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我が家にヤギがやってきた

その日は突然に

機会があればヤギを飼いたいねぇ…と、ぼんやり考えていた我が家。
とはいえ、知識は乏しく、もちろん飼育経験もないままに
その日は突然やってきた。

知り合いから、
高齢で世話が大変になってきたので
若いヤギを手放したい人がいるよ、と声がかかり
どんなヤギか、一度、見に行くことにした。

ヤギの様子を見て、
育てられそうか確認して、
準備をしてから、譲り受ける心づもりであったのだが
訪ねた先では既にヤギが準備されており、
あれよあれよと言う間に
軽トラの荷台に載せられてしまった。

こうして、3月のある日、我が家にヤギがやってきた。
1才くらいの、メスのヤギである。

急いで飼育書を読み込みつつ、
飼育環境を整えてゆく。

最初は不安そうに鳴いていたヤギも
数日を経て、慣れて落ち着いてきた。

ヤギは家畜であるし、
私たちの住んでいる地域では一般的に飼育されているし、
まぁ、この先もなんとかなるでしょう!っと
簡単に考えていたのだが、
この後、大変な事態がやってくるのでありました。

子ヤギ誕生

ヤギを紹介してくれた知人から、
もう、産まれた?
と聞かれたことをキッカケに、
譲り受けたヤギの妊娠が発覚した。

想定外の出来事であったので、
慌てて飼育書の出産に関する項目を読み込む。
とはいえ、ヤギは家畜であるし
我が家の猫の出産の時も何ら問題なかったので
同じ様に、ヤギに任せていれば問題なかろう、と軽く考えていた。

後で聞いた話であるが、
ヤギは、出産〜産後、母子ともに死亡する事例が多いらしい。
軽く考えている場合ではなかったのである。

4月のある日、
いつものように、朝、ヤギ小屋に顔を出すと
ヤギの足元に見慣れぬ白い塊があった。

・・・産まれてる!

しばらく見守っていると、立ち上がり、母乳を飲んだ、が
その後、倒れ込んで動かなくなってしまった。

草食動物といえば、産まれてすぐ立ち上がり
母乳を飲んだあとは、走り回るものだと思っていた。
ヤギは違う、という事は、おそらく、ない。

近所のヤギ飼育の先輩方に相談し、
以前人工哺育に使った、という哺乳瓶を借りた。
家畜獣医にも、アポを取った。

参考程度に、同様のケースがないか
インターネットの海を彷徨う。
結果、おそらく未熟児であろう、と思われた。

3日

生後3日間は、死と隣り合わせであったと思う。

朝、小屋を訪れると
子ヤギは一人丸くなって動かず、
ハエで黒くなっていて
あぁ、ダメだったか…とうなだれた次の瞬間
目が開いて安堵する日々であった。

立ち上がることも中々難しく、
立った!?と思うと、ドサっと倒れ込むような状況で
母子を切り離しての人工哺育も検討したが
母ヤギが強く抵抗するのと
子ヤギが哺乳瓶を受け付けないのとで断念した。
シリンジでの哺乳も試したが、思うように飲まなかった。

試行錯誤の結果、
なんとか、子ヤギを手で支えることで
母乳を飲ませることに成功した。

人工哺育時の日齢でのミルク給仕量を参考に、
身体が小さく、一度で量が飲めない分
回数を増やして母乳を飲ませた。

何度か繰り返すと、
母子共に覚えてスムーズに飲めるようになった。

ミルクが飲めていれば大丈夫と言う
先輩方の言葉だけが頼りであった。

1週

母乳は介助で飲めているが、
ほとんど歩けない事が気になってきた頃
子ヤギの臀部にウジの塊を発見する。
蝿蛆症に罹っていた。

緊急で薬を処方してもらい、
ひたすらウジを除去した。

子ヤギは脚をうまく動かせない様子だったので
家畜獣医に相談の上、
脚を曲げ伸ばす、
補助付きで立っている練習をするなどの
リハビリを続けた。

このころ、よく震えていた子ヤギ。
検査もしたが、原因不明との事であったけれど
今振り返ってみると、低体温だったのでは、と思う。
対策として、保温が効果的であったかもしれない。

3週

リハビリの効果があったのか、
徐々に自分で立ち上がり、歩けるようになってきた。
時折、走ってみせるときもあった。
それと同時に、介助がなくても母乳が飲めるようになった。
蝿蛆症も快癒した。
子ヤギの匂いを嗅ぐと甘いミルクの匂いがした。

なんとか育ってくれそう、と安心したころ、
子ヤギに歯が生え始めたのに気づく。
出っ歯…!

自力で母乳が飲めるようになった、と安堵したのも束の間
歯が生え、草を舐めはじめた。
また、時に、私たちに対して前脚を使って甘えるような仕草も見られた。
子ヤギの成長は、とても早い。

1ヶ月

その後も、大変ありがたいことに、
子ヤギは順調に成長してくれた。

その辺りを跳ね回っている姿に、
これが本来の子ヤギの姿では!
ちゃんと「子ヤギ」に育ってくれた!
と、嬉しさもひとしおである。

少しずつ草を食べはじめ、
ペースト状だったフンが、ゴマ粒大の固形になった。

2ヶ月

子ヤギの食事は、
母乳が少しと、ほぼ、草となった。
草の柔らかいところや、
小さいものを選んで食べている。


角が生えはじめた。

3ヶ月

これまでは、食事をしては、休み、甘え、また食事に戻る、
という生活であったが、
休んでいる暇も甘えている暇もナイとばかりに
草を食べ続けるようになった。
食べられる草木の種類が増えた。

たまに母乳を飲もうとして、足蹴りで拒否されているが、
母ヤギについて歩き、大きく離れることはない。

水が飲めるようになった。

半年

秋になり、冬毛に生え変わった。
子ヤギのモフみが素晴らしい。

以前は、存在を確認するかのように
頻繁に母子で鳴き合っていたが
最近は静かなもので、
お互い、無心で草を食んでいる。

果物はご馳走のようである。

子ヤギが、お腹をパンパンに膨らませている姿を見ると、
よくぞここまで…と感慨深い。

最近は、私たちに反抗することも覚えた。
次はどんな新しい仕草や反応を見せてくれるのか、楽しみである。

このまま最期まで、穏やかに健やかに暮らして欲しい。

最後に

ヤギは、面白い。

さすが、ヒトの暮らしに合うように
改良されてきただけのことはある、と思う。
とはいえ、
何処でも誰でも簡単に飼える、というものでもない。

ヤギを飼うにあたり、
近所で一般的に飼育されているから大丈夫、程度の認識であったが
命を扱うにあたっては、知識と経験、
そして何より、
いざという時に頼れる専門の獣医師が近くにいることが
重要であると強く感じた。
お世話になった獣医の先生方には、感謝してもしきれない。

診察に連れて行けるよう、
軽トラのような車があるとなお良い。
往診も可能だが、
予約待ちになるし、相応の出費が発生する。

ヤギは家畜なので、
地域の家畜飼養のルールを確認する必要がある。
ルールに応じて、登録や検査などを受ける。

逃げ出さないような飼育環境と管理も大切。
よく鳴くので、近隣への配慮や、理解を得ることも重要。

それから、飼料の確保がけっこう大変。
好物でも3日続けては同じものを食べない。
本能で、偏りが良くないことを知っているのでは?と感じる。
草木が手に入りにくい時期は、乾燥飼料を購入するなどしている。

畑の草木を食べたヤギが排泄したフンを、畑の肥料に使う。
農業の一端に物質循環を取り入れることができた。

農作業の合間に、ヤギが草を食んでいる姿をのんびり眺めるのは
とても気持ちが良い。

縁あって我が家にやって来てくれたヤギたちとの生活を
今後も楽しみたい。

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