Photo by yutataka114 岡麓雨君を憶ふ 13 一錢亭文庫 / 菊池 與志夫 2024年1月3日 09:23 本社 靑 木 榮 之 助 麓雨君と親交深かつた菊池一錢亭子が先日こんなものが出て來たからと云つて麓雨君の書を私に見せて呉れた。畫仙半切に唐詩を草躰三行に書かれたもので、確かに私にも見覺あるものである。一錢亭子が特に私に見せて呉れたのは私も麓雨君と同じやうに古くから王友書道會に名を列ねて居る因緣を思出して呉れたからであらう。もつとも同じやうに名を列ねて居るとは云へ、麓雨君は私共惡筆家とは異り、昔から社内屈指の能書家であり、殊に勤務の關係上永く近藤竹蔭先生の傍らに在つて直接、間接常にその指導を受けられる好運にも惠まれて居たので、天稟の才能は益〃磨きをかけられ、あの物柔い人柄そのまゝの穏やかな書風は會員の中にあつても際立つて光つて居た。 今その遺された筆の跡を見るにつけても溫厚そのものゝやうだつた在りし日の俤が忍ばれてならない。そうしてあのおとなしかつた麓雨君が祖國の爲めに敢然と銃を執つて立ち、遂に熱病の爲めに斃れて前途有爲の身を江南の花と散らせてしまつたことを憶ふと何か心の沸ぎる思ひに耐えないのである。(終)(「王友」第十五號 昭和十三年四月二十五日發行より) #王友 #昭和十三年 #旧王子製紙 #岡六郎 #岡麓雨 ダウンロード copy #旧王子製紙 #王友 #昭和十三年 #岡六郎 #岡麓雨 13 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート