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日本語文法における「は」と「が」 日本語文法ハンドブックVSニュー・システムによる日本語④

日本語文法ハンドブック スリーエーネットワーク社では、「もう一歩進んでみると」で、取り上げた文法項目が理論的にはどのように体系づけられるのか、研究者や参考文献を紹介しています。

日本語教育で広く使われているのは久野暲(1973)です。久野は「は」に「主題」と「対比」、「が」に「総記」と「中立叙述」という二つの機能を認め、「は」と「が」の用法を記述しました。「は」が旧情報を表し、「が」が新情報を表すという説も同書によって広まったものです。(267P)

「は」と「が」の使い分けの規則が大きく3つあって、7つの場合分けがあり、「は」と「が」を使い分ける、という本書の主張は、久野暲の説に従ったものと思われます。

しかし、その後に三上章のことも記載があります。

一方、三上章は「は」は主語ではなく主題であることを力説しました。(中略)三上が創案した「無題化」と呼ばれる操作により、「は」と「が」の関係が明確になりました。彼の主語廃止論は生前にはあまり受け入れられませんでしたが、死後高く評価されてその後の研究に大きな影響を与えています。(267P)

ニュー・システム 現代人文社の主張は、この三上章の説によるものと思われます。日本語ハンドブックは、「両論併記」していて、この「もう一歩進んでみると」を読む限り、どちらが正しいとも言っていないように見えます。

日本語ハンドブックには、三上章のいう「無題化」の解説と思われる記述があります。

「が」はこのように、格を表しますが、格というのは述語(動詞、形容詞、「名詞+だ」)が、出来事を描写するときに必要とする名詞の形態です。
この意味で、「が」は「を」「に」「で」「と」などの格助詞と対等の資格にあり、決して特別な存在ではありません。

<例文>
あの子供が 友達と この犬を 棒で 殴っていた。
あの子供が             殴っていた。
      友達と         殴っていた。
          この犬を    殴っていた。
               棒で 殴っていた。

一方、「は」は文の主題を表し、文を「主題」と「解説」に二分する機能を持っています。

<例文>
あの子供は / 友達と この犬を 棒で 殴っていた。
主題    / 解説

これからわかるように、文頭の「~は」は文の中で特別な存在です。(261P)

ニュー・システムではこんな例文をあげています。
〇〇は、〇〇について述べたい又は知りたい情報。

<例文>
夏休みに 教会で 友達が 日本語を 教える。
夏休みに              教える。
     教会で          教える。
         友達が      教える。
             日本語を 教える。

4つの連用修飾語の各々がトピックになる場合を見ていきます。
(1)「夏休みに」がトピック
   夏休みには 教会で 友達が 日本語を 教える。
(2)「教会で」がトピック
   教会では 夏休みに 友達が 日本語を 教える。
(3)「友達が」がトピック
   友達がは 夏休みに 教会で 日本語を 教える。
(4)「日本語を」がトピック
   日本語をは 夏休みに 教会で 友達が 教える。(156P)

ここでの例文のあげ方については、両書はほぼ共通していると思われます。

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