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コンプレックス

『みんなと同じわたしと、違うわたし。』

私の父は、
私が生まれた頃は会社の社長だった。

今でいう「IT系」の事業を営み、
当時では最先端の技術を扱う会社だった。

さらにバブルの時期と重なって、
私の家はちょっぴりお金に余裕のある
暮らしを送っていた。

当時の私にとって
日々の生活は「当たり前」のものであり、
そこに違和感を覚えることは一度もなかった。

小学校へ上がるまでは ——。


すぐに友達ができるタイプだった私は、
同級生をよく自宅に呼んで遊んでいた。

リビングには滑り台があり、
リカちゃんやバービーといった人形から
最新のゲーム機やソフトまで、
遊具が充実していた。

そして、
専業主婦でおもてなしが大好きな母は
いつも子供たちが喜ぶおやつを運んでくれた。

これはぜんぶ、私にとっては当たり前で
「普通」のことだった。


でも徐々に、友達から
こんな言葉を言われる機会が増えていく。

「よっちゃん家はお金持ちで、うちらとは違うからなぁ。」

幼心にショックを受けたことを覚えている。

ただただ純粋に、
一緒に楽しく遊んでいる……
そんな友達から
急に距離を置かれたように感じたのだ。

「私はみんなと違うの?」
「みんなと違うかったら、仲良く遊ばれへんの?」

いつしか私の心に
「みんなと同じになりたい!」という思いが強くなった。

「みんなと違う」ことをコンプレックスに感じる
私の始まりの物語。

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