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大蒔絵展―漆と金の千年物語―

■蒔絵の千年

三井記念美術館にて、2022年10月1日~11月13日開催。蒔絵は好きなのですが、想像以上の表現の振り幅に驚かされた展覧会でした。

12世紀平安時代のものから平成の現代工芸作品まで、まさに千年に渡って受け継がれてきた蒔絵の歴史を見られました。何しろ基本的な技法は変わっていないのですから、すごいことです。

■室町・桃山の蒔絵

私は、梨子地に高蒔絵ぐらいの繊細な意匠が好きなので、室町時代辺りの作品がいいと思いました。「波千鳥蒔絵硯箱」は、群れ飛ぶ波千鳥が、法則のあるようなないような絶妙なバランスで配置されていて、実に日本的なデザインのリズムを感じました。

思いがけず目を引かれたのは、高台寺蒔絵です。桃山時代、下剋上で誕生した新しい権力者の需要に応えて、王朝文化の知識がなくても分かる簡明な意匠を、短時間でできる平蒔絵を主体に表現した…。要は成り上がりのための量産品?と思ってしまうのですが、露を置く伸びやかな秋草を表した「秋草蒔絵折敷」や、蓋表にヨーロッパの織物の意匠を思わせる大胆なパターンを配し、中の懸子にはシンプルに一茎の桐唐草を描いた「桐唐草蒔絵硯箱」などは、見ていてとても気持ちの良いものでした。

■江戸の蒔絵

一方で、意外な印象だったのは江戸時代の蒔絵です。分厚い金属や貝の板を貼り付けた立体的な蒔絵は、武骨な印象でどうも苦手でした。普段は大好きな琳派ですが、光琳蒔絵など、今回の展覧会の出展品はあまり楽しめませんでした。屏風絵で見るのと違い、あの琳派の波模様が漆黒にべったりとした金で描かれていると、何か禍々しい印象を受けます。

江戸琳派まで来て、酒井抱一と原羊遊斎の合作で、カラフルな色漆を用いた「四季草花蒔絵茶箱」などは、むしろ絵画作品に近い感覚で楽しめますが、黒漆に乗ったビビッドすぎる色味にちょっと怯んでしまうのも確かです。その後ろに展示されていた3幅の掛軸、酒井抱一の「藤蓮楓図」に見慣れた琳派の優しい筆致と色合いを見つけて、ほっとしました。

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