見出し画像

Amalfi レビュー

記事構成は以下の通りです。

1、ゲーム紹介<テーマ><ルール概要><ゲームシステム>

2、ゲーム評価<ポジティブ(3つ)><ネガティブ(3つ)><総括>


1、ゲーム紹介

1~4人 90~120分 12歳以上 作者:takeo yamada(twitter:@TakeWatchGo)

<テーマ>

ルネサンス期のアマルフィの商人たちは歴史の波に揉まれて衰退の一途を辿っている寂れた街を活気ある文化都市へ復活させようと交易の成果を美術、文芸、建築への投資で貢献しようとする。

画像1

<ルール概要>

1ゲーム4ラウンド、1ラウンド3フェイズ(アクション、食料、決算・準備)

①アクションフェイズ

資源獲得のためのワーカープレイス、ワーカーを増やす造船、海図・契約カードの獲得、人物カードのプレイ、人物カードのアクション使用のいずれかを各手番に1つ行い、全プレイヤーがパスを選択するまで続ける。

②食料フェイズ

ワーカー数に合わせた食料支払いを行う。

③決算・準備フェイズ

ラウンドの決算カードの点数を獲得し、ホームボード上のカードの入れ替えを行い、次ラウンドの準備をする。

画像2

初回プレイのゲーム終了時の図。資源をこねくり回して人物カードや海図カードの助けを得ながらいかに効率よく契約カードなどの得点源に変化させていけるかを競うゲームとなっている。

<ゲームシステム>

〇一風変わったワーカープレイスメント

このゲームの一番大きな特徴となっているシステムだが、作者は東印度公司のシステムを利用したと述べている。自分のワーカーである船コマはアクションを行うためにアクションスペースに置く必要があるが、そこで得られる資源も船コマを使って獲得する必要がある。例えば「2食糧を支払って2麦を得る」アクションをするためには合計3つの船コマ(厳密には2つでも良い)が必要になる。察しがいいプレイヤーであれば最初に6つしか船コマを持っていないことから2アクションしかできないじゃん!と最初は思ってしまうが、資源を使った後はその資源コマになってた船コマは再活用できるようになっている。

〇リソースマネジメント

本作の資源は香辛料、麦、ワイン、財宝、織物、食料の6種類で、これらをいかにホームボードや自分の初期の手札に合った動きになるように管理できるかを徹底的に追求することが求められる。

画像3

潤沢にあると思っていた船コマはよく考えないとあっという間に減っていくし、各ラウンドの終盤には最後の1,2コマまで無駄なく使うことも念頭に入れながらの行動を考えていかなければならない。


2、ゲーム評価

ここからはこのゲームの個人的なレビューを書いていく。

<ポジティブ>

①洗練されたデザイン、アートワーク、コンポーネント

画像4

出版を手掛けたuchibakoya pieceさん(twitter:@uchibacoya)は船コマをはじめとするコンポーネントを作成。木ゴマはもちろんだが、ボードの質もクオリティの高いものになっている。アートワークはウラベロシナンテさん(twitter:@urabe_rocinante)作。淡さとメリハリを兼ね揃えたぬくもりを感じるイラストで仕上げられている。そして別府さいさん(twitter:@allotment31)のゲームUIを意識した(直感的にプレイしやすい)アートディレクションとDTPは職人としての仕事が随所に感じられる。

国産ゲームにもここまで資金面、人材面で全力を尽くした作品というのは数少ないだろう。筆者は上記に挙げたビジュアル面をプレイ意欲を刺激する重要な要素だと考えているのでこの点はとても高く評価している。

②ドラフト初心者にも優しい初期セットアップルール

アマルフィは各プレイヤーが人物カードを一定枚数持った状態でゲームが始まるが、ルールブックではカードの決め方を丁寧に3通り提示してくれている。上級者にはプレイヤー間でカードを回していく完全ドラフト、中級者には一定枚数配った中から選択する自己完結ドラフト、初心者にはおススメセットがあらかじめ決められている。特に初心者向けのおススメセットを設定している点を評価したい。最近ではアグリコラの初心者用セットを発表している人をtwitterで見かけたが、筆者はそういった初心者が取っつきやすい設定を用意しておくのは、こういった重量級ゲームのプレイ人口を増やす上では必要なことだと考えている。

②ゲームごとに変わる戦略ルート

このゲームの最も大きな得点要素は契約カードの獲得だ。

画像5

最終的な得点が200点ほどで、平均8点くらいの契約カードを10枚以上集めることを考えればメインの得点源となることは容易に理解できるだろう。この契約カードは3種類(絵画、書籍、建築)あり、ラウンドごとの決算カードや称号カード、各自が持つ終了時系の人物カードによって集め方が異なってくる。つまり、戦略がプレイヤーによって異なってくるのだ。

画像6

称号カードは達成の先着順に大きな点数を獲得できるので、その達成を第一目標とすることもできるし、あるゲームで1セットにつき7点を獲得する決算カードが最終ラウンドにあるとすれば、それまでの間に地道にセットを作っていくという戦略を考えることもできる。人物カードも初期手札をドラフトしてゲームを開始するのだが、特に20点前後の勝利点をもたらす終了時系の人物カードも戦略を練っていくうえでとても重要となってくる。

これらの組み合わせは無限である上にどれを取ってもぶっ飛んで強いルートがあるわけではない。つまり、戦略ルートが多岐にわたるにも関わらず、それぞれのバランスが取れているのである。それこそが、ゲームを終えるごとに「もっとうまくやれた」だとか「他プレイヤーの戦術を真似してみたい」というようなリプレイ欲を掻き立てる要因になっている。

③ユーザー保障が丁寧

これは国産ゲームだからという一言では済ませられない。uchibakoya pieceさんの出版社としての対応はレスポンスが速く、内容が具体的なのだ。現在はルールブックも第2版が出されている(この対応の早さも目を見張る)が、それが出る前に筆者も質問をDMで送ったことがある。

画像7

画像8

発売前からかなり注目されていた作品だったため、今になって考えれば同じ質問を多くの人から受けていたと思う。しかし、そんな中でも根気よく回答をしているのを目の当たりにするとその姿勢には脱帽である。今後も数々の作品を取り扱っていくのだと思うが、このカスタマー対応は無理のない程度にぜひ継続してほしいと勝手ながら思っている。


<ネガティブ>

①練度で差がつく

アマルフィはやり込み要素が豊富なゲームだ。人物カードはもちろんだが、海図カードや契約カードも内訳を把握すればするほど、より得点を伸ばす行動を円滑に行えるようになる。オープン会で重量級ゲームを立てる際には同じ経験量のメンバーでプレイしなければ隣の青い芝を見つめるだけの120分になってしまう可能性もあるだろう。

②伸びしろが欲しくなる

この項目は言語化するのが少し難しい…。ゲームを数回プレイして気づいてくることなのだが、海図カードや人物カードが枯渇することが多々ある。カードが足りないのだ。海図カードはあくまでも潤滑油なので取りすぎは高得点の道のりから遠ざかってしまうため、海図カードの枯渇はプレイが下手くそな証拠なのかもしれない。しかし、得点とは全く関係なく、ゲームプレイの満足度の視点から考えれば「自分のプレイがうまくいくかもしれない海図カードを取ることができない」という状況は少し寂しさを感じてしまうのだ。良い例を挙げるとオーディンの祝祭の職業カードなどは基本的に枯渇することがないため安心感がある。そしてその量のおかげでゲームごとの戦略はより多岐にわたってくる。本作においてもそれほどの量の種類のカードを考えるのは相当な労力がかかることだが、ぜひ今後拡張という形でもいいので追加されることを期待している。

画像9

③ワクワク要素が少ない

筆者が本作で新鮮に感じたのはゲームシステムでも紹介した「ワーカーが資源の役割も果たす」という点である。作者が参考にした東印度公司をプレイしたことがないため、それをプレイしたことがあるのであれば目新しい要素はない、といっても過言ではない。このことに関しては制作サイドからもあらかじめ広められていたように感じる。本作は過去の良作のキメラだともいわれていた。そういった前情報を持っていたからこそある意味筆者のハードルは下がっていた。実際にやってみればその通りだが、その一方で、プレイすればするほどリプレイ欲がわく良作だと思っている。ただ、こうしたレビューとして言語化する際には書いておかなければならない気がしたので記しておく。


<総括>

アマルフィは「新作買ったしみんなで遊んでみよーぜ!」というスタンスではなく、隠れ家のような場所に見知った仲間内で集まって黙々とプレイするようなゲームだと思う。いわゆるアグリコラ愛好家たちが毎週集まって1日中やるようなイメージだ。そういうゲームが国内で生まれる時代になってきている。本作の制作陣にはこのムーブメントのパイオニアとして今後も注目していきたい。

画像10


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?