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日本語教室の俳句イベントに向けて

昨年12月からボランティアとして参加している、神戸の日本語教室で、1月末に新年会があります。これに向けて、日本語学習者の皆さんは、日本の文化に触れる一端として、「書初め」と「俳句づくり」をすることになりました。

私は、「俳句づくり」のサポートを志願させてもらいました。

日本人でも「つくる」のはなかなか難しい俳句。
初級中級の日本語学習者の皆さんとは、一緒にお話ししながら「ことばさがし」をしていくことになります。

俳句の2大ルールとして、以下の二つを説明します。
・五・七・五で詠むこと(タタタタタ タタタタタタタ タタタタタ などと言いながら、日本語の『拍』のリズムを理解してもらいます)
・季語がいること(seasonal wordとか春夏秋冬とか言いながら、歳時記を見せて説明します)

まず、日系ブラジル人のAさん。
日本語は初級の前半。

五・七・五はなんとか理解いただけましたが、季語は難しい様子。

「お正月」をテーマに問答開始。

(カレンダーを指さして)「一月一日、朝何時に起きましたか?」
「5じにおきました」
「5時に起きて、その後何をしましたか?」
(必ずしもお節料理ではなくても、なんらかお国柄の過ごし方があるのではと期待していたのですが、回答は)
「しごとにいきました」
「えっ」
(にこやかに)
「しごと、いそがしいです」
「そうですか。お正月の早くからの仕事、大変ですね」
(でも本人は嫌そうな素振りは見せず)
「じゃあ、『お正月 朝から仕事 忙しい』ではどうですか?
 五・七・五だし、お正月が季語です」
「そうします!」
Aさん、にこにこしながら、他の先生の指導で、短冊に出来上がった俳句を書いていきます。

次は、台湾人のBさん。日本語は中級の後半。
息子さんが車椅子を使っていらっしゃいます。

五・七・五も、季語も理解されたので、下五に入れる五文字の名詞を3分で10個書き出してくださいとお願いしました。

最初「ゆきだるま」を挙げていましたが、「それは季語です」ということで「却下」しました。

「きごじゃなくて五もじか、むずかしい」とブツブツ言っていましたが、やがて「ゆうえんち」とか「くるまいす」とか「おばあちゃん」とか5個ほど書いてくれました。

息子さんに思い入れが深いと感じたので、「『車椅子』を下五にもってきてはいかがですか」と提案しました。

「くるまいす」を書いたときに、昔アメリカにいた時の思い出として、アメリカではバイクにクリスマス飾りをするのを見て、車椅子にクリスマス飾りをしたら息子が笑顔だったという話をしていました。

そこで「中七・下五を『飾りつけした車椅子』としては?季節はいつ?」
と尋ねると
「クリスマス!」

「じゃあ、『クリスマス かざりつけした くるまいす』で一句できましたよ。どうですか?」

Bさん、ニッコリして、「むすこ そのとき わらってました」と。
短冊に出来上がった俳句を書いていきます。

3人目は、ブラジル人のCさん。お孫さんもいるお歳で、日本滞在歴も長いのですが、自己流の日本語で、テキストは初級前半を行ったり来たりとのこと。

やはり問答は
「お正月は何時に起きましたか?」からスタート。
「4じにおきました」
「それから何をしましたか」
「シャワーをあびて、30ぷんあるいて、かいしゃにいきました。」
「お正月から仕事だったんですね。大変ですね。さっきの学習者さんもそうでしたよ。
 それを俳句にしますか?『お正月 5時から歩き 会社まで』どうですか?

Cさん、不満そう。
「もっとたのしいのがいい」
「じゃあ、お正月、お孫さんと遊びましたか」
「31にちからきのうまでしごと」
「じゃあ、お孫さんと遊べてないんですね?」
「いや、ふつかみっかはいえにきていた」
「お孫さんと何をしましたか」
「わたしはつかれていたので、なにもしなかったが、まごはわたしをみてわらってくれて うれしかった」
「じゃあ、『お正月 まごとあそんで たのしいな』ではどうですか?」
Cさん、にっこりして
「それならいいかな」
Cさんも、短冊にできた俳句を書いていました。

日本に滞在して、日本語を学ぶ外国人の皆さんの年末年始。
その一端を垣間見ることができました。

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