花輪を於くる言葉
菊 池 與 志 夫
あらゆる世の惰眠をむさぼる群
小飜譯家だち――諸君は、半歳の
全生活をあげてエドガァ・アラン・
ポオ・の心魂をかれ自らの心魂と
した、わが兄弟品川力君の情熱の
炬火をあびまさに慚愧すべきであ
る。若し世の偏狭なる人、彼のこ
の宇宙に燦たる譯詩の完成に際し
なほ滿腔の感謝と至上なる讚仰の
花輪とをおくるに吝かなるものあ
らば、僕は敢然として彼らに言ふ。
汝はこの崇高至純の精神に充てる
藝術家の人格そのものに對し、盲
目的冒瀆を敢てするものなりと。
僕のごときは燦爛たる、彼の天賦
の詩嚢をはるかに光茫雲上の彼方
に仰ぎみて、たゞひたすらに讃嘆
のこゑを放散するすべを知るのみ
僕は聲を高うして再び言はん―
彼れ品川力の灼熱的詩才の前に慚
死すべきもの、ひとり纎弱非才な
る僕のみにとゞまらんやと(五・十五)
(越後タイムス 大正十四年五月廿四日
第七百三號 四面より)
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ソフィアセンター 柏崎市立図書館 所蔵
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