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100日間800文字ショートショート、完走しました!
タイトルの通り、100日間800文字ショートショート完走しました!
何日かはお休みしたりして毎日更新とはいきませんでしたが……。
100日!!完走!!
おめでとう、自分!!
手放しに成し遂げたことを喜びたい!!!!
もちろん不安や葛藤も沢山ありました。
「これ絶対途中でネタ尽きるな」
「途中で飽きたらどうしよう」
「それどころか1文字も書けなくなったらどうしよう」
同時に前向きな
この先も貴方を待っている人がいる 800文字ショートショート 100日目
長く続く階段の一段目を登ると、煙草を吸う男の隣で微笑む女が問いかけてきた。
「貴方は肺を汚されてもいいって思った人、いる?」
答えるより先に足がどんどん階段を駆け抜けていく。
十四段目に差し掛かった時、喋る万札が「どうだ、私を攫ってくれないか」と声をかけてきた。
「貴方も春夏秋冬の思い出を巻いて食べませんか」
三十四段目では腹の虫をくすぐる美味しい、けれど切ない揚げ物の香りが横切った。
凡人には理解できない、崇拝の愛 800文字ショートショート 99日目
「花咲さんって彼女いるらしいんだよね」
珍しく同僚にランチに誘われたと思えば、開口一番の話題が花咲さんの恋愛事情で、内心首を傾げた。
何をそんなに申し訳なさそうに報告するのか分からない。
同僚がフォークでもてあそぶパスタを見つめながら、曖昧に微笑んでいると「ごめん」と続け様に謝罪を口にされた。
「あなた、花咲さんのことが好きでしょう? 不毛な恋だと分かって傷つく前に教えたくて。もちろんお節介
好かれる理由があるように嫌う理由もある 800文字ショートショート 98日目
「社長。先程苅田から連絡がありました。件の依頼内容についてお話したいことがあるようで、事務所に立ち寄るようです」
猪原の言葉に棘崎は天を仰ぎたくなった。勿論態度には示さないし、これといった動揺した素振りも見せない。何喰わぬ顔をしつつ、猪原と社長の会話を耳澄ませる。
「……またか? 三日前にも別件で話したいことがあるって事務所にきたよな、あいつ」
一旦流そうとした社長の間から、訝しげる質問が飛
一撃で支配される、魅惑の音声 800文字ショートショート 97日目
「野中ちゃん、外線から連絡あったよ。電話番号控えておいたから折り返しお願い」
休憩から戻り席についた途端。織原さんが間延びした喋り方で私に付箋を差し出した。汗っかきでいつも掌が湿っているせいか、すでにしおれた花弁みたいにくしゃげていた。
滲んだ数字の羅列に眉を顰める。かれこれ何十回と断っている求人広告の会社の番号だ。下桁が私の誕生日と一緒で嫌でも覚えてしまった。
短時間で働いているパートさん
100日間完走まで残り5日!
ときどき休んだりしたけどゴールまで目前だ!!
骨の髄まで着せ替えて円舞曲を 800文字ショートショート 95日目
この服、キリエの鎖骨が映えそう。
とろみあるサテン生地のシャツを手に取り、鏡の前であの子が着ているのを想像する。私より二十センチも背の高いあの子は、そこらのマネキンよりも綺麗に着こなすだろう。
「そちら秋の新作になっております。人気の商品となっていまして、残り1点──」
近づいてきた店員の接客を聞き流しながら、鎖骨から上腕骨、橈骨、尺骨のラインが美しく浮かび上がるか考えていく。
手骨を握っ
君がお嫁に行くまでは膝の上に 800文字ショートショート 94日目
「おやおや。今日はどうされました? お嬢様」
ワタクシの膝の上に座ってぐずぐずと鼻水を啜る、小さなお姫様の背中を支えつつご機嫌を窺う。潤んだ瞳からぽろぽろと透明の真珠を流し、への字に結んだ唇が悲しみにより震えていた。
「おべんきょうやだ。おけいこもやりたくない。みんなとあそびたい……」
「奥様にまた手厳しく叱られたようですな」
朝から晩まで部屋に缶詰めして勉学を叩き込み、教養を高めるために
母の姿を写し取った美しい悪魔 800文字ショートショート 93日目
母は特段美人ではないが、男という蛾を引き寄せる天性の殺虫灯だった。
薄緑の瞳を合わせてゆっくり薄い唇から真っ白な歯を覗かせると、男は下手な催眠術にかかった挙動で面白いほど引き寄せられていく。
誘われた光が目前に、というところで我に返っても遅い。死んだほうがマシだと地べたで這いつくばるほど、心を弄ばれて焼き焦がされてしまうのだ。
転がる死骸になりかけの男たちは、心配から駆け寄りのぞき込んだ幼い
女王様は可愛い犬が理想的 800文字ショートショート 92日目
犬の男が好きだ。特に大型犬の雰囲気を醸し出す、包容力のある年上の男が。表面上にこやかに取り繕う私の、ぐらぐらと揺れる癇癪蓋を鼻先で抑えてくれる、惜しみなく労わってくれる男。
ダルメシアン、シェパード、コリー、ドーベルマン。
私はそういった男を嗅ぎつけ、選び、傍に置いておくのが得意だった。
「すぐに捨てるくせに何言っているんだ。ペットショップで”一目惚れして飼っちゃいました”とか”目が合って運
縋る犬の愛に終止符を 800文字ショートショート 91日目
百六十四センチのシベリアンハスキーが「捨てないで」と服の裾を引っ張った。
裾から腰へ縋る形で腕に。遠吠えの前触れに近い喉の振動と、同情を誘う鼻腔の音を鳴らしながら、惨めったらしい姿でしがみつく。
身体に纏わりつく愛情を鬱陶しく引き剥がすと、保健所に連れて来られた犬のように、死を察知した絶望を瞳に宿した。眼球の水面をぶるぶると震わせ、歪んだ口元から犬歯をはみ出し、分厚い下唇を噛んで未練を滲ませる
死臭の愛 800文字ショートショート 90日目
土で汚れた頬を指先で掻き、青黴を息で散らした。目に入った新しい茸を腕から毟り取り、地面へと叩きつける。
徐々に腐敗していく身体に恐怖を覚えながら、骨が見え始めている腕を大きな葉で包んで隠した。誰が見ても悪足掻きにしか見えないけれど、人間として生きて死ぬためには必要な精神力だ。
墓地へ攫われて一ヵ月が経とうとしている。腐った卵と溝鼠を混ぜた匂いとともにあの化物は現れた。月明かりにさらされた“あれ
雨の中で愛を深める 800文字ショートショート 89日目
僕が一人寂しく暮らす、花月荘まで傘も差さずにやってきた不機嫌な猫。今はぼんやりと窓を激しく打つ水玉を眺めている。
土砂降りの空模様が意味をすること。待ちに待った凶子との初めての鎌倉巡り、つまりデートが無残に消え去ってしまったことだ。
余程楽しみだったのか。ここまであからさまに元気のない彼女を見たのは初めてかもしれない。
「私が張り切ると必ず雨が降る! 忌々しい! 私がまるで名前の通り運がない