小雨にはフードが最強さ

私たちは色んなことを考えている。たまに会って一緒に過ごせる時間はそのすべてを語るには短く、というかその瞬間にも喋りたいことが次々と出てくるので過去の思考を辿る余裕がなく、とにかくいつも話し足りずに解散する。次回会う日までにもっと色んな話題をためてきてしまうセルフ宿題型の私たちである。

ならばと思い、溢れ出す言葉を書いておくことにする。書き置いておき読みたいときにいつでも読んでもらえるようにしよう。

うんうんそれがいいね、文通も併用するのがこれからのスタンダードだよね、スタンダードって響きはかっこよくて全然標準じゃない感じするよね、スタンスミスもスタンフォードも華があるもんね、スタン、スタン。

心にスタンを忘れずに、今日は取り留めのない日記を書いてみようと思う。

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先日、くぐつ草という喫茶店に行った。
前の日から行きたくてソワソワしていたのだが、その日は朝から予定があった。行っても行かなくてもいい、まあ行ったほうが良いんだろうけど行かなくても誰も困らなさそうな用事。やはり、そんな用事は基本的にキャンセルしてしまうのが私の癖である。降りるべき駅をしれっと通り過ぎ、気付いたときには吉祥寺に降り立っていた。

この日は5月にしては少し寒く、そして雨も降っていた。私の愛するウィンブレのフードでは防ぎきれない、割とちゃんとした雨だった。体がひえひえになって、少し迷いながらも無事店に入り、今日のお客第一号かな〜〜〜と思いながら、即決でホットココアを頼んだ。木製の魔法書みたいなメニューがめちゃめちゃ分厚くて明らかにかさばりすぎている。

壁際のライトに照らされながらまどろむ。家じゃない場所でこんなにまどろんだのはいつぶりだろう。と思ったけど、割といつでもどこでもまどろんでいたことに気づく。そうだ、お前はまどろみ星人じゃないか。
まどろみ星人はココアをスプーンですくったり、目を閉じたりを繰り返して、この静かな喫茶店で心を落ち着けていた。
いつも変わりないように振る舞う喫茶店。何にも媚びず、作り上げた完成形で魅せている感じがある。

少しだけ目が覚めてきたまどろみ星人は、眉間をきゅんと上げ、ふたたび吉祥寺の町へ出て行く。

その日に行きたかった場所はもう一つあった。谷中にあるHAGI CAFE。ここの存在は数年前から知っていたのだが、初めて行けたのは先月のことだった。きっかけは友達が系列のゲストハウスで働き始めたことである。
初めて行ってからというもの私はあの空間がとても好きになった。いや、好きというよりも休息できる居場所が増えたような感覚のほうが近いだろうか。
この日もまさにそんな気持ちであの空間に足を伸ばしていた。色んな出来事によってざわめく心、そわそわする体。ハイ!!全体!!!一旦休むよーーー!!!とお節介な号令をかけ、その場所としてHAGI CAFEを使わせてもらった。

そういえば前にも同じようなことがあった。
その友達は少し前まで岡山の、これまたゲストハウスで働いていて、私は年末年始に彼女を訪ねて行ったのである。そこも大変居心地がよく、帰りたくない気持ちで大変苦労をした。大晦日の夜の静かなイオン、年始で全然空いてない店、対して賑わう神社や岡山駅。
イレギュラーすぎるタイミングでそれも楽しかったし、なによりも友達と過ごす日常が楽しすぎた。そしてその場所も僭越ながら私にとっての居場所となった。

普段の場所が嫌になったらあそこに行こう、嫌にならなくても行こう、あーーオッケーオッケー生活の自由は自分にあるじゃん、と思える。地理的にちょっと距離があるのもいい。

そんな居場所を教えてくれた友達は、好きなものに敏感で、興味の範囲もめちゃめちゃに広い。琵琶湖チチカカ湖カスピ海。ただ広いというわけではなく、湖の中に住む魚の色やプカプカ浮かぶボートの形の面白さにも気づいてくれる。そういう一つ一つを浮かび上がらせる才能があると思う。ほんとすごい。でもね、ストレージの容量オーバーしてないか心配になるので誕プレはギガです。128、足りそう?

とにもかくにも、そんな彼女が出会ってきた世界は間違いなく、私の拠り所のひとつになってくれている。それってすごいぞ、じわじわ〜んとした感動。私がたまに伝えることも面白がってくれて、これからもそうやって楽しくやっていきたいな〜〜〜〜〜と思う。

純粋に自然体で染まらずにいることって難しいし、みんな変わってはいくんだろうけどな。それでも、自分の感覚で頑張ったり踏ん張ったりしている友達がいるとまじで嬉しくなる。安心する。楽しくなる。

そんなことを思っているうちにHAGI CAFEで寝そうになり、そろそろお会計。お店を出るとまだ小雨が舞っていて顔に水の感触がある。 

フッ。こんくらいなら余裕だぜ!!愛するウィンブレのフードでいけるぜ!!!!!

フードの紐をキュッと縛り、自由な両手をブンブン振り回す。もうすぐ梅雨?まあいっか。

眠気が覚めたまどろみ星人は楽しそうに、駅の方角へ歩き出して行った。

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