ヒヤリハット21 牛黒、バイブレーターにしびれる。

こんなヒヤリハットのお話しを、解説とともにご紹介します。

今回は電動工具を使う作業での、あわや「感電」のヒヤリハットです。

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牛黒、バイブレーターにしびれる。

「牛黒さん、注意してくださいよ。」

猫井川たちが仕事を終えて、事務所に戻ってくると、羊井メェの声が聞こえてきました。

何事かと思って、中に入ると、羊井が牛黒ベコに怒っているところでした。
2人は建築作業を主に行うチームで、リーダーは羊井です。

どうやら今日の現場で、何かあったようでした。

「分かってる。分かってる。だから、そうガミガミ言うな。」

牛黒が、やれやれといった感じで答えていました。

「もう何回も同じことを繰り返しているじゃないですか。
 いい加減きちんとやりましょうよ。」

あまり反省が感じられない様子に、羊井はさらに声は大きくなりました。

牛黒は、羊井よりも年上です。
そんな理由もあるのかもしれませんが、牛黒は真剣に取り合っていない様子に感じられました。

「おいおい、どうした? 外まで声が聞こえているぞ。」

「鼠川さん。ちょっと聞いてくださいよ。
 今日の現場なんですけどね・・・」

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羊井のチームは、今日は建物基礎のコンクリート打設作業を行いました。

羊井が作業しながら全体を指揮です。
そして牛黒にバイブレーターを担当を指示しました。

「バイブレーターはどこかな?」

「まだ車じゃないですか?準備お願いします。
 あ、1個は修理に出すのですから、使っちゃダメですよ。」

「わかってるって。じゃあ、準備するか。」

車の中には、バイブレーターが2つありました。
1つは赤いビニルテープが貼られています。

「あれ、どっちが故障だったかな?
 うーん、まあテープしている方が使っいい物だろう。」

牛黒は、仕事は早いのですが、やり方は少々雑で、そのため度々生傷を作ったりもしていました。

バイブレーターの電源は、小型発電機でした。
しかし発電機の設置場所から、コンクリート打設場所までは距離がありました。そのため電工ドラムも一つ持ち出して使うことにしました。

ズルズルズルと、ケーブルを引き伸ばし、準備をしました。

「おーい、もう準備大丈夫だぞ!」

牛黒は型枠の側で、羊井に手を振りました。

「では、行きまーす。」

羊井はそれを確認すると、型枠の中にコンクリートを流し込み始めました。

ドボドボとコンクリートが入っていきます。

牛黒は、バイブレーターをコンクリートに差し込むと、スイッチを入れました。

ブブブと動き始めたところ、牛黒の手には痛みが走りました。

「いて!?何だ?」

痛みに驚いてスイッチを切ったのですが、痛みの原因が分かりませんでした。

「まあ、いいか。」

牛黒は気にせず、またスイッチを入れました。

ビリッ!

今度はさっきよりもはっきりとした痛みが走りました。

「あいて!!」

強い痛みに思わずバイブレーターを落としてしまいました。

「どうしたんですか?」

そんな様子に驚いた羊井も、牛黒に尋ねました。

「いや、分かんねえんだけど、ビリっと来た。」

「ビリっと来た?感電ですか?
 でも、この前使った時はそんなことなかったのに。
 ケーブルとか破れてないですよね。」

そう言って、牛黒が持つバイブレーターを見てみると、赤いテープが貼られていました。

「ああああ、これ修理に出すやつじゃないですか!」

そう言うと、すぐに電源を切らせました。

「牛黒さん、何でこっち使うんですか?
 赤いテープは修理に出すっていったじゃないですか。」

「ああ、そうか。悪い悪い。
 どっちだったか、忘れてしまってよ。」

「朝言ったことですよ。
 あのまま使ってたら感電してましたよ。」

「いや、ちょっとビリっと来ただけだから、大丈夫だって。」

「大丈夫じゃないですよ。ほんと、そういうのしっかりやりましょうよ。」

・・・という感じだったんですよ。

羊井が話し終えると、半ば呆れ気味に鼠川が言いました。

「お前は相変わらずだな。羊井が言うように、注意が足りんぞ。」

「自分では注意しているつもりなんですけどね。」

「はぁ、してるつもりではなくて、必ずするの。
 とはいえ、羊井もガミガミ言い過ぎじゃないか。
 牛黒は先輩なのだから、もうちょっと言い方も考えてだな。」

鼠川は、今度は羊井にも苦言を言いました。

「でも、鼠川さん。言いたくもなりますよ。
 何度も何度もだし。

 それに、今回はそれだけじゃないですよ。
 近くにいた新しく入った子に、ビリっと来るから持ってみろと触らせようとしたりするし。」

それを聞いた鼠川は、

「そりゃ、牛黒が悪い。」

と、しばらく説教をするのでした。

牛黒は、豪快で明るい人なのですが、一緒に仕事するのは少し大変かもと思う鼠川なのでした。

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ヒヤリハットの解説

今回は、猫井川とは違うチームの話です。

犬尾沢チームが土木などを中心とした仕事をしていますが、羊井チームは建築工事を中心に行っています。

今回主人公になった牛黒は、羊井チームのベテランです。
以前、頭をぶつけたという話で名前は出てきていましたが、今回のお話でもしっかりやらかしてくれていたようです。

さて、今回のヒヤリハットは感電です。

感電は、体に電気が走る事故です。
強い電気が心臓を通ると、命に関わります。

そのような危険性はありますが、生活や仕事で電気製品は欠かせません。

電気は、とても身近なものです。

身近ではありますが、普通に使っている分には、感電を気にすることはありません。それだけ安全対策が施されているからです。

しかし、どのような対策をされていても、感電を100%防げるわけではありません。
場合によっては、普段使っている機械が、命を脅かす凶器にもなります。

今回のケースでは、電動工具の故障が原因でした。漏電していたようです。
漏電防止のためには、二重絶縁構造の機械を使ったり、アースを取るなどで、感電対策を行います。

最も大事なことは、異常がある機械は使用しないことですが、牛黒は使ってしまいました。

感電被害の大きさは、体の状態によって変わります。
汗をかくなど体の表面が濡れていると、電流が流れやすくなり、被害も大きくなります。
今回は、牛黒がまだ汗をかいていなかったことで、痛い思いはしたものの、ヒヤリハットで収まったようです。

電気製品の感電は、事前の注意で防げます。
ケーブルの被覆が破れていないか、充電部が露出していないかなど、事前点検が必要です。

もちろん、機械の状態チェックは何よりも大事です。

今回のヒヤリハットのまとめ

ヒヤリハットの内容
バイブレーターのスイッチを入れたら、電気が走った。

対策
1.電動工具などの機械は、使用前に点検を行う。
2.異常がある機械は、修理するまで使用しない。
3.電動工具使用時は、必ずアースをとる。または二重絶縁構造の機械を選択して使用する。


私は労働安全コンサルタントとして、職場での労災防止についてのブログを書いております。
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清文社さんより、安全に関しての小冊子を出しております。



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