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60代になって将来の生活費の不安をほぼ完全に解消する

このnoteの目的。お金を得る手段、増やす手段ではなく、うまく使う手段についてのみ書きます

このnoteの目的を誤解して読み始めると、がっかりするかもしれないので、あらかじめお断わりしておきます。
お金を得る方法は書きません。歳とってから稼ぐのは無理です。もちろん今までよりがんばれば今までより稼ぐ可能性はあります。でも体力も衰えているので、つらいです。歳をとったら無理はせずペースダウンしていく方が賢明です。楽に稼げます、というお誘いは間違いなく詐欺ですからひっかからないように。
また資産を増やす手段も書きません。今までできなかったのに、投資でお金が増えるなんて方法はありません。それもそういうお誘いがあればすべて詐欺です。騙されないように気をつけましょう。

自然災害に備えることもこの note のテーマではありません。津波や地震が怖かったら、ハザードマップをみて、怖くないところに引っ越しましょう。家財の損失には保険で備えましょう。

では、何について述べるか?

今ある資産をできるだけ無駄なく使い切る。これは可能です。どこかに落とし穴があって、非常につらい状況に陥るのは避けたいですね。そんな不安はなく、しかしあるものは使ってしまいたい。そんなお金の使い方について、老後に備えて調べたことを共有したいと思います。

資産を取り崩して老後の生活を続ける場合、避けなければならないのは、使い切ってしまうことが早すぎないこと。70になって資産を使い切ってしまったが、意外にぴんぴんしている。じゃぁ働くか。これはつらい。

そして過度に余らせること。余命いくばくもないがお金はたくさんある。寄付でもしようか。でもこんなことならもっと有効に使えばよかった。

どちらも損ですね。

このnoteに書くのは、これら二つを避け、あるものは使い、決して不足はしないという使い方です。
その場合、「長生きした場合におかねが足りなくならないだろうか」というリスクと、「インフレが進んでお金が足りなくならないだろうか」というリスクがあります。この二つに対応するのが目的です。

結論からいえば、標準的な社会保障、資産運用をしていれば、そんなにひどいことにはならない、と思います。そりゃ、そうじゃないと、国がおかしくなりますからね。有権者の信頼は、国家の、そして長期与党の、最大の関心時。様々なことがおこっても、いやおこる前に、そうしたことに備えられている、と知られていることが、権力の維持に必要であるわけです。
なので、まぁそこは信頼していいなじゃないか。
しかし、あなたが60歳で死ぬのか、70歳まで生きるのか、80歳になっても意外にピンピンしているのかはわからない。その場合の「生活費の不安」を解消するのがこのnoteの目的です。
もちろん60歳くらいの人はそろそろ、お年頃だから、こういうことを考える。特に年金のお知らせ、などが来始めると、日本ではいろんなオプションが用意されているので、いったいどう考えてどのオプションをえらべばよいか迷うわけです。オプションが示されているだけで、どれを選ぶとどういう場合によいのか、意外にわかりやすい説明がないのですね。僕自身も、あ~こまったなぁ。といろいろ調べたり自分で試算して、いちおうの結論にいたりましたので、それを紹介しようと思います。
まだまだ若い人も、もちろん将来について多少気になることはあると思います。まぁそんなに気にする必要はない、と思いますが、(自分が高齢者になったときにどんな制度になっているかわからないしね)。とはいえ、こうしたシステムの仕組みがわかっていれば安心できるかもしれません。
ではどうぞ。

問題は資産の安全性と寿命の不確定性

これに問題をしぼります。
自分が持っている資産、これは年金、預金、株式、土地などすべて含みますが、それらの安全性はどうか。そして、自分ははたしていつまで生活費を必要とするのか。
わかりやすく思考実験をします。
あなたの前に以下の3つのオプションがあります。どれをえらびますか?
1. 1億円で60歳から70歳まで、年間1000万円相当の予算で快適な生活とサービスを提供します。70歳の誕生日であなたは全財産を失い、処刑されるか、無一文で放り出されるかを選ぶことができます。70歳以前に死亡した場合は、未使用の残金が遺産として遺族に残ります。
2. 1億円の入金で、年間700万円相当のサービスを死亡するまで受けられます。このサービスは死亡するまで続きます。ただし死亡しても財産は残りまっせん。
3. 1億円で60歳から110歳まで、年間250万円相当の予算で快適な生活とサービスを提供します。110歳の誕生日であなたは全財産を失い、処刑されるか、無一文で放り出されるかを選ぶことができます。110歳以前に死亡した場合は、未使用の残金が遺産として遺族に残ります。

僕は2のオプションがよい、と思うのです。思いません?1 or 3 がよい?それならあなたには悩みはない。単に全額を安全な金融機関に貯金して、予定したペースで使っていけばよいだけです。

しかしそんな都合よく、ある年齢で人生を終えられるわけではない。

第23回生命表(完全生命表)の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

男性の生命表をみてください。0歳から64歳までの生存率は0.99以上です。これは年間の生存率なので、0歳の乳児の99%が64歳まで生きるわけではないのですが、毎年では1%も死なないのです。まぁ案外死亡率は高いので、個人が1/1000000以下の原発リスクを考えてどうするの、ということはありますが、65歳になるまではだいたい来年も生きている。
では65歳以上になればある年齢までに確実に死ぬか、というとこれがきわめて不確定。この歳になればだいたい確実に死ねる、という年齢はそんなに低くはありません。95歳でも死亡率は0.23にしかなりません。100歳で現役で働いてらっしゃる方もいるくらいで、死亡率0.23といってもそれはもうすでに半分死んでいる人をかなり含めての数字であって、ピンピンしている人は95歳になっても元気ですし、3年以内で死亡する可能性はあまりない、という状態にあるわけです。
しかし、けっこう多くの人は、2のオプションがいいなぁ、と思うのではないかと思うのです。この2のオプションを実現するにはどうすればよいか、というのがこのnoteのテーマです。
また、預かった資産にリスクがあるのはこまる。いざというときに、預かったお金なくなっちゃいました、とならないためにはどうすべきか。この点もテーマです。

トンチン性

これは聞いたことがあると思います。トンチン年金というやつです。2010ごろから調べたのですが当時ほとんどありませんでした。今は結構商品があります。公的年金から説明を始めてもいいのですが公的年金は仕組みが複雑なので、まずこの民間がやっているトンチン年金から説明を始めましょう。
トンチン年金(名前はいろいろ)は単純です。
死んだ人の積み立て金を生きている人に分配する。それだけです。もう一回生命表をみてみましょう。

第23回生命表(完全生命表)の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

死亡率は90をこえればだんだんと上がっていくわけです。一定額の資金を全員が均等に使っていけばどうしても一定年数で資金は底をつきます。しかし亡くなった方の資金をもういらないから、と、生きている人に回せば、この死亡率であれば、無限に資金を継続できるわけです。
これによってい最初にしめした2のオプションが可能になります。

トンチン年金は、トンチンさんと言う方が考案されたのでこう呼ばれていますが、大変合理的な保険であるといえます。

実際の商品は

1億円つみたてると、700万円を永遠に、というふうには作られていません。調べた範囲で、もっともトンチン性が高そうなものは以下のような設計になっていました。

70-80まで、総額1000万円を積み立てる
積み立て期間は、死亡すると積み立て額の7割程度が返金される。3割は没収される。
80歳以後は毎年100万円が死亡するまで給付される
80-85歳までの給付は生存死亡にかかわらず保証。85歳以上は死亡すると給付はされない。

ちょっと数字は違いますが、だいたいこ際んな感じです。
この保険は保険会社からすると、90歳を超えたところで赤字になりますが、それはもちろん、70-80で亡くなった場合の積み立て金の30%、および85-90歳でなくなった場合の積立金の残額で、まかわわれる、という仕組みです。
なので、この商品のトンチン性はそんなに高いものではありません。85歳までは、積み立てた資金のほとんどは戻ってくるからです。ではトンチン年金として使いにくいかというと、トンチン年金が真価を発揮するのは、死亡率が高くなった85歳以上であるわけです。
おおむね1000万の半分の500万はだいたい戻ってくるので貯蓄性、半分の500万がトンチンとなると思います。
70-80のトンチン性
80歳時点ですでに解約払い戻し金は、それまでの積み立て額より10%ほど増えています。これは、多分70-80で亡くなる方も若干いるので、この部分を利用するから。
しかしトンチン性が高いかというと、70-80の死亡率はたかだか1~4%で、積立金がつみあがっているのは後半の75-80歳程度、そして変換率は3割下がるにすぎないことを考えると、この間死亡した人の掛け金から回せる率はたかだか3~7%程度にすぎないと思います。
商品仕様でもうすこし利回りが設定されているのは、おそらく生命保険会社の運用実績から、2%程度は運用利回りが見込めるからでしょう。
このわずかなトンチン性が無用かというと、70歳の時点の資金がすぐにいらなくなるわけではなく、だんだん歳とともに不要になるという人が多いと思うんで、70-80にむけて徐々に手持ち資金が減っていく、という設計になっているのだろうと思います。
とはいえ、解約払い戻し金、つまり保険をやめて全額現金にした場合の資産価値で考えると、スタート時の資産を100とすると、70-80までは毎年減って80になる直前に70に下がり、そこから110に急にあがって、85までに50くらいまで下がり、その後は少しずつ減っていく、というちょっといびつな変化になるような気もします。
とはいえ、死亡した時に残される資金を考えると、へんな上下はしつつもだいたいなだらかに下がっていくので、まぁトンチン性をもたせつつ残された遺族にもそこそこ不便がない設計になっているように思います。

寿命が延びるリスクはないのか

こうしたトンチン年金、もし「不老不死の医療が生まれたら、保険会社が破綻しないか」という心配がありますがどうでしょう。
これはわかりませんが、生命保険会社がやっているトンチン年金はその点は大丈夫だと思っています。
なぜなら「生命保険の被保険者の方が圧倒的に多い」からです。
先の生命表で死亡率が下がると、生命保険の方は、支払い保険料が当然さがります。死ななければ払わないので。終身保険の場合、いずれは死亡保険を払うわけですが、そうだとしても金利をつけて払うわけではにから、運用利益はまるまる保険会社にとって余剰金になる。なので、おそらく現在より死亡率が下がったとしても生命保険会社の収支は悪くならない、と想像しています。
また生命保険会社にとって、死亡保険と、トンチン年金が、バランスしていれば、死亡率の変化がリスクにならないので、現状では、トンチン年金は歓迎すべきお客なのではないか、と、思います。

公的年金のオプションはどう選ぶべきなのか

これ、わりと早くもらう方が得だと考える人が多いのですが、僕は無理がない範囲で可能なかぎり遅らせた方が得だと考えています。
理由は、繰り延べ給付から、繰り上げ給付への「変換」がいつでも可能だから。
60歳から給付を受けることが可能ですが、これを70歳に繰り延べしていたとしても、ご存じの方が多いように、60歳からのくりあげ給付にいつでも転換可能なわけです。しかももらいそこねていた給付はまとめて受け取ります。
これができますので、必要がない時点でくりあげる理由はないように思います。また公的年金の方が現状は率がよいので、公的年金をくりあげ給付して浮いた資金をトンチン年金に回すよりは、単純に繰り延べ給付を選ぶ方が、多くの給付を受けられるように思いますが、そこはちゃんと計算はしていません。ただ、そこが逆転していればみな、そうすると思うので、多分逆転しているとしてもわずかな金額ではないか、と、思います。

公的年金のバランスシートと収支

よくしられているように公的年金も、終身年金タイプのものが多い。一旦年金支給額がきまれば死ぬまで支給されます。
公的年金の安全性はよく話題になります。現在の年金受給者が年金をもらいつづけ、新規加入がゼロであれば、もちろん加入者が全員死亡するまで支出だけが続くことになります。そして年金機構の資産はその全額をまかなうほどはありません。
では公的年金は安全ではないのか、というとそれは僕にはわかりません。一応現在の収支は収入が多い、黒字となっています。しかし今後受給者が増えるではないか、保険料支払い収入は減っていくではないか、という懸念があります。これについては法制度や政策の安定性について僕はわからないのでなんとも言えません。
しかし、仮に公的年金の事業を、事業として民間に売り出したとしたら、その価値がマイナスであるかプラスであるかは微妙であると思います。
たしかに今後の支払い義務を負債として考えると公的年金は負債が多い、バランスシートがマイナスの状態です。しかし一方で公的年金には、消費税からの収入があります。これはいつまで続けるかは定まっていませんが、これは純収入です。たとえば20年継続すれば、消費税の総額は20兆円であるそうなので、そのうちの10兆円を25年続ければバランスシートは250兆円追加されます。国民年金の支払い総額は50兆円だそうですが、その5年分程度、つまり250兆円が現在資産の不足分だとすればそれはおぎなえます。重要なのは、今後は民間の年金同様、その人の保険金額と平均的な給付額の期待値を同額としておけば、このバランスシートの欠損分はやがて消えるということです。このへんの計算は僕の専門ではありませんが、基本欠損分がこれ以上増えないのであれば、現在程度の消費税を投入しつづければいずれは欠損分は解消します。
なので公的年金の安全性というのは言われているほど心配はない、ように思います。
ただ、終身年金を増やそうとすると、繰り下げ、繰り上げをどうするかという問題がります。これが60歳を超えたあたりからいろいろ確認することになります。こちらは、
とりあえず繰り下げ
を選んでおけばよさそうに思いました。なぜなら、繰り下げから繰り上げへの変更は可能となっている場合が多いからです。逆の変更はできない。なので、とりあえず繰り下げしておけば、もし事情がかわって繰り上げしておいた方がよかった、という状況になっても、その時にくりあげすればよい。オールマイティなわけです。

くりあげした方がよい場合

これはようするに繰り上げしないとコストがかかる場合です。もし銀行に少しでも残金があるならそちらを使えばよいので繰り上げする必要はないように思います。一方もしローンが残っている場合などは、ローンの金利よりは年金繰り下げによる利益は少ないから、くりあげ給付をうけてローンを早く返すことに意味があるかもしれません。また、年金からも貯金をつみあげて、それをお子さんなどに遺産として残す場合も、繰り下げすると繰り下げ受給がバランスする年齢までは受給額が少ないので、くりあげ給付をうけて、それを貯金した方が、多くの遺産を残せます。
貯金があり、年金給付をうけながら貯金も取り崩して生活費にあてる、という場合は繰り延べしておくのが得であると思います。

あわてる必要はない

僕の場合は55歳くらいからちょっとこうした資金運用に興味を持ち始めました。当時トンチン年金という言葉はありましたが商品はほとんどありませんでした。情報を集め始めて60歳くらいからそうした商品がちょっと出始め、多少資金を株式運用から年金に移し始めました。
若干あわてたのは、民間の終身年金は、積み立て期間が最低でも10年必要だといういことです。もし70歳で給付をうけたいなら、60歳がタイムリミットになります。しかし、よく商品をみてみるとこの問題は解決できることに気が付きました。
けっきょくどちらの場合も自分の資産を処分していることにかわりはないので70歳から積み立てをはじめても、80歳まで積み立てをしながら、資産の一部を生活費にあてて生活すればよい。その時点で積み立てた金額よりも多くの解約払い戻し金がありますので、若干のトンチン性はここで得られるわけです。おおむね積み立てる保険総額の15%くらいに相当すると思います。
トンチン性が大きく発揮されるのは85歳以上なので、それではあまり効果がないと思うかもしれません。しかしトンチン性が効果があるのは、死亡率が高い場合なので、実際は85歳以上でトンチン性があれば、トンチン年金としては十分といえます。ただ、これ以上遅く始めると、若干トンチン年金のメリットは十分受けられないように思います。
また歳をとっても元気な人もいるといっても多くの人はそれほど元気ではない。なので、若いころと100%同じ生活費はいらないとも考えられます。ただ医療費は増えるかもしれないので、このへんは僕はだいたい若いころの年収と同程度を確保するようにしています。
いずれにしてもそのような老後の生活費の安定を確保するのには60歳台からでも十分間に合います。

ラフな計算方法

僕の経験をもとに、老後の生活資金のラフな設計方法を考えてみました。
まずトンチン年金は、70歳スタートならだいたい払い込み額の10%を80歳から死亡時まで受け取れます。逆にいえば80-90歳の生活費が残っていれば、それはトンチン化すれば、死ぬまで給付をうけられるわけです。
というわけで80歳以後の生活費は10年分あればいいことになります。
60歳で3000万円あれば、だいたい1/3の1000万円をトンチン年金とし、200万円を60-80歳までの生活資金とすれば、60歳から死亡するまで、100万円をずっと使い続けることができることになります。
このラフな計算方法であると、わりと計算が楽ではないかと思います。
これはあくまで自由に処分できる資産部分を均等に使い切る方法であって、過度にトンチン年金をつみたてたり少なくしても、どこかで歪がくることになります。

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