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多すぎる情報に人間は混乱してしまうので、そういう時はパターン検討を丁寧にしながら、もっと情報を集めるといいよって話。〜障害のある子どもの進路に迷ったときに〜

mondでいただいた質問です。

子どもの学校選択、難しいですよね。特に言語発達ゆっくりな自閉症の子は、言語が進むと検査で知的障害の水準から外れることもあり、判断が難しい。しかし、選択の時は待ってはくれないわけで。もういっそ誰かに決めてくれー!って思うの、あるあるある…。かつて私も通った道です。

現在の質問主さんのように、こういう、『判断材料が多すぎて(決定打がなくて)どうしていいかわからない』ときって、情報に優先順位がつけられないから起こるんですよね。つまり、情報がありすぎるように見えて、足りてないんですよ。

そんな時は、私は情報整理を丁寧にやり直して、決定するために必要な情報を取りに行きます。また、例外はなるべく考えず、シンプルに思考していくことも重要です。

そして、思考がこんがらがるときは、一見単純でバカバカしくても、自分で図を引きながら思考を整理するといいです。人間の短期記憶はそんなに優秀じゃないので、図にすると情報の切り分けが明確になって、頭がこんがらがるのを防いでくれるのです。

こういう図を書く時、最初は目指している根本で大元なゴールを書きます。また、ゴールは目的であり、手段でない事も意識をする必要があります。

(よくない例:「目標:お金持ち」はそのお金を使ってどうなりたいのか?がわかりません。お金というのは何かを叶える手段であり目的ではないです)

まず、あなたがお子さんのために目指すものはなんでしょうか?
おそらく、お子さんが『幸せな日々を送ること(ゴール:目標)』でしょう。

そして、そのために必要なものはなんでしょうか?
お子さんが『幸せに過ごすための環境』です。

お子さんが幸せに過ごすための環境とはどんなものでしょう?
『安心・安全が保障され、やりがいと充実に満たされた状態』ではないでしょうか?

図に表すとこうです。シンプルですね!

次は、現在の状況(近い将来)を考えます。

現在(近い将来)、お子さんが幸せに過ごすための環境には何が含まれるでしょうか?

生活というのは、内と外でできています。お子さんにとっての『内』とは、家庭ですよね。満ち足りた衣食住と精神的な安心です。現在、それを提供するのは保護者の役目です。保護者の日常が安定することで、家庭の安心は高まります。

お子さんにとっての『外』とは、学校です。元々はお子さんの発達の状況から、支援学校が『安心・安全・やりがい・充実』を得られる場所だと質問主さんは考えていました。

でも、どうやら現在のお子さんの状態だと、地域校支援級でもおそらく安心安全が保障されやりがいのある充実した日々をスタートできそうです(希望的観測ですがシンプルに考えます)。

これを図に表すとこうなります。

さて、次は未来のことを考えます。

この社会では、成人した大人はなんらかの仕事をし、それで得た報酬(収入)で生活を送るのが基本ルールです。

また、報酬は多ければ多いほど生活(家庭)は安定するという相関関係があります。そして、仕事の内容によってこの報酬の過多は決まってきます。

さらに、仕事というのは、学歴・知識・経験・能力を評価されて与えられるのが一般的です。

図にするとこうなります。実際はそれぞれ例外も多いですが、まずはシンプルに考えて例外は置いておきます。なぜなら、この社会は多数派のルートになるほどイレギュラーは起こりにくく、想定がしやすいからです。

成人後の就労を下支えする学歴と知識は、子ども時代から成人するまでの間に得る部分が多く、子ども時代にやるべきことのなかで、かなりの重要度を占めます。

ご存知のように、支援学校に行くと、今後の進学に必要な知識の取得機会が減り、必然的に得られる学歴が少なくなります(≒将来の選択肢が狭くなる)。

そしてこれは障害児親にとっては常識であり、質問主さんもご存じだと思いますが、進路選択においては、不可逆的な選択(取り返しがつかない選択)はできるだけ避けるという条件があります。

一度支援学校に行くと、その後は高等部卒業まで支援学校になる、というのが障害児界の常識であり通説です。これはまさに不可逆的な選択ですね。だからいま、質問主さんは迷っているわけです。

ここからは、この「常識」や「通説」を疑いながら、自分の抱える条件が本当に正しいのかを確認していく作業になります。

①本当に支援学校は不可逆的な選択であり、進路選択を狭めるものなのか?

世間には、支援学校小学部から地域中学校に行くパターンもあれば、支援学校中学部から一般高校や専修高等学校に進学したパターンもあります。しかし、これはかなり地域差があります。

これらの情報は、以外と支援学校の一般の先生もわかってないケースが多いです。直接各担当に問い合わせる必要があります。

・支援学校から地域中学部への進学実績については、支援学校の進路進学担当の先生に確認してください。

・中学部から一般校の進学実績を知っているのは、中学部の進路担当です。中学部に問い合わせてみてください。

・支援学校小学部の途中で地域校に転校の実績はどうでしょうか?これも地域差があり、レアケースですが不可能ではない場合があります。確認してください。

これらは特に過去の進学実績という数値で確認することが必要です。支援学校の各担当には「過去の進学実績を数値で教えてほしい」とはっきり伝えましょう。

手間はかかりますが大事な情報です。「なんとなくそうらしい」ではなく、明確な根拠を取りに行ってください。

支援学校から地域校への移動が可能であれば、支援学校の選択は取り返しのつかない不可逆的な選択ではありません。慌てていますぐ判断をしなくてもいいことになります。その場合は次の問題である②に進みます。

また、支援学校から地域校への移動が不可能であれば、これは不可逆的な選択となってしまうため、現時点ではできるだけ避ける手段を考えます。③に進みます。

②支援学校から地域校や一般高校に進む場合の学習のフォローはどうするのか?

支援学校と支援級や地域校では、学習内容が大きく変わります。地域校に進路を変える場合、そこまでで得られなかった学習と知識を何かしらの方法で補う必要があるでしょう。

・支援学校は、学習に対してもサポートしてくれますか?(これも地域によります)

・学習支援をしている放課後デイや民間療育(実費含む)は利用できそうですか?

・家庭でフォローしていけそうですか?

これは、継続可能性の高さを評価します。安定して継続できないものは、除外してください。

継続して実現可能なのであれば①+②の条件を合わせることで、お子さんの学習機会は保障されます。

逆に②のどれも難しいのであれば、やはり支援学校進学は現実的には不可逆的な選択になってしまうので、次の問題③を考えます。

③子が支援級に行ったときに、親が仕事を継続することは本当に不可能なのか?

上記図では子ども時代の家庭環境の安定は≒保護者の安定としました。

保護者が安定した日々を送るには、保護者自身にも衣食住が保障され、金銭的不安がなく、心身が健康であることが基本です。そして、それを目指して人間は日々活動しています。

保護者自身が仕事を持ち、経済的な補償を得ることは、それらを実現するための手段として優先順位の高いものだと言えるでしょう。

・支援学校でなく地域校支援級を選択した場合、「仕事は辞めないと無理かな?」と書いていますが、本当に継続は難しいですか?職場で働き方に融通が効くか確認する必要があります。

・現在の仕事から別の仕事に代わる選択肢は存在しますか?(これはすぐでなくてもOKです)

・デイの利用日などについても書かれていますが、他の福祉サービスを含めて利用できる手段は存在しませんか?

想像ではなく、自分自身のキャパや職場や家族の協力、実際の福祉サービスによって実現できるかどうかを、しっかりリサーチして検討してください。

この時、「めちゃくちゃ超絶頑張ればできる」というのは「できない」に置き換えることも必要です。無理は続きませんし、疲労が溜まれば心身の健康を損ないます。継続可能性の低い選択肢は除外しましょう。

仕事が続けられそうであれば、お子さんが支援級に進んでも生活変化はないことになります。不可逆的な選択である支援学校ではなく、選択肢の残る支援級を選びましょう。

逆に、仕事の継続がやはり難しいのであれば④について検討します。

④仕事を辞めた場合、現在の家庭の安定(≒保護者の安定)をどう維持するのか?

変化した育児と生活のリズムは、保護者に大きな影響をもたらします。仕事を継続することだけが家庭の安定とは言えない場合もあるでしょう。仕事を辞めた場合の変化についても検討してみましょう。

・お仕事を辞めた場合、必然的に収入が落ちるわけですが、それでも生活は維持できますか?これはリアルなお金の計算です。

・収入の保証について、利用できる福祉制度はありませんか?利用可能な福祉サービスをもう一度確認しましょう。

・そのお仕事があなたにとってのやりがいでありメンタルの安定になっているのであれば、仕事を失ってからのメンタル維持の代替手段を考えます。ありそうですか?

ベストを選ぶのではなく、ベターを選ぶつもりで考えてください。特にお金はリアルです。貧すれば鈍するという言葉もあるように、精神にも大きな負担をかけます。

家庭の安定がお子さんの成長を支えます。親が我が子のために自己犠牲を払うのは必要不可欠であるものといえますが、その結果、保護者(家庭)が不安定になれば、その自己犠牲の意味は低いです。
家庭の方針として、どこに重きを置きバランスを取るのかも自分の中で(またパートナーとも)再確認してください。

100%楽で確実なルートは存在しないです。そして、正解も存在しません。マイノリティな道を選ぶほど、道は険しくはなります。

障害児には障害児界のマジョリティルートがあります。すでに走り始めたマジョリティのルートを途中変更するというのはレアケースに当たるため、マイノリティとしての労力を伴いますが、前例があるかないかでも、その厳しさは全然違います。

ここまで情報を集め直したら保護者である質問主さんが現在ベターだと思うルートはだいぶ絞られるのではないでしょうか?

また、その道を走るとして、足りてないものがはっきりわかれば、それをどう補うかという方向に思考も集中できるのではないでしょうか?

さて、もう12月が目の前です。時間はあまりないですよね。急いで情報収集をスタートしないとですね。

そして、ギリギリまであがいて悩むといいと思います。不安と後悔のない育児は存在しません。そして、迷ったり悩んだりしない親はいないです。全力で悩んでいけー!!!

(あと時々、自分にご褒美ケアもしてね😘)

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なちゅ。
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