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人間の本質は善である 「希望の歴史」ルトガー・ブレグマン著を読んで

「人間は本質的に利己的で攻撃的で、すぐパニックを起こす」という説があります。
これに対し著者は
「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」と主張します。(上巻22P)

著者は、この説明のため、オランダのフローニゲン大学の社会心理学教授トム・ポストメスを登場させます。

ポストメス教授は何年も前から、学生たちに以下の質問を投げかけてきた。

飛行機が緊急着陸して、三つに割れたとしよう。機内に煙が充満してきた。早く脱出しなければならない!さあ、何が起きるだろう。

・惑星Aでは、乗客は、近くの席の人々に大丈夫ですかと尋ねる。そして助けが必要な人から機外に助け出される。乗客は望んで自分の命を犠牲にしようとする。たとえ相手が見ず知らずの他人であっても。

・惑星Bでは、誰もが自分のことしか考えない。パニックが起きる。押したり、突いたり、たいへんな騒ぎとなり、こどもや老人や障害者は、倒され、踏みつけられる。

ここで質問だ。わたしたちはどちらの惑星に住んでいるのだろう。

「おそらく97%の人は、自分は惑星Bに住んでいると考えるでしょう」と教授は言う。
「しかし現実には、ほとんどの人は惑星Aに住んでいるのです」(上巻22P)

ポストメス教授も著者と同じ意見のようです。

地球上の歴史的な惨事を振り返っても、明らかにその舞台は惑星Aだったと、著者は言います。

タイタニック号の沈没でも、映画を見れば皆がパニックになったと思うだろうが、実のところ避難はきわめて秩序正しくなされた。
「パニックやヒステリーの兆候さえ見られず、恐怖のあまり泣き叫んだり、走り回ったりする人はいなかった」と「ある目撃者は回想する」と著者は書きます。(上巻23P)
(「ある目撃者の回想」がすべてではないかもしれないとは思います)

2001年9月11日のテロ攻撃のでも、ツインタワーが燃えていた時、数千人の人々が、自らの命が危険にさらされていることを知りながら、静かに階段を降り続けた。と著者は言います。彼らは消防士やけが人が通れるように、脇に寄った。「そして、『お先にどうぞ』と言ったのです。」とある生存者は後に語った。「信じがたいことに、本当に『お先にどうぞ』と言ったのです。不思議な光景でした」(上巻22P)k
(これも「ある生存者」が語ったことがすべてなのかは疑問です)

東日本大震災の時に、海外メディアは、日本人が食料や水の配給に整然と並んでいるのを見て、「自分の国であればパニックになっている。なんて善良な国民だろう」というような趣旨の報道をしていたと記憶しています。

この本を読むと、日本も「惑星Aのひとつの国であったにすぎない」と思わされます。

ただ、これらの事例に共通するのは、「普通であれば惑星Bのはずなのに」と考えられている節があることです。(「不思議な光景でした」「自分の国であればパニックになっている」)

著者は、上下巻約500ページの中で、独自の調査に基づき、
「地球は惑星Bと思われているが、実は惑星Aなのです」という事例を多数挙げてきます。
その中に、私にとっても「今までの認識を変えさせられた」ものがありましたので、明日以降取り上げたいと思います。

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