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予備試験短答 実力別&科目別 直前対策法



はじめに

 試験1ヶ月前の段階で受験生ごとにそれぞれ実力が大きく違ったり、科目によって得意不得意があると思います。
 私も一度目の受験の時は、2週間前に戻ってきた短答模試の成績はどれも合格推定点から20点~30点届かないと状態から、本番では合格最低点よりも30点以上超える得点をできましたので、まだまだこの時期から追い込めば、今の段階で合格の見込みのない人も、合格の可能性は十分にあります。
 特に短答式試験は、答えさえあっていれば、点数が入るので、最後に詰め込めば詰め込むほど点数を伸ばせる可能性が高いので、あきらめずに残りの期間を勉強するのは非常に効果的です。
 実際に私が短答試験でやった具体的内容については以下の記事で紹介していますが、そのときよりもノウハウがついたので、この記事に書いてあるような方法で進めるのが良いのではないかと思い、この記事を書きました。


全科目共通の対策

直前期の共通方針

 自分のレベルに関係なく直前期に一番意識することは、なるべく短い周期で全科目全分野に目を通すことです。
 予備試験の短答の問題は、1問1問を見ればそれほど高度の知識が問われるわけではありませんが、科目数が7つもあり、一つ一つの分量も多いため、一番の敵は理解の深さではなく、全部の範囲を忘れず、カバーすることです。
 人間にはよほどの天才でない限り、忘却することからは逃げられないので、覚えたことのほとんどが2,3日で忘れてしまいやすいことを計算にいれる必要があります。
 そのため、なるべく短い周期で全科目全分野に目を通すことで、自分の潜在意識に全科目全分野を意識させることができ、少しでも忘れるのを防ぐことができる可能性が高まります。
 
 全科目全分野を100%にするための勉強するには大きくわけて2通りあります。
 
 1つ目は、1分野ずつ100%に仕上がりにして、それを全分野やることで、全部が100%になります。 短答パーフェクトをコツコツやっていくのがこの方法に近いです。
 この方法は、自分が直近にやった分野についてはかなり深い理解と知識を得られるというメリットがあります。 その反面最後の方になってくると、初めにやった分野を完全に忘れるというデメリットがあります。 そのため、この方法をずっとやっていると、いきなり試験日を迎えた場合は、やっていない分野や、記憶から遠ざかっている分野に対して得点するのが難しくなります。
 
 2つ目の方法は、全分野を薄くざっと最後までやることを繰り返すことです。 1周目の理解が2%だとしても、これを50回繰り返せば100%に近づけることができます。 年度別の過去問を回す方法がこの方法に近いです。
 この方法は、短い時間で全分野を1周できるため、全分野について満遍なく記憶を保ちやすいというメリットがあります。自分が1つ1つに理解が浅いため、特定の1問に対しての正解率がなかなか上がらないデメリットがあります。
 その反面、いきなり試験日を迎えても、どの分野に対しても均等に対応できるという面があります。

 
 予備試験のような、膨大な範囲の分野からの出題に対しては、直前期については、2つ目の方法の方が、いつ試験日を迎えても対応がしやすく、記憶の維持に最適なので、こちらの方法を薦めています。 
 
 なるべく短い周期で全科目全分野を目に通す方法は以下のような方法があります。

①年度別の過去問を法律科目7科目を制限時間内に解く
 合計でも3時間半しかかかりませんので、3時間半で全科目全分野を一通り意識することは可能です。
全部で95問ありますので、半分間違ったとしても50問程度なので、1問5分程度で復習するとして、振り返りに4時間程度かけることができます。
1日の勉強時間が4時間確保できる人なら、2日に1回のペースで、1年度分の過去問をしっかりやれます。

②全範囲がまとまった教材を決めた時間内に読む
 1科目あたり1時間程度で全分野を復習できるものを用意し、それを読むことで7時間あれば、1周できるので、1日の勉強時間が4時間確保できる人なら、2日に1回のペースで全部を網羅できます。
また、1科目あたり30分程度で全分野を復習できるものまで圧縮できると、試験当日に、各系統の試験前に一通りの復習をすることが可能になります。
 具体的には、合格セレクションのコアプラスの図表だけ見直したり、少し量は多いですが、択一六法や逐条テキストの図表を見直す方法や、薄いテキストを読み直すという方法があります。

予備過去問法律科目7科目で合計100点未満の場合

 この段階だと年度別の問題をやった場合に、自信を持って解けた問題が少なく、間違った箇所や、わからなかったことの復習に時間がかかると思います。
 そのため、残り1ヶ月で多くの年度を全部完璧にするのは難しい可能性が高いです。
 理想としては、1日目年度別を解く、2日目復習に時間を充てる、3日目にもう一度1日目に解いた問題を解いてみる。 という3日間で過去問1年分というサイクルで、5年分くらいまずは過去問を完璧にするというのが良いでしょう。
 復習時点でわからない問題の理解に時間かかる問題があるかもしれませんが、理解に時間がかかる問題は、再出題頻度も低いものも多いので、1問5分以上は復習に時間を充てないと決めておいた方が良いでしょう。
 そうしないと重要でない問題に時間をとられて、本来勉強すべき箇所が手薄になる可能性があります。
 どの5年分にするかは、改正に対応しており、かつ問題傾向の近い直近の5年分を優先するのが良いと思います。
 もし、この5年分が完璧に理解できたら、遡ってその範囲を1年ずつ増やしていくのが効果的です。 

予備過去問法律科目7科目で合計100点以上130点未満の場合

 この段階だと、ある程度のスピードで問題をこなせ、過去問に多く触れれば得点を伸ばせる可能性が高いので、1日目を過去問を解く日、2日目を間違ったり、わからない箇所の復習に充てる日にして、2日間で1年分というサイクルで、できれば予備の13年分の過去問をすべてやれるとベストです。
 しかし、年度ごとになるべく正確性を追求していった方が良いレベルなので、2日目の復習に時間がかかるなら、間違った問題や、わからない箇所が多い年度に関しては、3日目も復習に充てて、1年分を3日かかる日ができても良いと思います。
 その分、全部の年度は終わらないかもしれませんが、正確性の方が重視した方が良いので、できる年度までやるのが良いと思います。
 もし、予備試験の13年分全部の年度を7科目通年で解いたけど、130点をなかなか超えないという方でしたら、X(Twitter上)のDM(@libertadleven)から連絡いただければ、簡単なアドバイスをすることは可能です。

予備過去問法律科目7科目で合計130点以上180点未満の場合

 この段階は、合格圏内の点数ですが、過去問であり、見たことのある問題だからこの点数がとれている可能性が高いので、油断はできない状態です。
 この段階でもまだまだ過去問を解くことで点数を上げられる領域です。基本的には、130点未満の人と同じように、2日間で1年度分の過去問をやっていくという方法を採りつつも、後述する180点以上の方法のように過去問の周辺知識を増やしていくという方法もあり得ます。
 また、過去問を解く方が実力をつけられるという方で、予備の過去問は全て解き終わっているという方であれば、司法試験の短答式試験の過去問をやることも有効です。
 令和5年の憲法の短答では、平成18年の憲法の肢が出ていたりもしたので、対応できる過去問の数を増やしていくことで、本番で一つでも肢を瞬時に判断できるという効果があります。

予備過去問法律科目7科目で合計180点以上の場合

 過去問を解いてももうほとんど点数を伸ばせる要素はありません。
ただし、過去問の答えだけを覚えてしまっているという人にとっては、肢別の勉強をすることで、違う問題として、同じ肢が出た場合にも対応できるので、そのような方にとっては、肢別も有効です。
 肢別でも既にあるほぼ完璧の状態の方にとって、肢別に正確性を追求することも可能ですが、難しい肢が再出題される可能性があることからそれほど有効な対策ではないです。
 そのため過去問を解くのではなく、テキストの読込や、条文素読をすることで点数アップを目指す対策の方が有効なことが多いです。

 テキストにある図表などで項目名だけみて、表の中身を全部思い出せるかをチェックしていくなども有効な方法です。
 以下の画像の赤枠の部分を隠して、全部言えるかを確認していくような作業をします。

  
 もし過去問を解くのであれば、以下のように、問題に関連する知識で自分が知っている知識を書き込んで確認していくという方法をお勧めします。 この際には、その肢が条文の何条の問題なのかまでを思い出せるようにしておくと、論文対策にもなります。


それに加えて、このレベルだと、論文合格も見据えている人が多いと思うので、選択肢に関連する論文の論点がある場合は、その論点が論文で出題された場合は、どんな記述をするのかを頭の中で想起しておくことで、論文対策の勉強にもなります。


科目別の対策

憲法の対策

憲法は短答不合格者と合格者であまり点数の差がつかない科目です。
言い換えると、一定程度の実力になると、それ以上点数を伸ばすのは難しい科目です。

この原因は出題方式にもあると思います。
憲法は6問が3つの肢の〇、×を正確に判定できないと0点。
あと6問は、3つの肢の〇、×を2つ正解できれば1点、3つ正解で3点です。

ある程度勉強が進めば、3つの肢のうちの2つの肢の正誤は判定できることは多くなります。
しかし、残りの1つの肢が難しければ、初級者と上級者で差が0点もしくは1点しかつかない状態となります。
そのため、2つの肢の正誤を判定できた人と、全く肢の正誤を判定できなかった人も同じような点数になりがちです。

憲法は判例の結論だけでなく、理由や言い回しまで問われるのですが、そこまで細かく覚えようとするのは、時間帯効果が悪いので、過去問で出た範囲の判例の何となくの理由と結論を広く浅くわかる程度にとどめておくのが良いと思います。

統治は得点源と言われることも多いですが、条文以外の見解を問われるようなところは結構難しい問題も多いです。
そのため、完璧にしようとすると時間をとられるので、これも過去問に出た範囲のところをできる限り完璧にすることにとどめておいた方が良いでしょう。

結論としては、憲法は、人権部分も統治部分も過去問で出題されている部分を完璧にしようとするのが、時間帯効果が高いという考えです。

憲法の短答についてもう少し踏み込んだ対策については、以下の記事に書いておりますので、無料公開までの部分だけでも参考にしてみてください。

 

行政法の対策

行政法は短答試験の最難関科目です。 平均点が一番低い傾向にあり、満点が0人の年もあるような科目です。

問題形式も、憲法と同じようにみえるので、正確に〇、×の判定ができないと難しいようにも見えます。

しかし、4つの肢の問題では、1つ間違えても、憲法と違って、2点もらえるので、しっかり勉強している人としていない人で結構差が出る科目です。
この4つの肢の問題で何としても3つ正解できるかが行政法で得点高められるかの一番のキーポイントです。

行政法の問題は判例の問題と、条文の問題です。

判例の問題は憲法と違って、いじわるな問題があまりでないので、素直に結論だけ知っていれば解答できるものがほとんどなので、判例の問題は絶対に正解すべきです。

合格セレクションに短答で出題されそうな判例一覧が掲載されているので、それの結論を完璧に覚えるだけでもかなり有利になります。

一方で条文の問題はかなり難しいです。 細かいところを聞かれることもあるうえに、似たような制度のところで、
努力義務なのか、義務なのか、
行審法と行訴法での規定の違い、
抗告訴訟の中でも準用している条文としていない条文
など、正確に理解していないと解けない問題が多いです。

それに加え、過去問で問われた肢の焼きなおしが少なく、新しい問題が出がちなので、平均点もなかなか上がらないです。

点数を上げる方法として、行手法、行審法、行訴法の3法はそれほど条文数がないので、完璧に条文を覚えるという方法がありますが、全7科目あるなかでそれをするのも時間帯効果が良いとはいえません。

そのため、結局は行政法も過去問も問われた範囲を完璧にするというのが、現実的に一番時間帯効果が良いと思えます。


民法の対策

民法の問題は、最近では5つの肢の中から、正誤の組み合わせを選ぶ問題ばかりなので、2つか3つの肢がわかれば正解になるので、比較的簡単なようにも思えます。

しかし、民法は1つ1つの問題は覚えれば難しくないのですが、条文数も多く、似たような制度も多いのに、判例も多いため、正確に1つ1つを覚えるというのが難しいです。
一方で、2つか3つの肢がわかれば正解できるので、上級者と初級者でかなりの差がつく科目です。
このように覚える量はかなり多いのですが、過去問の焼きなおしも多いうえに、広く浅くの知識があれば解ける問題も多いので、差がかなりつきます。

民法は覚えることがかなり多いので、全部を1つ1つ独立して覚えようとすると量が膨大になります。
そのため工夫をして覚える量を少しでも減らす努力が必要です。
先ほどもあげた以下の表だと、
全部〇の質権を基本として、
留置権は物上代位、優先弁済がなく、
先取特権、抵当権は、留置的効力がない
みたいな感じで覚えると、相対的な部分だけ記憶すれば、覚える量を減らすことが可能です。

対策としては、過去問がやはり有効なのですが、平成29年の改正の影響が令和元年まで及んでいるので、今の法律に近い状態で過去問を解けるのが4年分くらいしかないというのが難しいところです。
それよりも古い問題でも、平成29年の大改正と関係ない部分も多いので、その部分は過去問を完璧にするのを目指しましょう。

過去問で少し注意が必要なのは、司法試験の方の民法の問題に時間をとられ過ぎないことです。
予備試験は民法は15問に対して、司法試験は36問前後出題されるので、司法試験では全分野から出題されるのに対して、予備試験では基本的な分野からの出題される可能性が高いです。
そのため、多くの人が苦手とする共同抵当や、根抵当、代位弁済の問題は予備試験では問われにくく、理解に時間がかかるので、時間対効果が非常に悪いので、あまり時間をかけないようにしましょう。


商法の対策

商法は行政法に続いて苦手にしている科目です。 行政法よりも平均点が高いのは、問題形式の違いかと思います。
商法も、民法と同じで5つの肢から、正誤を選ぶ問題が多いので、全ての肢の正誤を正確に判定できなくても、正解が可能なので、行政法よりは得点しやすいとも思えます。

一方で、民法と違うのは、過去問の肢がそのまま出題されることは少ないので、過去問をやっているだけだとなかなか点数が伸びない点です。
商法総則は過去問の範囲でそれなりの点数がとれるので、商法総則分野は過去問を完璧にするようにしましょう。

例えば、過去の肢では、取締役としての文章を監査役や、会計監査人として変えたものが出題されるなど、過去問とは違った角度で問われることが多いです。


上記の役員の任期については、取締役の年数と、会計監査人の年数で変えた選択肢が出題されたり、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社で入れ替えたり、社外取締役の規定を変えたりと変化をつけてきます。
そのため、このような表の縦軸、横軸で正確な内容の理解がないと、違う角度から聞かれたのが解けないです。

結論としては、商法は合格セレクションにある図表や、必出3300などの図表を覚えることを優先した方が、試験当日の初見の問題で高得点を狙える可能性が高いです。


民事訴訟法の対策

民事訴訟法は、問題形式は民法と同じで、過去問からそのまま出題されることも多いので民事系で最も点数が稼ぎやすい科目です。

目新しい問題もそれほど出ないので、ひたすら過去問をやり、それを覚えるのが一番時間対効果が良いです。

できれば、予備試験のものだけでなく、平成18年から平成26年までは司法試験の問題もあるので、できれば少しでも多くの問題に触れておいた方が得点を上げることができます。

それでも時間があまるようであれば、予備試験の口述試験の過去問の手続きに関する部分もやっておくことで、より完全な対策をできます。

注意点としては、過去問でかなり頻出の弁論準備手続き期日のビデオ通話の170条3項のただし書きが改正でなくなっており、改正前の問題が多いので、それを間違えないようにするのは必要です。

刑法の対策

刑法も5つの肢から2つ正解を選ぶものが多いのですが、民法と違って、肢が用意されておらず、かつ部分点がないものが多いので、問題形式としては民法より難易度が高いです。
ただ、民法よりも条文が少ないので、覚える範囲は少ない分、判例を多く覚える必要があったり、学説の対立問題を覚えたりする必要があります。

学説の対立問題は、日本語がわかればある程度解けるものから、正確に学説の対立の細かい部分まで覚えていないと解けない問題があるので、あまり学説対立に深入りするのは、時間対効果が悪いです。
ただし、論文で学説対立問題が出題され始めているので、そこをしっかり理解することは論文対策としては有効です。

具体的な対策としては、刑法も過去問の肢がそのまま出ることが多いので過去問を完璧にしようとすることが最も効率が良いです。
その際に、文章問題で日本語で解けそうな問題や、今後出ないであろう問題も多いので、長文の問題は後回しにして、5つの選択肢の正誤問題だけの問題を優先する方が時間効率は良いと思います。

刑法は論文対策と、短答対策が一番被る部分が多い科目なので、比較的短答合格に余裕がある人であれば、短答対策として刑法に力をいれることで、論文の実力も上げやすいので、時間を刑法の勉強に使うというのは有効です。

予備試験の過去問をやり、覚えてしまっている人は司法試験の問題をやるのも有効です。
民法と違って、予備と司法でそれほど難易度の違いや分野の違いがないので、多く過去問を検討することができるでしょう。
また、口述試験の刑法分野の問題も短答対策として役に立つので、短答過去問を全部やりきり答えを覚えてしまった人はやってみるのも点数アップにつながると思います。

刑事訴訟法の対策

刑事訴訟法の対策は、民事訴訟法とほぼ同じです。
問題形式で、個数問題が出るので、民事訴訟法よりは正確性が問われます。聞いたことがないような現場思考の問題もでることもありますが、それは対策のしようがないので、現場で頑張るしかないです。

対策としては、民事訴訟法とかわらず、過去問を完璧にすることが一番効率的で、同じく司法試験平成18年から26年や、口述試験の手続き分野のところの問題をやりこむのが良いです。

最後に

 この記事では、実力別と科目別で、直前の対策を書かせていただきました。
 はじめにの部分にも書かせていただきましたが、最後の2週間に必死で追い込むだけでも50点以上得点を上げることも可能なのが、短答式試験の特徴です。
 短答試験だけ合格しても、論文の勉強が全然できていなければ、合格しても意味がないという見解もあります。
 しかし、短答試験から論文試験までの50日は最も論文の実力を上げることのできる期間なので、不合格になったとしても、論文の実力を上げることで次の年の論文合格には大きく近づくことができます。
 また、論文試験の会場の雰囲気、時間の流れを一度経験できることも貴重な経験です。
 
 この記事により最後の1ヶ月をより効率よく過ごしていただくことで、1人でも多くの方の短答試験合格に役立てると嬉しいかぎりです。 

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