ふとんは抜け殻/エッセー
ふとんはあたたかい、やわらかい。そのやわらかい殻が私に、この世、自分のためにすべてを無視していいんだよ、とささやく。人のため、世のためとささやかれてきた私たちの、人間性にきざまれた常識をまるで無視している。そんな言葉の根拠はふとんの持つ、その血が通った跡だけ。このあたたかさをつくれるのは今、生きているということだけ。そうかもね、と少し思って、どうなっても大丈夫だもんね、と私は返す。このあたたかいふとんは、私を守ってくれる殻。生、を感じさせるやさしいもの。そこに根拠は必要なく