ヒヤリハット2 犬尾沢ガウ、鉄板に切られる!?

こんにちは。
私は労働安全コンサルタントという仕事をしております。
今日も無事にただいま というブログの中で、ヒヤリハットを題材とした、小話を書いております。
今回もブログで書いた内容に手を加えたものです。
テーマは、あわや「切断」です。

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犬尾沢ガウ、鉄板に切られる!?

ある夏の日。

(株)HHCでは、今日は現場の仕事がないので、会社倉庫の整理を行うことにしました。
倉庫内の棚には、工具や材料などが整理整頓されているような、されていないような、割りと雑多な状態になっています。

現場では職長、社内でも主任の犬尾沢ガウ(36歳)の指示の下、不用品処分や整理整頓を行っていきます。

「ここからここまでは、兎耳長さんにお願いします。
 保楠田さんは、猫井川と一緒に、こちらを整理していって下さい。

 私は、事務所で書類の整理をしてから、作業に加わります。

 一気に荷物を出してしまうと、ぶつけたり切ったりしますから、ますは段取りを考えてからやってください。
くれぐれもケガをしないように、気をつけて下さい。
 それでは、よろしくお願いします!」

犬尾沢の指示で、兎長耳ピョン(58歳)は工事用の工具をチェックして、棚に並べていきます。猫井川ニャン(27歳)と保楠田コン(46歳)は、様々な道具や資材、一部ゴミと思しきものが詰め込まれた棚を整理していくことになりました。

「それでは、猫井川やっていこうか!」
保楠田と猫井川は、ほこりと油が積もる棚に向かっていきました。

汗をかきかき、小一時間。

「保楠田さん、これはどうしましょうか?使います?」

猫井川は、50cm四方の薄い鉄板を持って、保楠田に聞きました。
「ん~、いらないかな。まあ後でまとめて捨てるから、とりあえずその缶の上にでも置いておいて。」
保楠田が指したのは、通路横にある高さが50センチほどある、オイル缶の上でした。
猫井川は、保楠田に言われたとおり、缶の上に鉄板を置いておきました。

倉庫内の通路は、床に白線が書かれています。
基本的には、通路の白線内には荷物を置きません。
しかし今日は大整理の日。
この時ばかりは、通路ギリギリまで荷物が山積みになっているのでした

猫井川が鉄板を置いたオイル缶も通路のすぐ側に置かれていました。そして鉄板の角が、通路にはみ出していたのでした。

まだまだ作業は続きます。

しばらくすると、犬尾沢が事務所から、帰ってきました。
「お疲れ様です。すごい荷物!通路が狭いな。」

犬尾沢は、通路の両サイドに積まれた荷物の間を、体を横にしたりしながら歩いてきました。
そして、オイル缶の横をすり抜けようとしたところ、

ザク

犬尾沢は自分の足元から、妙な音を鳴ったのに気づきました。
見てみると、作業服の右膝の部分が、ざっくり切れています。

幸い切れたのは作業服だけで、ケガはなさそうです。

どうして切れたのかと、周りを見てみると、通路脇の荷物の山から、鉄板の角が通路に突き出ています。
どうやらこれが引っ掛けたようです。

「これを置いたのは誰だ!」
怒る犬尾沢。

作業していた3人が、驚いて見てみると、鉄板を指さしている犬尾沢がいました。
猫井川は、すぐに自分が置いたものだと分かりました。

「お、俺ですけど、でも保楠田さんがそこに置いておけと・・・」
と言いながら、保楠田の方を振り返ると、なぜか保楠田はいません。

「猫井川!最初に気をつけろと言っただろうが!!!」

大吠えする犬尾沢に、猫井川はしゅんとしてしまいました。

その後は、4人で黙々と作業し、その日の内に倉庫の棚の整理整頓は無事終わりました。
作業で発生した被害は、犬尾沢の作業服と猫井川の涙目です。

事務所に帰り、猫井川は自分の机に向かうと、缶コーヒーが1本置かれていました。周りを見てみると、保楠田が意味ありげな表情をしています。

なるほど。どうやら、ごめんねということらしい。

猫井川は、ちょっと苦いコーヒーを飲み干したのでした。

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ヒヤリハットの解説

今回も猫井川は、犬尾沢に怒られてしまいました。
保楠田さんは、キツネですけど、とんだタヌキです。

それでは、ヒヤリハットとその対策をまとめていきたいと思います。

今回は倉庫内での整理作業時に「鉄板で作業服が切れてヒヤリ」ですね。

家の大掃除の時でも同じだと思いますが、必要なもの不要なものを整理するときに、とにかく一度全てを出してから、選別します。

必要な物は元に戻しますが、不要になったものは、ひとまず固めておき、ある程度の量になってきたら、まとめて持っていくのではないでしょうか。
棚から1つ取り出しては、捨てに行く。このような方法では、物が多い場合、効率が悪くなって仕方ありませんよね。

今回の話の中でも、ひとまず棚から荷物を取り出し、必要な物を棚に戻す。不要なものは、邪魔にならないように仮置きしておく方法をとっていました。

仕事で使う道具や材料ですので、荷物1つ1つは、それなりの大きさもあります。仮置くにしても、結構な量になるので、積めるものは積んだりもするわけです。

鉄板もそうして、オイル缶の上に置かれていたものでした。

工場などでは、通常白線などで作業スペースと通路スペースが区分けされているところが多いです。いやゆる安全通路というものです。
今回の倉庫も同じように通路スペースが区分けされていました。

この通路内には原則として、荷物を置かないようにルール付されているところが多いと思います。
通路に荷物があると、つまづいたりしますからね。
また荷物が通路にはみ出したりしていると、ぶつけたりするので、通路内は床だけでなく、その上部空間も何もないことが重要です。

今回は倉庫の整理中も通路には物を置かないように気を付けていました。
しかし鉄板の角がはみ出してしまっていたようです。
これに運悪く、犬尾沢が引っかかり、作業服が切れてしまったのです。

夏服の作業服は薄いです。しかし、作業服には違いないので、作りはそれなりにしっかりしています。
それをざっくり切るということは、鉄板はかなりの切れ味だったようですね。もし体に接触していたら、相当の怪我になっていたはずです。

実は、この事故は以前私の会社であったものです。
その時は、服だけというわけにいかず、7針も縫う怪我になってしまいました。無休災害でしたが。

通路からはみ出さないことも重要ですが、切断や刺さる可能性があるものは、仮置せず、持ち出すのも良いかもしれません。
また横に寝かせるのではなく、縦に置いておくだけでも、事故を防げたかもしれませんね。

今回のヒヤリハットのまとめ

ヒヤリハットの内容
「倉庫整理で、通路脇に鉄板を仮置きしてたら、側を通った人の作業服を切った。」

ヒヤリハットの対策
1.通路スペースにものは置かない、はみ出さない。
2.溜まった荷物は、こまめに搬出。
3.切断やぶつかる可能性があるものは、置く場所や置き方を考える。

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