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復刊に到るまで/中村葉月
◎終戰後間もなく越後タイム
ス復刊の事を考へる樣になり
ました。之れは昭和十四年七
月三十日の終刊號紙上で、小
生が讀者各位に御約束して置
いたからであります。今日再
び越後タイムスの標題の下に
讀者の皆さんと紙上で相見え
る事が出來ますのは、小生の
非常に悦びとし滿足とすると
ころであります。
◎今回は舊同人始め周圍の友
人諸君から非常な後聲援を頂
きました。特に身近にある天
瑞堂主人小竹久爾氏、遠く盛
岡市にある東北精器の野島壽
平氏等の犠牲的協力が復刊實
現の機を早めてくれたのは事
實であります。斯くて十二月
八日、第一回の會合を以て協
議一決準備に入り、社員とし
山田龍雄君を迎へ、私として
は七年前の昔の生活を再び玆
に繰り返す事になりました。
◎復刊に當り回顧される事は
終刊當時越後タイムス存續の
爲めに非常に御盡力下すつた
東京讀者會幹部の方達の事で
す。越後タイムス丈けは飽く
迄存續せしめ度いといふ熱心
な御希望の爲めに私は一度な
らず二度三度上京しました。
そして或る時は青山高志會舘
に宿泊してゐた、當時の新潟
縣警察部長村川重太郎氏と會
見する爲め、猪俣浩三、野島
壽平、金子清吉氏等と共に、
部長の寢込を襲ふた事もあり
又在京讀者側代表としての金
子氏と共に百餘名の連署請願
書を携へて新潟縣廳へ押しか
けた事もあります。
◎廢刊後は野島氏の經營して
ゐた「家の友」や藤田美代氏
經營の「柏崎」を借りて、皆
さんとの連絡に務めたのであ
りますが、夫れも皆廢刊を餘
儀なくされて、本土上空に全
くB29の姿を見なくなる
迄孤獨になつた私の生活は、
空白の頁のみに埋まり無爲の
連續でした。
◎今日復刊號を世に出すに當
り當時タイムス存續の爲めに
御盡力下すつた關係諸兄姉の
御厚意を想起し、改めて感謝
の意を表する次第であります
(葉 月)
(越後タイムス 昭和二十一年一月十三日
第一四三二號 六面より)
※上記記事にあった藤田美代氏の雑誌「柏崎」に関して、ソフィアセンター柏崎市立図書館に問合せたところ、昭和16年6月の創刊号から昭和18年9月のNo.26号まで所蔵されているとのことで、司書のO.S.さんに調べてもらった所、一錢亭の寄稿や消息がいくつか見つかりました。次回より掲載していきます。
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ソフィアセンター 柏崎市立図書館 所蔵
かしわざきのひと 中村葉月
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