片手に闊歩するのは、一体どんな気分なのだろう。

今とは違って「不便」な時代。

でも、少しだけ進歩したこの時代は、人間にとって一番幸せだったのかもしれないと、思う。

IT化やペーパーレス、なんでもオンライン上で物事を済ますようになってしまった。コロナ禍の影響で、その動きに拍車がかかったように思える。

これは、しょうがないことなのだと思っておきながら。

確かに今は便利で幸せだなとは思いつつ、

「不便」を楽しみ、

待ち合わせの相手に会えなかったり、家の電話に親が出たり、CDの貸し借り、レコーダー……

「あの子」に思いを伝えるべく、ヤキモキしていた時代が、

生まれているはずもないのに、「いいな」と思ってしまう。

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