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11月末にて、廃業いたします。

こんばんは。
久々の更新です。

タイトルにあるように、
残っていた2店舗を閉店し、会社を廃業することに決めました。

本店Tooooo Lemonは、約2年2ヶ月。
Chai Lab.は、約4ヶ月半。SABO Lab.時代から数えると約1年半。
短い期間でしたが、たくさんのお客様にご来店いただき、たくさんのメディアにも取り上げていただき、喜びと経験を得られました。
(僕としては良くも悪くも大小様々な経験をして、あっという間でしたが濃密で短いとは感じない起業家人生でした)

その反面、昨年の消費税増税や台風あたりから売り上げが落ち込み、
春からは新型コロナ感染症対策の外出自粛の影響もあり、3月から今月まで9ヶ月間連続で売り上げ前年対比が50%以下と非常に苦しい期間が長く続き、心身ともに文字通り人生で一番つらいと感じていました。

もちろん、コロナ禍でも賑わっているお店、儲かっているお店、業績を伸ばしている企業もあります。
今回廃業に至ったのは、何より自分の実力不足によるものが大きいです。
大学時代から攻めの姿勢を貫き、前へ前へと突き進んできたつもりでしたが、今になって思い返すと井の中でただただ走り回っていただけでした。
起業家としてすごいと言われ続けているうちに自信過剰になり、本来の自分とはかけ離れた虚像の自分が、次々に誤った経営判断を行ってしまっていました。

今回のこのnoteは、起業家柴田一生としての決別と、凡人柴田一生としての再スタートを切るために、ありのままを飾らずに綴っていきます。
長くなるかもしれませんが、最後ですのでお付き合いいただければ幸いです。

前職時代、ありがたいことに入社1年目からたくさんの大役を任せていただきました。大小様々な経験を積み重ねる中で、自分の力で事業をやりたいという想いが芽生え、5年以内で独立したいと思うようになりました。

そこから、東京に異動になり、人生で初めて宮城から離れたことや仕事が思うように進まないこともあり、自分の中での何かバランスが崩れ始めます。社会人2年目の終わりを待たずして、社長に啖呵を切るような形で飛び出てしまいます。

独立してからうまくいかないことももちろんありましたが、重要なことはことごとく何とかなってしまい、Tooooo Lemonのオープン前から注目を浴びたこともあり、どんどん調子に乗って行きました。
ただお店を運営していく中で、お客様と従業員どちらも大事にしなければいけないバランスどりが非常に難しく、お客様のためと思いスタッフへの当たりが強くなってしまうことも多々あり、自分の理想の店舗・理想の経営には程遠い状態でオープン直後から閉めたいという思いを抱え始めていました。
ですが、周りの期待やプレッシャーに応えなければという気持ちと、会社を畳んだとしてもその先の不安があり、ただひたすらに突き進み続けるしかないと思いました。

突き進んでいく中で、1店舗しかないからうまくいかない、複数店舗になった方が自分はうまくやれるという根拠のない謎の自信が芽生え始め、1店舗目のオープンから数ヶ月で2店舗目のテナント探しを始めます。
大学時代からの相棒の柾くんが実家に帰ることになってしまったのですが、大丈夫と自分に言い聞かせ続けました。
そんなタイミングでテナントも従業員もタイミングよく見つかり、2店舗目SABO Lab.をオープンし、こちらもたくさんの注目を浴び、オープンから大盛況でした。

また、前職時代からスタッフの人材育成をしたいという想いが強くあり、補助金を利活用して、スタッフ研修を定期的に行いました。
研修をすれば、スタッフは育つという決めつけがスタッフを苦しめ、そしてなかなか変わらないスタッフに苛立ちを感じてしまいました。
その頃からスタッフ内で人間関係のトラブルも多くあり、スタッフと向き合ったり話したりという時間を取るのが嫌になりました。

当時お付き合いしていた前シェフとも価値観の違いがどんどん大きくなっていき、ここで創業メンバーは僕一人になりました。ここからが地獄でした。
会社の経営の総務的なことやホールのこと、デザイン業務など調理以外を一人でやることになり、どんどんと仕事の質は落ち、体力的にも疲弊していきました。

それでも催事や出店のオファーが絶えず、そしてオファーをいただけることが嬉しくて何でもかんでも飛び付いては、ギリギリでこなすだけの日々を過ごしました。
大した計画や計算を行わず、質が伴わないので、どんどん会社の数字は悪化します。増税や台風の影響で急激に落ち込んだ2店舗の売り上げをカバーしようと売り上げだけを追い求めました。

3店舗目の出店とほぼ同時にSPALでの短期出店を行い、突き進めば何とかなると言い聞かせて体に鞭打ち、気づけばとにかく目の前の業務だけをこなしていくようになりました。

1月には、会社のお金が底をつき、親に頭を下げてお金を借りたり、自分に給与を支払わなかったり、実はこの頃から本格的に会社の廃業を検討し始めていました。

2月中旬、僕は自分への誕生日プレゼントとスパイスカレー業態の視察を兼ねて関西へ旅行へ行きました。
そこで見たものは、ガラガラの大阪と京都。
仙台ではまだほぼ影響の出ていない時期に、大阪と京都の状況を見てやばいと思い、戻ったらすぐテイクアウト・デリバリーを始めようと思いました。
帰った直後、仙台でも影響が出始め、当時入っていた歓送迎会などの大型の予約は全てキャンセルになり、それだけでも100万円を超える損失でした。

すぐさまアルバイトのスタッフを休みにし、テイクアウトデリバリーを始め、料理人やアルバイトからは凄まじく反感を買いましたが、自分だけの正義を貫きました。
そして、仙台でいち早くテイクアウトに取り組んだ飲食店として各種メディアにも取り上げていただき、周りからもさすがなどと言われ、苦しくても誰にも弱音を吐けない状態に陥りました。
そして、底を付いていたお金も、コロナ融資により何とかなってしまいました。

4月はメディアの影響もあり、イートインがなくても料理人を休みにしても2〜3月よりマシかもくらいの売り上げを上げられ、また従業員による盗難事件が起こり人間不信に陥ったこともあり、料理人全員に退職してもらいました。どこよりも早くイートインを休業にしたことも、お客様の命を大事にした上での決断と誇りに思ってすらいました。
5月にはメディアの影響も薄れたことと周りの飲食店が再開し始めたこともあり、テイクアウト売り上げは下がりますが自分がシェフになるんだ〜と謎に意気込み、経営から逃げるように職人の道へと入って行きます。

6月からイートインを再開し、コロナが収束した際にガツンと売り上げを上げられるようにとChai Lab.のオープンを決め、1店舗目の売り上げが戻らないことは気にせずに再び2店舗の体制に戻します。
7月前半、2店舗とも順調なスタートを切りますが、後半に感染者数が再び増加し始めるとそこからまたガツンと売り上げが落ちました。それから先は感染者数が減ると売り上げが上がり、感染者数が増えたりクラスターが出ると売り上げが下がるという状況が続き、お店の状況も自分の精神状態も不安定になります。この頃から再び廃業を強く意識するようになりました。

平常時であれば毎月後半の給料日前後にかけて売り上げが伸びて、予算達成に近づいていくのですが、コロナ禍においては、毎月前半はいいスタートを切って、後半失速して結局毎月の売上前年対比が50%を切る着地を続けてしまったことは精神的にかなりしんどいものでした。

しかし、社名がトゥーイートだということもあり、10月からのGo To Eatキャンペーンに期待して、とりあえず事業を続けて追加融資も受けようと準備を始めました。

待ちに待った10月。
ホットペッパーから久々に毎日のように予約が入ります。
2周年のフェアも合わさって、最初の1週間は満席になったりそれなりに売り上げたり楽しかったです。

状況が一転したのは、某焼き鳥屋さんでの無限報道があってから。
消費者の皆さまがポイントのずる賢い使い方を知ってしまい、ポイント目当てと思われるお客様がだんだん増加します。
ディナーに来て、パスタ一皿で終わりの方や、幼児も人数に入れて予約して人数分のお料理を頼まない方、そして何より値段でメニューを選ばれたり美味しいとかごちそうさまとか言わずに帰られたりすることが多くなり、自分が何のために誰のために飲食店をやっているのかわからなくなっていきました。それこそキャンペーン開始前に来てくださるお客様はすごい温かい方が多く感じていたのでそのギャップに耐えられませんでした。(味見や暑さでマスクを外すだけで怒鳴られたりもしましたが)

人生で初めて朝から晩までキッチンに立って仕事をして、それでもお客さんが来なかったり、自分の給与を下げてもそれでも赤字が続く状況で、自分のお店・会社そして自分の存在すらも社会から必要とされていないのではないかと感じました。
自殺して死亡保険で会社を清算することも何度も考えましたが、家族の顔を思い浮かべるとそれだけはできず、かと言って何か打開策があるわけでもなく、不安で眠れなかったり枕を濡らす夜が続きました。

10月後半から感染者数が急増し、4〜5月の営業自粛していた期間は何だったんだという悶々とした状態を抱えながら営業を続け、結局10月も9月までとさほど変わりない程度の売り上げに留まったまま終えます。
10月に柾くんが仙台に来る機会があり、そこで旧知の子達も集めてパーティーをする機会があったので、いっそその日で閉めようかななんてふんわり考えてもいたのですが、スタッフの雇用維持とそしてコロナの収束への淡い期待がまだあったので、毎日のように大量にアルコールを摂取(飲酒も消毒も)しながら、なんだかんだ中途半端な気持ちで営業を続けていました。
僕が会社を潰したら、周りの若手起業家や若手飲食人に悪い影響を与えてしまうのではなどと考え、踏ん切りがつかずな部分もありました。
この頃は、夜劇弱な僕が酒を飲んでも眠れない日があったり、毎朝嗚咽と吐き気が止まらなく家をなかなか出れない日もあったり、情緒不安定で対人関係もうまくいかなかったりと一番しんどい時期でした。

11月。ポイント目当ての方はますます増え、感染者数も右肩上がりで、gotoキャンペーンでの利用の方は異常にキャッシュレスの方が多く、現金が全く手元になくなることに気がついたのと、追加の融資を受けたとしてもコロナが収束しなければ半年ほどでキャッシュアウトするし半年後に収まる見込みを感じなかったので、年末で区切りよくお店を閉めようと自分の中で決めました。キャンペーンも特に効果のないまま終わってしまいましたしね。
毎日笑って営業できているうちに終わらせたかったですし、何より早く社長じゃなくなりたいと思いました。

周りの方から、売り上げ戻って来たでしょとか、コロナ禍でもすごいねとか言われる度に僕の心はズタズタで、どんどん自信を失っていきました。
同年代がコロナで給料カットされたとか残業代なくなったとか、ボーナスカットされそうとか、だから転職しようかななんて話を聞いていると、借金を増やしてまで心身ともにボロボロになってまでお店を続ける意味は僕には見出せませんでした。

ちょうど先週には喘息の発作で息が吸えなくなり、救急車を呼んで夜通し点滴と吸入をして何とか大事には至りませんでしたが、呼んでいなかったら命を落としていた可能性もあったそうです。でも次の日も予約あるからと営業しましたが、予約のお客さんがポイント目当てにしか見えず、人を疑う自分のことも嫌になって、もう完全に限界だなと感じました。

そして、先輩経営者の方々や、士業の方々に相談し始めました。
その中で前職の社長と弁護士の先生がなるべく早く閉めたほうがいいとアドバイスをくれ、火曜日に11月末での廃業を決め、そこからさらに早まり昨日閉店することにしました。
突然とか急すぎるとか思われるかもしれませんが、
皆さんに言ってなかったわけではなく、本当に急に決めました。

皆さんに謝罪しなければならないことがあります。
今まで天才と周りにも自分にも言い聞かせてここまで来ましたが、実際はわからないこと知らないことできないことの方が多いですし、天才と自分を鼓舞し続けなければチャレンジできないただの臆病者です。経営も接客も調理も全てが未熟で、人間的にも未熟で、飲食店のオーナーとして成功できる器では全くないです。
不安で怖くてつらくて、でも家の外に出たら常に起業家柴田一生を演じ続けて来ました。自分勝手な振る舞いでたくさんの方に迷惑をかけて来ましたし、実力不足でこのような形で廃業すること、深く反省しておりますし申し訳ないと思っております。

小手先の技術だけを習得し続け、騙し騙しここまで経営ごっこをして来ましたが、振り返ると自分が一番成長していませんでした。
ありがたいことに前職の社長が出戻りを許してくださるので、今度こそは経営とは・サービス業とは・仕事とはを一から学び直し、自分に嘘偽りのない本当の自分の道を歩みたいと思っています。

今まで来てくださった全てのお客さま、応援してくださった皆さま、本当にありがとうございます。
今後の再開等は一切検討しておりませんし、しない可能性の方が圧倒的に高いかと思いますが、僕の人生での挑戦は続けるつもりです。一度きりの人生、ああ生まれてよかった全力で楽しかったと終われるように一所懸命に生き続けたいと思っております。

最後に、僕から皆さんに図々しいお願いがあります。
好きな飲食店、近くの飲食店で可能な限りお金を使ってあげてください。
飲食店はもともとギリギリの数字の積み重ねで成り立つ薄利な商売です。
イートインが不安だったら、
スーパーやコンビニで買うお弁当やカップラーメンや自炊ではなく、
飲食店のテイクアウトやデリバリーを。
そしていつもよりできるだけ高いものを。
でも、できればお店にたくさん足を運んで
いつもよりなるべくたくさん食べて、たくさん飲んでください。
皆さんもコロナで給料がどうなるかとか先行き不安でしょうけど、
みんなでお金を使って経済を回していかないと、
社会全体にお金が回りません。
それが回り回ってもっとたくさんの人に影響が出兼ねません。
お支払いはできる限り現金でしてあげて欲しいです。
感染症対策が完璧じゃなくても怒らないであげて欲しいです。
どの店も限られた経営資源の中でできる限りの対策をしているはずです。
そして、ごちそうさまや美味しかったと
店員さんの目を見て言ってあげてください。
少しでも多くの人に僕のこのお願いを教えてあげてください。
1店舗でも多くの飲食店がコロナ禍を乗り越えられますように。

最後までお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとうございます。

2020年11月 合同会社トゥーイート 代表 柴田一生

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