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湖嶋いてら
2022年1月7日 15:58
「え」野木祐也は即座に振り返った。蹴り上げられたそれは、二、三度石ころだらけの地面を力なく打って、青空に甲高く鳴いた。地面の歪な円の中心で確かに先程まで祐也が右足で踏んでいたコーヒーの空き缶が、忽然とその姿を消している。「くっふふっ、ゆうやってば全然気づいてないんだもん」祐也は目の前に視線を戻した。鶴田真美の長い睫毛が、白い瞼に押し潰されている。「ふっ、おっかしい」瞼の際にうっすらと滲ん